「ChatGPTの利用料って、経費として落としていいの?」と疑問に思っていませんか。
AIツールは日常業務に欠かせない存在となっていますが、経費処理にはルールと注意点が存在します。誤った処理をすれば、税務調査で指摘を受けるリスクもあります。
本記事では、ChatGPTの月額料金を経費として処理する方法を、実務に基づいてわかりやすく解説します。経費になるケース・ならないケースから、仕訳例、電子帳簿保存法への対応まで紹介するので、参考にして経費計上してください。
ChatGPTの料金プランや基本的な使い方については以下の記事で解説しているので、あわせて見てみてください。
ChatGPTとは?使い方や画像付き活用例、料金プランなどを解説
ChatGPTの月額料金は経費として認められるのか
ChatGPTは、業務効率化や情報収集、文章作成の支援など、ビジネスの現場でも活用が進んでいます。では、これらの月額料金は「経費」として処理できるのでしょうか?
結論から言うと、業務に直接関係する目的で使用していれば、ChatGPTの利用料は経費として計上できます。しかし、プライベート利用がある場合や利用目的が曖昧な場合には注意が必要です。
税理士の井ノ上陽一氏は自身のブログで
経費になるには、
・仕事として必要かどうか
・売上につながるかどうか(可能性があるか)
などといったことが基準です。
と述べ、使用用途次第で経費として認められると言っています。
ここでは、どのようなケースで経費処理が可能か、またその反対に処理が認められないケース、さらには私的利用との線引きについても詳しく解説します。
経費処理が認められる場合
ChatGPTの利用料金が経費として認められるかどうかは、「業務に直接関係しているかどうか」が判断基準になります。以下のような使用目的がある場合、経費処理は問題ありません。
- 文章作成(Webコンテンツ・企画書・社内文書など)の補助
- 調査やリサーチの効率化
- マーケティングやSEOのアイデア出し
- コーディングやプログラミング業務の補助
- 顧客対応の文面作成支援
これらは、業務における「合理的な支出」とみなされ、法人・個人事業主を問わず必要経費として処理が可能です。
参考:国税庁No.2210 必要経費の知識
経費処理が認められない場合
一方で、ChatGPTの使用が次のような目的である場合には、経費処理が否認される可能性があります。
- 趣味や学習、娯楽のための利用
- 家族や友人との私的な会話のための利用
- 業務と無関係な情報収集やエンタメ利用
「業務のため」と説明できない場合には、税務調査で否認されるリスクがあるので注意しましょう。
プライベートでも利用する場合の対応方法
ChatGPTを「業務でもプライベートでも使っている」というケースも多いでしょう。このような場合には、業務利用分を按分して経費処理する必要があります。
例えば、以下のような対応が考えられます。
- 利用時間ベースで業務利用とプライベート利用を分けて計算(例:業務8割、プライベート2割)
- 1か月あたりの業務での利用内容を簡単に記録しておく
按分計算の根拠となる「業務利用の割合」について、税務署に説明できるように利用実績のスクリーンショットや記録を残しておくと安心です。
利用目的次第では解約を考えている方は以下の記事を参考にしてください。
ChatGPT Plusの解約方法とは?手順や注意点などを解説
ChatGPTの月額料金の勘定科目の選び方
ChatGPTを業務で利用するにあたっては、その利用料をどの勘定科目に分類するかも重要なポイントです。正しく分類しないと、税務処理上のトラブルにつながる可能性もあります。ここでは代表的な3つの勘定科目の考え方を解説します。
通信費として計上する
もっとも一般的な処理方法は「通信費」としての計上です。ChatGPTの利用はインターネット経由で行われるため、インターネットサービスの一種として解釈されます。
会計上は、業務上必要なデジタルサービスにかかる継続的支出として整理すれば、通信費としての整合性も取れます。
支払手数料として計上する
ChatGPTの利用が、一時的な情報処理代行や、サービス提供に対する報酬と解釈できる場合には、「支払手数料」として計上することも可能です。
ただし、「手数料」としての分類は、金融機関や仲介サービスなどへの支払いに使われることが多いため、ChatGPTのようなツールに適用する場合は、税理士や会計士と相談のうえでの運用が望ましいです。
雑費として計上する
上記のいずれにも該当しない場合は、「雑費」として処理する方法もあります。雑費とは、他の勘定科目に分類しにくい少額の支出や特殊な費用に使われる項目です。ChatGPTのように新しいサービスや用途が曖昧なツールの場合、雑費で処理することで柔軟に対応できます。
ただし、雑費の比率が高くなると、税務署から「経費の管理が甘い」と見なされる恐れもあります。あくまでも補助的な選択肢として考え、可能な限り実態に合った科目を選ぶよう心がけましょう。
ChatGPTの月額料金の領収書や請求書の取得と保存方法
ChatGPTを経費として正しく処理するには、領収書や請求書といった支出の証拠を確実に保存しておく必要があります。クラウドサービスの利用料は毎月の自動課金で処理されるため、つい記録を忘れがちです。しかし、税務調査の際に「正当な支出であるかどうか」を証明するには、発行元や支払内容が明確な書類が必要になります。
ここでは、ChatGPT利用料の領収書・請求書の取得方法と、それらを保存する際に注意すべきポイントについて説明します。
