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【調査】小売で使えるAIツールは292本あるが物流向けは7本しかない

読了 約13分
タブレットを操作する物流倉庫の作業員
この記事の要点

AIツールは何百本もあるように見えますが、業界で絞ると選択肢の数は大きく変わります。AInformationが494本を14業界に分けて数えたところ、小売・ECは292本ある一方で物流・運輸は7本しかありませんでした。ClaudeとChatGPTに業界別のおすすめを聞き、返ってきた答えの差も確かめました。

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藤井俊太のアバター

AI導入コンサルタント

藤井俊太(Shunta Fujii)

AIのスペシャリストとして、最新のAI情報を常にキャッチ、アップデートしている。自らもAI導入コンサルタントとして活動し、主に生成AIを駆使した業務効率化、生産性向上、新規事業開発を行なっている。
AIの総合情報サイト「AInformation」は、AIに関する情報やサービスを解説・紹介するWebメディア。運営と記事の確認は藤井俊太が1人で行っています。藤井俊太のプロフィール

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AIツールは何百本もあるように見えますが、業界で絞ると選択肢の数は大きく変わります。AInformationが494本を14業界に分けて数えたところ、小売・ECは292本ある一方で物流・運輸は7本しかありませんでした。ClaudeとChatGPTに業界別のおすすめを聞き、返ってきた答えの差も確かめました。

494本を14業界に分けて数えた

AInformationでは494本のAIツールを集めてデータベースにしています。各ツールの公式サイトを見て料金や日本語対応を記録したものです。料金が日本円で払えるかも調べています。無料プランの有無や管理画面の日本語対応もチェック済みです。今回はこの494本を14の業界に分けて、業界ごとに何本のツールが使えるかを数えました。

14の業界は小売・EC、IT・Web、広告・メディア、人材・HR、教育、金融・保険、士業・専門、医療・介護、製造、公共・自治体、建設・不動産、飲食・宿泊、美容・サロン、物流・運輸です。

「使える」の基準はツールの公式サイトが該当業界での用途を示しているかどうかです。議事録の文字起こしツールのように業界を問わないものは全業界にカウントしました。配送ルート最適化のように特定業界向けのものはその業界だけにカウントしています。

1つのツールが複数業界に当てはまるときは重複してカウントしています。そのため14業界の合計は494本を超えます。この数え方で出した結果が、業界ごとの選択肢の差です。結果には大きな開きがありました。どの業界が多くてどの業界が少ないのか。その差はどのくらいなのか。以下で順に見ていきます。

「AIツール おすすめ」で検索すると出てくる記事は、業界を横断して10本や20本をまとめて紹介するものがほとんどです。便利な記事ですが「自分の業界で使えるのは何本あるか」という問いには答えてくれません。今回はその問いに数字で答えるために業界別に数えました。

小売・ECは292本で最多

もっとも多かったのは小売・ECの292本です。494本のうち292本がこの業界で使えるという結果でした。全体の6割近いツールが小売・ECの仕事に対応しています。

14業界別のAIツール数(AInformation調べ・494本)

小売・EC 292
IT・Web 275
広告・メディア 199
人材・HR 183
教育 129
金融・保険 92
士業・専門 71
医療・介護 63
製造 60
公共・自治体 56
建設・不動産 50
飲食・宿泊 42
美容・サロン 39
物流・運輸 7
AInformation調べ。2026年9月11日時点。1つのツールが複数業界に該当する場合は重複カウント / 制作:AInformation

2番目はIT・Webの275本です。3番目は広告・メディアの199本で、上位には情報を中心に扱う業界が並びます。小売・ECが多い理由ははっきりしています。商品写真を加工するツールやレビューを分析するツールがあります。在庫を予測するツールや広告を自動で出すツールもあり、商品を売るまでの工程ごとにAIツールが出ています。ECサイトの運営では文章・画像・データのどれもパソコン上で完結するため、AIが入りやすい構造です。実店舗の接客もPOSデータの分析や需要の予測にAIが使われるようになり、オンラインと実店舗の両方からツールが増えています。

4番目の人材・HRは183本です。求人原稿の作成や面接の文字起こしなど、文章と対話が中心の仕事ではツールが出やすい傾向があります。5番目の教育は129本。6番目の金融・保険は92本で、ここから先は100本を切ります。上位5業界だけで選択肢の大部分を占めている構図です。逆に言えばそれ以外の9業界はツールの数がかなり限られます。100本に届かない業界が大半です。

