AppleがAI画像を見分けるSynthIDに年内対応する
Appleが9月9日(日本時間9月10日未明)に出したプレスリリースに、AIで作った画像を見分ける話が入っていました。文章にすると1行だけです。
今後対応するSynthID規格により、ユーザーはAIで生成または編集された画像を特定できるようになります。
SynthIDはGoogleが作った規格です。AIで作った画像に、人の目には見えない印を埋め込みます。Appleがこれに乗ることで、iPhoneが画像を見て「これはAIが作ったものだ」と示せるようになります。
時期は9月14日のiOS 27ではありません。同じリリースの注釈に、年内のソフトウェアアップデートで使えるようになると書かれています。対象は編集した画像が中心で、どんな編集をしたかによって印が入るかどうかが変わります。

- 8/2EUのAI法第50条とカリフォルニア州AI透明化法の適用が始まる
- 9/9AppleがSynthID対応とAppleリファレンス画像を発表
- 9/14iOS 27が出る。Image Playgroundが写真並みにリアルな画像を作れるようになる
- 9/18iPhone 18 Pro発売。Appleリファレンス画像が使えるようになる
- 年内ソフトウェアアップデートでSynthIDに対応(日付は未発表)
SynthIDはGoogleが作った目に見えない印だ
SynthIDはGoogle DeepMindが開発した電子透かしです。画像の画素そのものに信号を埋め込みます。人が見ても分かりませんし、画質も変わりません。
いちばんの特徴は消えにくさです。Googleの説明では、切り抜き・フィルター・非可逆圧縮といった加工をしても残るように作られています。画像を作ったその瞬間に埋め込まれるので、あとから剥がすことを前提にしていません。
Googleが2026年5月19日に公表した数字では、1,000億を超える画像と動画にSynthIDを付けたとしています。音声は6万年分です。GeminiでSynthIDを確かめる機能は、世界で5,000万回使われたと発表されています。
ただし埋め込みと確認は別の話です。SynthIDが入っているかを調べる窓口は、いまのところ報道関係者向けの受付が中心です。誰でも今すぐ画像を投げて確かめられる状態にはなっていません。
Image Playgroundは写真並みにリアルな画像を作る
同じ発表で、もう1つ関係する変更がありました。Image Playgroundが写真のようにリアルな画像を作れるようになったことです。
これまでのImage Playgroundは、イラストやアニメーション寄りの絵しか作れませんでした。ひと目で作りものだと分かる見た目です。そこに写真そっくりの画像が加わります。
iPhone 18 Proの48MP Fusionカメラで暗い場所を撮影した写真” width=”1960″ height=”1470″ loading=”lazy” />つまり同じiPhoneが、写真と見分けのつかない画像を作る側にも、AIが作った画像を見つける側にもなります。作る力と見分ける力が1台に同居するのは今回が初めてです。
なおImage PlaygroundはApple Intelligenceのサーバ側で動く機能なので、1日に使える回数に上限があります。Appleはこの枠を今後は有料で広げると説明しています。
Appleリファレンス画像は撮った瞬間に全画素へ署名する
Appleが入れる仕組みはSynthIDだけではありません。iPhone 18 Proと18 Pro Maxには、Appleリファレンス画像という別の機能が付きます。日本のApple公式ページはこう説明しています。
iPhoneで撮影した画像の真正性を証明できるようになりました。撮影時に、ピクセル単位の安全な署名を写真データに付与。カメラセンサーが実際にとらえた写真であることを確認するのが簡単になります。
リファレンスモードで撮ったときに署名が付くのは、カメラが見たままのデータです。その署名付きデータをプライベートクラウドコンピューティングが処理して、あとから書き換えられない参照用の画像を作ります。

写真アプリでは、この参照用の画像を元の写真と並べて見比べられます。フィルムのネガのような使い方です。上の画像では、中央のリファレンス画像に写っている背後の人物とグラスが、右の写真では消えています。編集が入ったことが目で分かります。