領収書のダウンロード手順
ChatGPTの有料プランに登録すると、支払いが発生するたびに「領収書(Receipt)」が発行されます。ダウンロード手順は以下の通りです。
- OpenAIの公式サイトにログインします。
- 右上のアイコンをクリックし、メニューの「設定」を選択します。
- 1番下の「サブスクリプション」をクリックし、画面下の支払い「管理する」を選びます。
- ChatGPT Plusプランに加入しているため、以下のような表示が出てきます。
- 下にスクロールすると、請求書の履歴を確認できます。
4月分をクリックして右側の「領収書をダウンロード」からpdf形式でダウンロードできます。
この領収書には、ユーザー名、金額、支払日、サービス内容(例:ChatGPT Plus Subscription)などが記載されており、証拠書類として保存可能です。
ChatGPTの領収書に関して知っておきたいことは以下で詳しく解説しているのであわせて確認してみてください。
ChatGPTで領収書の発行は可能なの?手順や活用方法について紹介
請求書のダウンロード手順
OpenAIでは、支払い時に請求書も自動で発行されます。領収書と同様に進み、以下の画像の左側「請求書をダウンロード」からpdfで取得できます。
電子帳簿保存法に注意する
電子帳簿保存法により、2024年1月1日から電子取引に関する証拠(領収書・請求書など)については、電子保存が原則義務化されています。ChatGPTの利用料のようにオンライン決済が行われた場合は、この法律の対象になります。
主な対応方法としては、以下の点に注意が必要です。
- PDFでダウンロードした請求書や領収書は、改ざん防止のためにタイムスタンプを付与するか、訂正・削除履歴が残る形式で保管する
- ファイル名に取引年月日」「取引金額」「取引先」などの検索キーワードを含めて保存する
- 国税庁が定めた保存要件(可視性・検索性・完全性)を満たすクラウドストレージや会計ソフトを活用する
領収書の発行に関しては、以下の記事でも解説しているので、確認してみてください。
ChatGPTで領収書の発行は可能なの?手順や活用方法について紹介
ChatGPTの月額料金の仕訳方法と会計ソフトでの処理手順
ChatGPTの月額利用料を経費計上する際には、適切な仕訳処理を行う必要があります。仕訳とは、帳簿に記載する際の記録形式であり、どの勘定科目に分類するか、どの口座から支払われたかなどを明確にする作業です。ここでは、一般的な仕訳の例から、クレジットカードを使った場合、消費税の扱いまで、実務に役立つ処理方法を解説します。
基本的な仕訳例
ChatGPTの利用料を業務目的で支払った場合、代表的な仕訳は以下の通りです。たとえば1か月あたりの利用料金が3,000円(税込)だった場合、次のように記載します。
(借方)通信費 3,000円 / (貸方)普通預金 3,000円
この場合、ChatGPTのサービス内容が業務に必要であることが前提です。勘定科目は、前章で解説したように「通信費」「支払手数料」「雑費」などから適切に選びます。
クレジットカード利用時の仕分け方
ChatGPTの料金はクレジットカードで決済されます。クレジットカードで支払った場合は、支払日と引き落とし日がずれるため、以下のように2段階で仕訳を行います。
1. 支払時点の仕訳(利用確定)
(借方)通信費 3,000円 / (貸方)未払金 3,000円
2. 引き落とし時点の仕訳(実際の出金)
(借方)未払金 3,000円 / (貸方)普通預金 3,000円
この処理により、決算時点での未払分が明確になり、キャッシュフローの把握にも役立ちます。
消費税の扱いに注意する
OpenAIは、日本国内の利用者に対して10%の消費税を適用し、適格請求書(インボイス)を発行しています。消費税を別に申告する場合は以下のように仕分けをしましょう。
(借方)通信費 3,000円
(借方)仮払消費税 300円 / (貸方)未払金 3,000円
ChatGPTの経費処理に関するよくある質問
ここでは、ChatGPTの月額料金を経費処理する際によく聞かれる3つの質問にお答えします。
業務利用とプライベート利用が混在する場合の記帳方法を教えてください。
ChatGPTを業務だけでなく、プライベートでも利用している場合は、業務利用分と私的利用分を明確に区分し、業務で使った分のみを経費にする按分処理が必要です。
たとえば、1か月のうち80%を業務利用、20%をプライベート利用していると判断した場合、料金の80%だけを経費に計上します。このような按分の基準としては、利用時間、内容、使用目的などが挙げられます。
税務署から求められた際に説明ができるよう、利用履歴やログの一部を記録しておくと安心です。
クレジットカード明細だけで経費処理できますか?
クレジットカードの明細に、必要項目がすべて記載されていれば、領収書の代わりに使用できます。しかし、明細に請求先や金額は記載されても、具体的なサービス内容や使用目的が記載されていない場合は、領収書や請求書といった書類を保存することが求められます。税務調査でのリスク回避にもつながるため、毎月ダウンロードを習慣化しておくことをおすすめします。
他のAIサービスも同様に処理できますか?
ChatGPT以外のAIサービスでも、業務上の必要性が明確であれば同様に経費処理が可能です。同様に、通信費・支払手数料・雑費などの勘定科目で処理できます。大切なのは、目的と使用実態を記録に残しておくことです。