物流・運輸は7本で最少

14業界で最も少なかったのが物流・運輸の7本です。下から2番目の美容・サロンが39本です。3番目の飲食・宿泊が42本なので、物流・運輸だけが突出して少ない結果になりました。下から2番目と比べても5分の1以下です。

物流の現場は荷物を運ぶ・仕分ける・積むといった身体を使う作業が中心です。AIツールが得意な文章の生成や画像の加工とは仕事の内容が違います。配送ルートの最適化や倉庫の在庫管理ではAIが使われ始めていますが、ツールとして単体で売られているものはまだ少ないのが実情です。

同じ現場仕事でも建設・不動産は50本あります。図面の読み取りや物件写真の加工といった用途でツールが出ています。物流・運輸は、ドライバーの運転中や倉庫での仕分け作業中にパソコンやスマホを開く場面が少ないことも影響しています。使う場面がなければツールも生まれにくいということです。ただし物流業界でもバックオフィス(経理・人事・総務)の仕事ではAIツールを使えます。業界特化のツールが少ないだけで「物流会社がAIを使えない」という意味ではありません。事務の仕事にはAIツールが使えます。

上位3業界と下位3業界を並べた

上位3業界と下位3業界のツール数。制作:AInformation。
上位3業界と下位3業界のツール数

上位3業界は小売・ECの292本とIT・Webの275本と広告・メディアの199本です。下位3業界は飲食・宿泊の42本と美容・サロンの39本と物流・運輸の7本です。並べると選択肢の幅がまったく違うことがわかります。

上位の業界ではツールを比べて自社に合うものを選ぶ段階に入っています。一方で下位の業界ではそもそも選択肢が足りません。「自社に合うAIツールを探したい」と思っても、業界で絞った途端に候補がほとんどなくなります。この差は思っている以上に大きく、ツール選びの入り口から変える必要があります。

この差は「AIに何ができるか」ではなく「その業界のどの仕事がAIに置き換えやすいか」で決まっています。文章を書く・画像を作る・データを分析するといった作業が多い業界ほどツールが集まります。身体を動かす仕事の割合が高い業界にはツールがまだ追いついていません。中間に位置する金融・保険の92本や医療・介護の63本は、業界固有の規制やセキュリティ要件がツールの数に影響している面もあります。金融は顧客データの取り扱いが厳しく、ツールを提供する側も「金融向け」をうたうのに慎重です。医療はカルテや個人情報を扱うため同じ構造があります。

AIに「物流向けツール」を聞いてみた

業界によるツール数の差はAIの回答にも影響するのか。実際にClaudeとChatGPTに「物流会社で業務に使えるAIツールを5つおすすめしてください。料金と日本語対応も教えてください」と聞きました。

Claudeの回答で固有名が出たのはLoogia(ルージア)の1本だけです。残りの4つは「需要予測・在庫管理AI」「画像認識AI」「音声入力AI」のようなカテゴリ名でした。「5つおすすめして」と頼んだのに、具体的な製品名ではなく「こういう種類のツールがあります」という案内が返ってきたかたちです。料金も「個別見積もりが一般的」「要問い合わせ」と書かれるだけで、金額は出ませんでした。

ChatGPTは5つとも固有名を挙げました。ただし中身はChatGPT Business、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace+Gemini、Power Automate Premium、DX Suiteです。物流に特化したツールは1本も入っていません。どの業界でも使える汎用ツールが並んだだけです。料金はMicrosoft 365 Copilotの月額4,497円のように具体的な数字が出ましたが「物流でこそ役立つ」という説得力はありません。7本しかない業界ではAIも答えに困るということです。

回答にかかった時間はClaudeが58秒、ChatGPTが73秒です。どちらもウェブ検索をしてから回答していました。物流特化のツール情報が少ないためか検索と回答の行き来が多く、時間がかかった印象です。

「小売向け」に変えると答えが変わる

同じ質問の業界を「小売・EC企業」に変えて聞き直しました。回答の中身はがらりと変わります。

Claudeの回答にはShirofune(広告運用の自動化)、ZETA CX(レコメンドエンジン)、KARAKURI(チャットボット)と、小売・ECに特化したツールが3本入りました。料金もShirofuneは「広告費の5%」、KARAKURIは「初期費用100万円前後」と具体的です。物流向けで「個別見積もり」としか答えなかったのとは対照的です。