使うかどうかは利用者が選ぶ形です。中国は規制の関係で発売時には使えません。EUでは撮影ができませんが、iOS 27・iPadOS 27・macOS 27があれば参照用画像を開いて見ることはできます。
他社アプリからも読めるようにAPIが用意されました。報道写真やカメラマンの仕事で効いてくる仕組みです。
2つの印は向きが逆で足りない所を埋め合う
SynthIDとAppleリファレンス画像は、狙っているものが正反対です。SynthIDは「これはAIが作った」と示します。Appleリファレンス画像は「これは本物のカメラが撮った」と示します。

片方だけでは足りません。AIが作った画像に印が無くても、それは本物だという証明にはなりません。逆に本物の写真へ署名が付いていなくても、偽物だという意味になるわけではないのです。
Appleは英語版のリリースで、画像メタデータとSynthIDとAppleリファレンス画像をまとめて画像の真正性への多面的な取り組みと説明しています。1つの決め手ではなく、複数の手がかりを重ねる考え方です。
| 仕組み | 何を示すか | どこに入るか | いつ使えるか |
|---|---|---|---|
| SynthID | AIが作ったか編集した | 画素の中(目に見えない) | 年内のアップデート |
| Appleリファレンス画像 | センサーが実際に撮った | 撮影データへの署名 | iPhone 18 Proの発売時 |
| 画像メタデータ | 撮影日時や使った道具 | ファイルの付帯情報 | すでに使える |
画像を作れるAI75本のうち主要20本を1本ずつ調べた
iPhoneが印を読めるようになっても、読めるのは印が付いている画像だけです。では画像を作るAIの側は、どれくらい印を付けているのでしょうか。
AInformationが集めているAIツール494本のうち、画像を作れると分けたものは75本あります。75本すべてを確かめるには時間がかかります。そこで利用者が多い20本にしぼり、各社の公式ヘルプ・利用規約・技術文書を1本ずつ読みました。

結果は次のとおりです。目に見えない印を付けると公式に書いていたのは20本中9本でした。見える印だけを確かめられたものが1本、探しても記載を見つけられなかったものが10本です。
| ツール | 提供元 | 公式の記載 |
|---|---|---|
| ChatGPT | OpenAI | C2PAと電子透かし(SynthID)の両方 |
| Gemini | 電子透かし(SynthID)とC2PA | |
| Microsoft Copilot | Microsoft | C2PA(コンテンツ認証情報) |
| Adobe Firefly | Adobe | C2PA(コンテンツ認証情報) |
| Adobe Express | Adobe | C2PA(Fireflyの機能を使うため同じ) |
| Adobe GenStudio | Adobe | C2PA(Fireflyの機能を使うため同じ) |
| Meta AI | Meta | 見える表示と目に見えない透かし |
| FLUX | Black Forest Labs | APIの出力にC2PAの署名 |
| DreamStudio | Stability AI | 自社で動かす画面の出力にC2PA |
| Grok | xAI | 隅に見えるロゴのみ確認できた |
| Midjourney/Canva/Ideogram/Leonardo AI/Recraft/Freepik AI/Krea AI/Civitai/NightCafe/Picsart | 各社 | 公式の記載を見つけられなかった |
AInformation調べ(2026年9月10日)。AIツールデータベース494本のうち画像を作れると分けた75本が母集団。そこから利用者が多い20本について、各社の公式サイトに印を付けると書いてあるかを1本ずつ確認した。見つけられなかったことは、付けていないという意味ではありません。
調べていて引っかかったのがCanvaです。利用規約ではC2PAのメタデータを消してはいけないと利用者に禁じています。ところが自分たちが付けるとはどこにも書いていません。消すなと言う側が、付けるとは言っていない状態です。
