17世紀の暗号を44分・17万6000トークンで解いた
Claude Fable 5.1が370年以上未解読だった暗号「Cyphral Distich」を44分で解読しました。消費したトークンは17万6000です。AI研究者のゲビー・ジャフ氏がブログで解読の経緯を公開しています。
Cyphral Distichは17世紀の作家アーカートの著作「Logopandecteision」の末尾に記された暗号です。それぞれ32個の数字からなる2行で構成されています。
1899年に学術誌で未解決問題として取り上げられて以来、多くの暗号研究者が挑んできました。いずれも最終的な解読には至りませんでした。

- 17世紀アーカートが著作「Logopandecteision」に暗号を残す
- 1899年学術誌「Notes and Queries」で未解決問題として提示
「32の願い」の中に解読ルールが隠されていた
Claude Fable 5.1は2つの手がかりに注目しました。1つは暗号文が「32の願い(Proquiritations)」の直後に置かれている点です。もう1つは付随する詩が「正直な読者はそこに作者の思いを見つけるだろう」と謳っている点です。
ここから導き出された解読ルールはこうです。暗号文のi番目の数字nに対してi番目の「願い」へ移動します。その文のn番目の単語の頭文字を取ります。
復元されたメッセージは「O GOD UPHOLD KING CHARLS THE SECOND…」と始まる英文でした。チャールズ二世の統治を祈る王政復古の内容です。アーカートが熱心な王党派だった歴史記録とも一致しています。
解読された2つの暗号
| 暗号名 | 数字の数 | 解読結果 |
|---|---|---|
| Cyphral Distich | 64(32×2行) | チャールズ二世を守る祈り |
| Cyphral Octastich | 285 | チャールズ二世を称える詩 |
勝因は暗号技術でなく「粘り強さ」だった
ジャフ氏はこの解読を分析しました。特別な暗号解析能力ではなく「粘り強さ」が鍵だったと指摘しています。単純なルールを見つけるまで諦めずに探し続けたことが解読につながりました。
同じ著作に残されていた別の暗号「Cyphral Octastich」も解読に成功しています。こちらは285個の数字からなるより長い暗号文です。復元されたメッセージもチャールズ二世を称える内容でした。
一方でCIA本部にある暗号彫刻Kryptosの未解読部分K4のような難問は現時点のAIには難しいだろうとも述べています。
AIの「諦めない力」は暗号の外でも使える
今回の解読で目立ったのは外部の暗号データベースに頼らず書籍の中だけで手がかりを探し続けた点です。これは限られたデータからパターンを見つける作業と同じ構造です。
たとえば社内に散在するデータの名寄せがこれにあたります。表記ゆれを1件ずつ照合する作業は人が途中で飽きてもAIは最後まで続けます。
ただし粘り強さが有効だったのはルール自体が単純だったからです。AIが万能になったわけではなく得意な問題の型がまた1つわかった形です。
- Cyphral Distich
- 17世紀の作家サー・トマス・アーカートが著作「Logopandecteision」に残した暗号。それぞれ32個の数字からなる2行で構成される。1899年に学術誌で未解決問題として提示されて以来370年以上解読されていなかった
今回の解読で注目したいのはAIが暗号の専門知識を使ったのではなく同じ作業を諦めずに繰り返した点だ。これは企業のデータ突合や分類作業でも同じ構造になる。たとえば住所の表記ゆれを1件ずつ照合する作業は人が途中で飽きてもAIは最後まで続ける。膨大な契約書から特定の条件を抜き出す作業も同様だ。「粘り強さ」は地味だが実務で最も再現しやすいAIの強みになる。暗号解読という派手な成果の裏にある本質はそこにある。
- 解読結果は歴史的に正しいのか
- 復元されたメッセージはチャールズ二世の即位を祈る内容でした。著者のアーカートが熱心な王党派だったことは歴史記録で裏づけられています。同じ著作の別の暗号「Cyphral Octastich」からも同様にチャールズ二世を称えるメッセージが復元されており複数の結果が互いに補強し合っています。
- もっと難しい暗号もAIで解けるのか
- 今回解けたのは解読ルール自体が単純で書籍の中に手がかりが全部揃っていたケースです。ジャフ氏はCIA本部にある暗号彫刻Kryptosの未解読部分K4のような本格的な難問は現時点のAIには難しいだろうと述べています。AIが得意なのは「手がかりはあるが組み合わせが膨大で人が諦めてしまう」タイプの問題です。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月17日