ChatGPTはShopify Sidekick、Klaviyo、Algolia、Gorgiasと、EC運営に直結するツールを4本挙げています。Shopify Sidekickは「Shopify料金に込み。Basicは年払いで3,650円/月」のように、プランと金額まで出てきました。Klaviyoはメールマーケティング、Algoliaはサイト内検索、Gorgiasはカスタマーサポートと、ECの業務ごとに分かれた提案です。

292本の選択肢がある業界ではAIの学習データにも業界特化ツールの情報が多く含まれています。結果として回答の具体性が上がります。7本の業界ではAIが参照できる情報自体が少なく、カテゴリ名や汎用ツールで埋めるしかなくなります。ツールの数がAIの回答の質を左右しているという構図が見えてきます。

返ってきたツールをデータベースと突き合わせた

AIに「業界で使えるツール5つ」を聞いた結果の比較

Claude ChatGPT
物流向け:業界特化ツール 1本(Loogia) 0本
物流向け:汎用ツール 1本(ChatGPT等まとめて紹介) 5本(ChatGPT Business・M365 Copilot等)
物流向け:カテゴリ名のみ 3件(需要予測AI・画像認識AI等) 0件
小売向け:業界特化ツール 3本(Shirofune・ZETA CX・KARAKURI) 4本(Shopify Sidekick・Klaviyo・Algolia・Gorgias)
小売向け:汎用ツール 2本(ChatGPT・Adobe Firefly) 1本(Canva)
AInformation調べ。2026年9月11日に実際に質問して得た回答を分類 / 制作:AInformation

ClaudeとChatGPTが返してきたツール名をAInformationの494本のデータベースと突き合わせました。2つのAIに2つの業界を聞いたので、回答は合計4件です。

物流向けの回答でClaudeが固有名を挙げたのはLoogiaの1本です。Loogiaはオプティマインドの配送ルート最適化サービスで実在します。ただしClaudeは料金を「要見積もり」とだけ答えており、金額は出せていません。残りの3件はカテゴリ名なので突き合わせの対象外です。

ChatGPTが物流向けに挙げた5本はすべてデータベースに載っていました。ただし全部が汎用ツールです。物流の課題に直接応えるものは含まれていません。料金の数字は具体的でしたが、公式サイトと突き合わせると時期やプランで差が出る項目もあります。

小売向けではどちらも業界特化ツールを挙げており、回答の質に差がつきました。ChatGPTが挙げたShopify SidekickやKlaviyoはAInformationのAIツール一覧にも掲載されているEC向けツールです。ツールの数が多い業界ほどAIの回答も具体的になるという結果です。AIに聞いて出てきた名前をそのまま導入するのではなく、データベースと突き合わせて確かめる手順が必要です。とくにツールが少ない業界では、AIが存在しない名前を出したり古い情報を返す可能性が高くなります。

日本語と日本円で絞ると43本に減る

日本企業が使いやすい条件で絞り込んだ結果。制作:AInformation。
日本企業が使いやすい条件で絞り込んだ結果

494本のツールを日本の企業が使いやすい条件で絞り込みます。

まず日本語がしっかり通るツールは208本です。494本の42.1%にあたります。管理画面やサポートが英語だけのツールは社内に広めにくいため、日本語対応は大きな分かれ目になります。

次に日本円で料金を払えるツールに絞ると69本になります。ドル建てのツールは為替で月額が変動します。経理処理の手間も増えるため、円建てで払えるかどうかは導入のしやすさに直結します。

さらに無料プランがあるものに絞ると43本です。まずは無料で試して社内の反応を見たい企業は多いはずですが、ここまで絞ると43本しか残りません。この43本の月額の中央値は2,506円です。ChatGPTの月額1,400円やNotionの月額1,650円がこのあたりの価格帯に入ります。料金が公開されている298本全体で見ると月額3,000円未満のツールが176本で59%を占めます。安いほうから並べて25%目が月額1,539円で75%目が4,360円です。半数は月1,500円台から4,400円弱の間に収まっています。

日本の会社が作ったツールは全体で113本あり、494本の22.9%です。国産にこだわりたい企業にとっては、この113本が出発点になります。日本円で払えるツール82本のうち16.6%は有料プランのみです。無料トライアルなしにいきなり課金が始まるものもあります。契約前に無料プランの有無を確かめるのが安全です。

