AIの進化により、ChatGPTなどのツールを使った論文作成が広がっています。しかし、「本当に使ってもいいの?」「どう使えば不正にならない?」と不安に思う人も多いはずです。
この記事では、AI初心者でも理解しやすいように、ChatGPTの正しい活用法と注意点を解説します。実践で使える方法を紹介しますので、ChatGPTを活用して論文を書きたい方は、ぜひ参考にしてください。
以下の記事ではChatGPTの基本を解説しているので、合わせて確認してみてください。
ChatGPTとは?使い方や画像付き活用例、料金プランなどを解説
ChatGPTは論文作成に使ってもいいのか?

AIによる文章生成が普及する一方で、学術の世界では、AIを使うこと自体に賛否が分かれています。ChatGPTを使って論文を書こうとする際は、まず必ず所属機関の規定を確認し、その範囲内で利用することが必要になります。AIはあくまで研究や思考を助ける道具です。自分自身で論理を組み立て、内容の妥当性を確認する姿勢が求められることを意識しましょう。
ChatGPTの使用が不正行為に該当する基準
ChatGPTが論文作成で不正とみなされるのは、AIで生成したものをそのまま本人の成果として提出した場合です。AIに論文の本文や結論部分を作成させ、それを全く修正せず提出すると、多くの大学や学術誌で「剽窃」や「不正利用」とみなされます。また、AIが作った参考文献やデータをそのまま引用する行為も、正確性に欠け、論文の根幹を揺るがす重大な不正とされる場合がほとんどです。こうした行為は、仮に悪意がなくても厳しい処分の対象となる可能性があるため、十分注意しましょう。
一方で、論文の構成や表現の見直し、文法ミスの修正など、論文作成を支援する形でAIを使うことは、許容される場合が多いです。しかし、この場合も、AIの答えを鵜呑みにせず、自ら内容を精査し、責任を持って作成してください。
所属機関や提出先のAI利用ガイドラインを確認する
論文やレポートを提出する際に重要なことは、提出先のAI利用に関する規定を確認することです。多くの大学や学会は、AI活用に関するガイドラインを制定しています。これらのガイドラインには、「どこまでAIの助けを借りてよいのか」「AIの利用をどのように申告するのか」など、具体的なルールが細かく記載されています。
東京大学では、学術利用は本人作成が原則で、AIのみのレポート提出は禁止されています。誤情報のリスクや機密・個人情報流出、著作権問題に注意が必要で、適切な活用法と議論を推奨しています。
参照:生成系AI(ChatGPT, BingAI, Bard, Midjourney, Stable Diffusion等)について
実際にAIを使う前に、必ず大学の指導教員や、学会の担当者、または論文誌の編集部などに問い合わせて不明点を確認することが大切です。今後、AIのガイドラインは変更されていく可能性があるため、常に最新情報をチェックしましょう。
補助ツールとして使う
ChatGPTは、補助ツールとして活用しましょう。ChatGPTを使えば、論文テーマの着想を広げたり、構成のサンプル案を作成したり、専門用語の使い方や論理的な説明の表現例を得ることができます。また、複雑な文章を平易な言葉に書き直したり、逆により専門的な表現へと書き換えることも簡単です。
このような「補助的な使い方」は、研究や学習の生産性を高めるだけでなく、論文の完成度も向上させます。しかし、最終的な責任は執筆者自身にあるため、自ら根拠を調べ、主張の一貫性や信頼性を必ず確認する必要があります。
ChatGPTで論文作成する方法
ChatGPTを効果的に使えば、論文作成を効率化できます。ここでは、テーマ選びから構成案の作成、本文執筆や引用対応まで、ステップごとに活用方法を解説します。
テーマ決め・アイデア出しに使う
論文の出発点となるテーマ選びは、頭を悩ませる工程の一つです。ChatGPTに分野や興味関心、社会的課題などを入力することで、最新トピックや独自の視点から切り込むテーマ案を提案してもらえます。AIに「どのテーマが研究価値が高いか」「今後注目されそうな論点は何か」などを質問することで、自分の興味と学術的意義の両方をバランス良く満たすテーマ選定のヒントを得ることができます。
実際に、日本でのAIの発展について論文を書く際のテーマとアイデア出しをしてみます。
あなたはプロの学者です。日本でのAIの発展について論文を書きます。今後注目されそうな論点を元に、テーマ案を3つ、そのアイデアとその根拠も併せて教えてください。
以上の内容をGPT-4.1に送信したところ、1. 「日本型AIガバナンスの形成と国際協調の可能性」、2. 「生成AIによる教育・人材育成の変容と日本社会の適応」、3. 「高齢化社会におけるAI活用の社会的インパクトと課題」の3つの案を出してくれました。