C2PAと電子透かしは残りやすさと情報量が逆になる
公式の記載でよく出てくるのがC2PAです。コンテンツ認証情報とも呼ばれます。AdobeやMicrosoftなどが作った業界規格で、画像のファイルに「誰がいつ何で作ったか」を暗号で署名して記録します。
C2PAと電子透かしは、得意なところが逆です。C2PAは中身が濃いかわりに消えやすく、電子透かしは中身が薄いかわりに消えにくいという関係になります。
| C2PA(コンテンツ認証情報) | 電子透かし(SynthIDなど) | |
|---|---|---|
| どこに入るか | ファイルに付ける記録 | 画素そのもの |
| 分かること | 作った道具・日時・編集の履歴 | AIが作ったという事実 |
| 加工への強さ | 変換や転載で落ちる | 切り抜きや圧縮でも残る |
| 誰でも確認できるか | できる(確認サイトがある) | 作った会社の窓口が要る |
OpenAIは自社のヘルプで、この2つを組み合わせる理由をはっきり書いています。C2PAが細かい情報を運び、メタデータが残らなかったときはSynthIDが信号を残す。そういう説明です。両方を入れているのは、どちらか一方では欠けるからにほかなりません。
ChatGPTとClaudeは確実に見分ける方法は無いと答えた
いま何ができるのかを確かめるため、AInformationはChatGPTとClaudeへ同じ質問を実際に投げました。聞いたのは「AIで作られた画像かどうかを見分ける方法はありますか」です。
| ChatGPT | Claude | |
|---|---|---|
| 返るまで | 24.2秒 | 33.1秒 |
| 答えの長さ | 692字 | 980字 |
| SynthIDに触れたか | 触れなかった | 触れた |
| C2PAに触れたか | 触れた | 触れた |
| 結論 | 100%断定する方法は無い | 単独で確実に見分ける方法は無い |
注目したいのは結論がそろったことです。ChatGPTは画像だけを見て100%確実にAI生成と断定する方法はないと答えました。Claudeも2026年時点で単独で確実に見分ける方法はないとしています。
手順の勧め方も似ていました。2社とも、まず出どころをたどり、次にメタデータやC2PAを見て、判定ツールは参考程度にとどめる順番を挙げています。ChatGPTは判定ツールについて、本物の写真をAI画像と誤って判定することがあると注意を付けました。
1つ気になった点があります。ClaudeはiPhoneがiOS 18から撮影時に署名付きの認証情報を付けていると答えました。ただしAppleが今回出した発表では、撮った写真の真正性を示す仕組みはiPhone 18 Proで新しく入るものとして紹介されています。AIの答えをそのまま受け取らず、元の発表に当たる必要があります。
AInformation調べ。2026年9月10日にChatGPTとClaudeへ同じ質問を投げて、返ってくるまでの秒数と中身を数えたもの。
印はSNSへ上げた時点で消えていることが多い
ここが実際にいちばん効いてきます。C2PAはファイルに付いた記録なので、画像を作り直せば落ちてしまう。SNSやチャットアプリの多くは、投稿された画像を自分たちの形式へ変換しています。
スクリーンショットを撮れば当然消えます。画面に映ったものを撮り直しているので、元のファイルの情報は何も引き継ぎません。転載を重ねた画像に記録が残っていることは、まずありません。
電子透かしはこの点に強い作りです。画素に埋め込むので、変換しても切り抜いても残るように設計されています。ただし前に書いたとおり、確認する窓口はいまも限られたままです。
結局のところ、手元に元のファイルがあるかどうかで打てる手が変わります。元ファイルがあるならC2PAを見る価値は十分にあるでしょう。SNSで見かけた画像なら、印を探すより出どころをたどるほうが早い場面が多くなります。
EUとカリフォルニア州の規制は2026年8月2日から動いている
Appleの発表は、規制より後に出てきたものです。EUのAI法は第50条で、生成AIの提供者に対して、出力したものを機械が読める形で印を付けるよう義務づけています。適用が始まったのは2026年8月2日です。
