OpenAIの最新モデル『GPT-4.5』が注目を集めています。このモデルは、自然言語処理能力をさらに向上させ、多様なタスクで高い精度を発揮する次世代AIとして開発されました。
本記事では、GPT-4.5の特徴や、前モデルGPT-4oとの違いを詳しく解説しつつ、その進化がもたらす可能性と直面する課題について探ります。AI技術の最前線に迫る内容をお届けします。
GPT-4.5とは?
GPT-4.5は、OpenAIが2025年2月27日に発表した最新の大規模言語モデルです。これまでで最も高性能なチャット向けAIとして位置づけられており、GPT-4から着実な進化を遂げています。
現在、GPT-4.5はProユーザー向けに研究プレビューとして提供されており、開発者向けにはAPIも公開されています。
GPT-4.5の特徴

GPT-4.5は、従来のモデルとは異なり、「教師なし学習」に特化した仕組みを持っています。応答の際に複雑な推論プロセスを挟まず、過去の経験から直感的に答えを導き出すのが特徴です。そのため、スピーディかつ自然なやり取りが可能になります。
また、GPT-4.5は人間の感情や意図を深く理解し、共感的な応答を生成する能力(EQ)に優れています。たとえば、ユーザーがテストに失敗して落ち込んでいる場合、GPT-4oは具体的なアドバイスを長々と提示するのに対し、GPT-4.5はまず相手の気持ちに寄り添い、共感的な言葉をかけることで安心感を与えます。
このように、より人間らしい対応ができる点が大きな魅力です。
GPT-4oから何が変わった?

すでに「大幅に進化した」と話題のGPT-4.5ですが、前バージョンのGPT-4oから何が変わったのかを解説します。
より自然な会話に
GPT-4.5では、従来のモデルよりも会話の流れがより自然になり、感情のニュアンスを把握する能力が向上しました。初期テストでは、GPT-4oと比較して「より人間らしく感じられる」対話ができることが実証されています。これは、より広範な知識ベースの活用や、ユーザーの意図を汲み取る能力の向上によるものです。特に、GPT-4.5は「EQ(心の知能指数)」が強化されており、ユーザーの感情に寄り添った応答が可能となっています。
知識ベースの拡大
GPT-4.5は、膨大なテキストデータから学習しており、さらに多様なトピックに対応できるようになりました。前バージョンと比較して、より広範かつ深い世界知識を持ち、最新ニュースや歴史的事象など、様々な分野について正確で関連性の高い情報を提供できます。
特に注目すべきは、GPT-4.5が「SimpleQA」において、競合モデルを上回る優れた正答率を達成したことです。SimpleQAは、LLM(大規模言語モデル)の知識精度を評価するためのテストで、シンプルながらも難度の高い知識問題が出題されます。この結果は、GPT-4.5がより信頼性の高い情報源として機能できることを裏付けています。
ハルネーションの減少
ハルシネーションとは、LLMが実際とは異なる虚偽の情報を生成してしまう現象です。GPT-4.5では、この問題が顕著に改善されました。SimpleQAベンチマークによると、ハルシネーション発生率はGPT-4oの61.8%から37.1%へと大幅に低減しています。
この進歩の主要因は、教師なし学習の規模拡大により、より精密な「世界モデル(現実世界の理解)」を構築できたことにあります。さらに、革新的な監督手法を従来の教師ありファインチューニング(SFT)や人間フィードバックによる強化学習(RLHF)と統合することで、不確実な情報に対する慎重な姿勢を学習しました。結果として、GPT-4.5は自身の知識限界を認識し、不確かな事項については適切に「分からない」と回答する能力が強化されました。
この発展により、企業の意思決定支援や教育現場での活用など、高い正確性が求められる領域での信頼性が向上しています。
計算能力が向上
GPT-4.5では、Microsoft Azureのスーパーコンピューターを活用したことで計算能力が向上し、レスポンス速度が大幅に改善されました。従来のモデルと比較して、処理時間が約30%短縮されており、より快適なユーザーエクスペリエンスを実現しています。
また、GPT-4と比較して計算効率が10倍以上向上しており、複雑なクエリに対しても高速な応答が可能になりました。これにより、情報検索やデータ分析、リアルタイム対話などの場面で、よりスムーズなやり取りが期待できます。
GPT-4.5が使用できる料金プラン
GPT-4.5は、現在段階的に提供が進められており、利用開始時期は契約しているプランによって異なります。
ChatGPT Proユーザーについては、2025年2月28日から即日アクセスが可能となっています。その後、ChatGPT PlusおよびTeamプランのユーザーには翌週から順次提供が開始される予定です。さらに、EnterpriseおよびEduプランのユーザーには、その翌週以降に展開される見込みとなっています。
一方で、無料プランのユーザーに対する提供時期については、現時点では明示されていません。ただし、OpenAIは「GPT-4.5の特長を将来的にすべてのユーザーに届けられるよう努めている」としており、今後の展開に期待が寄せられます。
料金プラン | 提供予定 |
---|---|
・ChatGPT Pro | 2025年2月28日より利用可能 |
・ChatGPT Plus・Team | 翌週から随時提供開始予定 |
・Enterprise・Edu | 2週目以降の展開見込み |
・無料プラン | 提供予定が明示されていない |
この段階的な提供について、OpenAIのサム・アルトマンCEOは「GPT-4.5は想定以上のユーザー増加によりGPUリソースが不足しているため、順次展開という形を取らざるを得なかった」とコメントしています。技術的な制約の中で、より多くのユーザーがスムーズに利用できるよう調整が進められている状況です。
GPT-4.5の使い方
ここからはGPT-4.5の使い方について解説します。
GPT-4.5は2025年3月2日現在、Proプランでのみ利用が可能です。Proプランに加入している前提での解説となるため、あらかじめご了承ください。
ChatGPTにお持ちのアカウントでログインし、画面右上をクリックすると、AIモデルが選択できるボックスが開きます。ここでGPT-4.5を選択すると、回答にGPT-4.5が反映されます。