職種で数えるとマーケ193本と法務16本

業界だけでなく職種でも数えました。もっとも多いのはマーケの193本です。広告文の作成やSNS投稿の生成にAIが使いやすく、アクセス解析にもAIが入っています。マーケの仕事はAIが得意な領域と重なります。

次が事務・総務の137本で、企画・経営の129本が続きます。デザインは94本で開発は76本です。広報・PRは71本で営業は69本。この4つはいずれも50本を超えており、ツールを比較して選べる水準です。

少ないのは法務と経理・財務の各16本です。情シスは26本で顧客対応は29本です。人事・採用は31本で、バックオフィス系の職種では選択肢が限られます。法務は契約書のレビューや法令調査など専門性が高く、汎用AIでは対応しにくい分野です。経理・財務も同じく16本で、仕訳や決算に関わる作業は正確さの要求が高いためツールの開発が慎重に進んでいます。

自分の業界でツールが少なくても職種で探すと見つかることがあります。たとえば物流会社の営業なら「物流」ではなく「営業」で探すと69本から選べます。AIツールの選び方の記事も参考にしてください。

ツールが少ない業界で始めるには

ツールが少ない業界での選び方。制作:AInformation。
ツールが少ない業界での選び方

自分の業界でAIツールが少なかった場合、どう始めればいいか。3つのステップがあります。

最初に試すのは業界を問わず使える汎用ツールです。ChatGPTは月額1,400円、Microsoft Copilotは月額3,200円で、文章の作成や要約に使えます。業界を選びません。メールの下書きや日報の作成など、日常の文章作業を1つだけ選んで試すのがおすすめです。全社導入ではなく1人か2人で始めれば費用もかかりません。494本全体の有料プランの月額中央値は2,506円なので、個人のスマホ代より安い金額で始められます。

次のステップは職種から探すことです。業界ではなく職種で絞ると選択肢が広がります。マーケなら193本、事務・総務なら137本のツールが候補になります。自分の日々の仕事に近い職種カテゴリを選んでデータベースで検索してみてください。思ったより多くの候補が出てくるはずです。デザインなら94本で広報・PRなら71本です。業界で探すより職種で探すほうが選択肢が多いこともあります。

3つ目は業界特化ツールの導入事例を確かめることです。物流ならLoogiaのように配送ルートに特化したサービスがあります。公式サイトの導入事例を読んで、自社と同じ規模の会社が使っているかを確かめてから問い合わせるのが確実です。導入事例がないツールは、無料トライアルがあるかどうかを先に確認してください。

AIに「おすすめを教えて」と聞くだけでは、ツールが少ない業界では汎用ツールかカテゴリ名しか返ってきません。データベースを使って業界と職種の両方から絞り込むのが近道です。

今回の調査で分かったのは、AIツールの選択肢は業界によって大きく偏っているということです。292本と7本では探し方からして変える必要があります。業界特化のツールがない場合でも汎用ツールと職種別の絞り込みで道は開けます。自分の業界が何本なのかを知ったうえで、汎用ツールから始めるか業界特化ツールを探すかを決めてください。

藤井俊太(AI導入コンサルタント)の見方

ハンズオンの結果は2026年9月11日時点のもので、AIの回答は同じ質問でも毎回変わる可能性がある。ツール数は1本が複数業界に当てはまる場合に重複カウントしているため、14業界の合計は494本を超える。

よくある質問
自分の業界ではAIツールが何本あるか
AInformationの調査では14業界に分けて数えています。多い順に小売・EC 292本、IT・Web 275本、広告・メディア 199本、人材・HR 183本、教育 129本、金融・保険 92本、士業・専門 71本、医療・介護 63本、製造 60本、公共・自治体 56本、建設・不動産 50本、飲食・宿泊 42本、美容・サロン 39本、物流・運輸 7本です。
ツールが少ない業界ではどうやって選べばいいか
まず業界を問わない汎用ツール(ChatGPTなど月額1,400円〜)を試し、次に自分の職種で絞って探します。業界特化ツールは導入事例を確認してから問い合わせるのが手堅い方法です。AIに聞くだけだと汎用ツールやカテゴリ名しか返ってこないため、データベースで探すのがおすすめです。
日本語で使えるAIツールはどのくらいあるか
494本のうち日本語がしっかり通るツールは208本で、全体の42.1%です。さらに日本円で払えるものに絞ると69本、無料プランがあるものに絞ると43本になります。
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