同じ日にカリフォルニア州のAI透明化法も動き出しました。月に100万人以上が使う生成AIの提供者に対して、画像・動画・音声へ消えにくい形の開示を埋め込むことを求めています。作ったシステムの名前とバージョン、作成した日時を含める形です。

この2つが8月2日から動き、Appleが9月9日にSynthID対応を発表した順番になります。Apple Intelligenceを積んだ端末が世界中で売られている以上、規制と無関係ではいられません。
調べた20本のうち半分で公式の記載が見つからなかったことも、この流れの中で見ると意味が変わります。規制の線引きは月間100万人以上といった規模で引かれているので、小さいサービスはすぐには対象になりません。印が付く画像と付かない画像が混ざる状態は、しばらく続きます。
手元の画像を確かめる順番はC2PAから始める
いまの時点で私たちにできることを、順番に並べておきます。まず見るのは、元のファイルが手元にあるかどうか。ここで打てる手が分かれます。

元ファイルがあるなら、コンテンツ認証情報の確認サイトへ画像を渡してみてください。C2PAが付いていれば、作った道具と日時が表示されます。AdobeやOpenAIやMicrosoftで作った画像なら、ここで正体が分かることも多いはずです。
何も出なかったときは、そこで止めるのが正しい態度です。印が無いことはAI製ではない証明になりません。本物の写真にも付いていませんし、印を付けていないAIのほうがまだ多いからです。
目で見て探すやり方は、優先順位を下げてよくなりました。手や文字の崩れはAIが新しくなるほど減っています。写真のようにリアルな画像を作れるImage Playgroundが加わったことで、この傾向はさらに進みます。
次に見えてくるのは、Appleが年内に出すアップデートの中身です。SynthIDが入るのはどの編集をしたときなのか。利用者がどこでそれを確かめられるのか。この2つはまだ発表されていません。ここが決まって初めて、iPhoneは見分ける側の道具になります。
- SynthID
- GoogleがAIの作った画像や音声に埋め込む電子透かし。人の目には見えず、切り抜きや圧縮をしても残るように作られている
- C2PA(コンテンツ認証情報)
- 画像に「誰がいつ何で作ったか」を暗号で署名して記録する業界規格。中身は濃いが、変換や転載で落ちやすい
- Appleリファレンス画像
- iPhone 18 Proのカメラが撮影時に全画素へ署名し、あとから書き換えられない参照用の画像を作る機能。本物だと示す側の仕組み
作る側と見分ける側が同じ端末に入るのは今回が初めてです。ただし見分けられるのは印が付いている画像だけで、主要20本を調べたところ公式に印を付けると書いていたのは9本でした。印が無いことはAI製ではない証明になりません。当面は画像そのものより出どころをたどるほうが確実で、その手間はしばらく減らないと見ています。
- iOS 27に上げればすぐAI画像を見分けられるのか
- すぐではありません。SynthIDへの対応はApple公式の注釈で年内のソフトウェアアップデートとされていて、日付は発表されていません。9月14日のiOS 27で入るのはImage Playgroundの写真のようにリアルな画像のほうです。
- 印が付いていない画像はAI製ではないのか
- 違います。印を付けていないAIのほうがまだ多く、AInformationが主要20本を調べた範囲でも公式に記載があったのは9本でした。本物の写真にも印は付いていないので、無いことは判断材料になりません。
- 自分で画像を確かめる方法はあるか
- 元のファイルが手元にあるなら、コンテンツ認証情報の確認サイトへ渡すとC2PAの有無が分かります。SNSで受け取った画像は変換で記録が落ちていることが多いので、出どころをたどるほうが早くなります。
- Appleリファレンス画像は日本で使えるのか
- iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxで使えます。利用者が選んで有効にする形です。中国は規制の関係で発売時には使えず、EUでは撮影ができないものの参照用画像を開いて見ることはできます。
この記事の出典
補助資料
- [1]Appleこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月10日