今回は3 のアイデアを元に進めます。
論文の構成作成に使う
論文はテーマが決まった後、全体構成をしっかり設計することが質の高い論文作成には重要です。ChatGPTは「○○というテーマで論文構成を提案してください」といった依頼に対して、序論・本論・結論など各章の見出し例や流れを論理的に提案してくれます。こうした構成案を参考に、自分なりの独自性を加えて最適なものを作成できます。
「高齢化社会におけるAI活用の社会的インパクトと課題というテーマで論文構成を提案してください」と依頼した結果は以下の通りです。

はじめにから、現状と分析、参考文献まで掲載する構成を1回で出力してくれます。

論文の本文を出力する
ChatGPTは、論文の草案やパラグラフを生成する機能も持っています。たとえば、自分がまとめた要点や箇条書き、参考文献のポイントなどを入力して「学術論文風に本文を5000字以上で生成してください」と依頼すると、分かりやすくまとまった文章を短時間で生成してくれます。

しかし、AIが出力した内容が正しいか確認し、自分の言葉で表現や根拠、構成を見直すことが不可欠です。
文章作成ができるAIについては以下の記事で詳しく紹介しているので、AIを活用してレポート作成をしたい方は参考にしてください。
AI文章作成ツールで効率化!レポート作成業務におすすめツール4選
参考文献や引用部分の扱い方に注意する
論文では、根拠や先行研究の引用が重要です。ChatGPTは「実在しない参考文献」や「架空の引用文」を自然な形で作成する場合があるため、AIが生成した参考文献リストや引用部分をそのまま採用することは避けてください。必ず、AIが示した文献が実在するかどうか、書誌情報が正確かを自分で確認し、一次情報を取り寄せて自分の手で引用部分をチェックしましょう。
今回も『参考文献を出力してください』と依頼したところ、画像のように出力されました。『令和5年版高齢社会白書』は存在しますが、パラマウントベッド株式会社の『眠りSCAN導入実績と事例集』というタイトルのものは存在しませんでした。
ChatGPTで論文を要約する方法
ChatGPTは、膨大な量の論文や資料を効率的に要約する作業にも強みを発揮します。要点を整理したいときや、複数の資料を短時間で読み比べたい場合、ChatGPTを活用してみましょう。
拡張機能を使った要約の方法に関しては、下記の記事で詳しく解説しているので、合わせて確認してみてください。
ChatGPTで要約のやり方を解説!おすすめChrome拡張機能から注意点まで
日本語の論文を要約する方法
日本語の論文を要約したい場合は、論文本文や必要なセクションをChatGPTに入力し、「この内容を300字以内で要約してください」などと具体的に依頼するだけで、分かりやすい要約文を得ることができます。
AIが作成した要約文を参考にしつつ、自分が強調したいポイントや研究目的に合わせてブラッシュアップしていきましょう。

今回は、厚生労働省の第3回 新AI戦略検討会議 資料2を読み込ませ、300文字以内に要約してもらいました。210文字で端的に回答しています。
英語の論文を日本語で要約する方法
原文の英文をそのまま入力し、「日本語で300文字以内で要約してください」と依頼すれば、日本語で要約文を出力してくれます。ただし、AIの自動翻訳・要約には微妙なニュアンスや専門用語の誤訳が生じることもあるため、必ず自分の知識や辞書を使ってダブルチェックする習慣を持つことが大切です。

今回は5月30日に発表されたAIに関する論文(Emergence of Personality in AI: An Integrated Evolutionary Model of Intelligence and Emotion through Co-Creation with AIDE)を要約してもらいました。215文字で回答、ファイルもすぐに参照でき、ファイル内の内容についても質問できるようになっています。
PDF形式の論文を要約する方法
PDFファイルもアップロードし、そのまま読み込ませることができます。

まず、左下の+ボタンをクリックし、「写真とファイルを追加する」を選択します。

該当ファイルを選択すると、画像のようにアップロードされます。
ChatGPTで論文を校正する方法

ChatGPTは、文法ミスや誤字脱字だけでなく、より自然な論文調への書き換えや、構成の論理性チェックにも柔軟に対応できます。
文法や誤字脱字をチェックする
自分で書いた論文本文や要約をChatGPTに入力し、「文法や誤字脱字を確認してください」と依頼すると、AIが自動的に文章のミスを指摘し、正しい表現に修正してくれます。複雑な日本語や専門用語もAIなら的確に見抜くため、セルフチェックでは見落としがちなミスを減らす効果があります。
表現を文語調に整える
ChatGPTは、カジュアルな言い回しや話し言葉を、論文にふさわしい格式ある表現に書き換える作業もできます。「この文章を学術論文風に書き直してください」などと依頼することで、自然な文語調へと変換してくれます。主語と述語のバランスや、専門分野ごとの決まった表現方法もAIが自動的に適用するため、文章の統一感や信頼性が一段と高まります。
実際に、口語から文語、日本語から英語への翻訳で活用している人もいます。
構成の一貫性や論理性をチェックする
論文執筆で意外と見落とされがちなのが、全体の論理展開や構成の一貫性です。ChatGPTは、文章や各章の流れを読み取って「論理的に矛盾がないか」「前後関係が自然か」をチェックし、必要に応じてアドバイスや修正案を提示してくれます。論理の飛躍や説明不足を事前に防ぐことができ、学術論文や研究計画書の質を底上げするのに役立ちます。
学生・社会人・研究者それぞれの活用パターン
ChatGPTは学びの現場やビジネス、研究分野など幅広く活用されています。ここでは、それぞれの利用目的や課題ごとの使い方を解説します。
学生|レポート・卒論作成の効率化に使用する
学生の場合、レポートや卒業論文のテーマ選定から構成案の作成、要約や校正までChatGPTの力を活用できます。限られた時間の中で効率よく情報を集め、説得力のある文章に仕上げたいとき、AIがアドバイザーとしてサポートしてくれます。しかし、以下の投稿にもある通り使い方次第で、学びになるかは変わってきます。
社会人|リサーチや企画書作成の時短に活用する
ビジネスの現場では、企画書やレポート作成、調査資料の要約などでChatGPTの活用が進んでいます。ChatGPTにリサーチや仮説整理をサポートしてもらうことで、膨大な資料やデータの中から必要な情報を抽出できます。
また、文章作成の自動化により、報告書や社内文書の作成時間も大幅に短縮できます。英文資料の要約や翻訳機能は、グローバル業務を担う社会人にとって大きな武器となるでしょう。
ソフトバンクのAI取組みでは、アプリレビュー分析にかかっていた時間を従来の300分から20分に短縮。90%の業務効率化を実現しています。
研究者|仮説整理や既存文献の比較に活用する
研究者にとっては、仮説構築や研究計画の策定、既存文献の比較整理などさまざまな使い方が求められます。ChatGPTは膨大な情報を一括で整理したり、多様な視点から比較検討することも得意です。反復作業や煩雑な事務作業をAIに任せることで、本来注力すべき独自研究や新たな発見により多くのエネルギーを費やすことが可能になります。
ChatGPTで論文を作成する際の注意点

AI活用は便利な一方で、いくつかの注意点があります。これらのリスクをしっかり理解し、自分自身で責任を持って使いましょう。
コピペに注意する
ChatGPTが生成した文章をそのままコピペして論文に使うのは、辞めましょう。「剽窃」とみなされることがあり、学問的な信用や評価を大きく損なう危険性があります。必ず自分の言葉で編集し、内容や論理構成が自分の主張や目的に合致しているか見直しましょう。
また、コピペチェックツールなどを活用し、他者の文章と重複していないかを確認してから提出するようにしましょう。
出典や参考文献の信頼性を確認する
ChatGPTが示す参考文献は、実在しない場合や情報が不正確な場合があります。したがって、必ず一次情報や文献に自分の手でアクセスし、正確性を自分でチェックしましょう。自分でGoogle ScholarやCiNii、学術機関リポジトリ(IRDB)などのデータベースで検索し、実在を確認することが必要です。
また、ChatGPTが提示した内容に対して「その根拠を教えて」「〜に対してファクトチェックして」と指示すると、引用元のURLや裏付けを出力してくれます。しかし、最終的な判断は自分自身で行ってください。
最新情報に気をつける
ChatGPTが答えられるのは学習時点までの情報であり、それ以降の最新研究や法改正、技術動向はカバーしていない場合があります。検索機能や、モデルを選択することで、最新情報にアクセスすることもできますが、必ず公式サイトや論文データベースなどで追加調査が必要です。
ChatGPTに「これは最新の情報ですか?」と質問し、公式サイトや最新の論文データベースで裏取りする方法もあります。
論文の評価基準を満たしているか確認する
大学・学会などの「論文評価ガイドライン」や「執筆要項」を事前に確認してください。ChatGPTの回答に頼るのではなく、評価基準を自分で丁寧に確認し、教員や同僚、専門家の意見を取り入れながら論文を仕上げましょう。書き上げた後は、指導教員や研究仲間に見てもらい、外部の視点からのフィードバックを受けることもより良い論文作成につながります。
AI利用の申告有無に気をつける
近年は、AI利用を申告することを義務付けるガイドラインが増加しています。AIを使った場合は、その範囲や利用目的を脚注や謝辞、もしくは所定のフォームなどに正しく記載する必要があります。ルールを守らなければ、論文の受理が取り消されるなど重大なトラブルにつながりますので、必ず最新の申告ルールを確認しましょう。