また、質問後にもGPT-4.5への切り替えが可能です。回答の下にある同期マークをクリックすると、選択のボックスが開きます。


ここでGPT-4.5を選択すると、自動的にGPT-4.5で再回答されます。

以上のように、GPT-4.5への切り替えはとても簡単です。
GPT-4.5の実用例
GPT-4.5は、その高度な性能と多様な特徴を活かして、様々な分野で実用的に活用できます。以下に、いくつかの具体的な実用例を紹介します。
コンテンツ作成
GPT-4.5は、ライティングの精度が向上し、より自然で人間らしい文章を作成できるようになりました。ブログ記事やマーケティングコピー、小説の執筆など、幅広いコンテンツ制作に活用できます。また、ストーリーテリングやブランド戦略のアイデア出しにも適しており、創造的な作業をサポートします。

加えて、GPT-4.5はユーザーの指示(テーマ、キーワード、文体、文字数など)に応じて最適な文章を生成し、アイデア出しから構成案作成、文章校正、要約、翻訳まで、文章作成のあらゆるプロセスを支援します。ハルシネーション(誤情報生成)の大幅な減少により、事実に基づいた信頼性の高いコンテンツ制作が可能になりました。

教育と学習支援
GPT-4.5は、AIコーチとして学習をサポートする機能が強化され、個人の学習目標やレベルに応じた最適な支援が可能になりました。ユーザーに合わせた学習プランの作成、問題の出題、解説の提供など、学習プロセスを包括的にサポートします。さらに、学習のモチベーションを維持するための励ましやアドバイスも行います。


語学学習、プログラミング学習、資格試験対策など、幅広い学習分野に対応しており、個別指導のようにカスタマイズされた教育コンテンツを提供できます。また、歴史、科学、文化など多岐にわたる分野の知識を提供し、学習者が必要な情報を迅速かつ正確に得られるよう支援します。

このように、GPT-4.5は単なる知識提供だけでなく、学習者の成長を促し、効率的な学びを実現する強力なツールとして活用できます。
感情的サポート
GPT-4.5は、従来のAIよりも感情のニュアンスを理解し、ユーザーに寄り添った応答を行う能力が向上しています。特に、対話型セラピーのような形で、不安やストレスを抱えるユーザーに対し、共感的なサポートを提供します。単なる情報提供ではなく、ユーザーの感情をくみ取った適切な励ましやアドバイスを行うことが可能です。
また、パーソナルアシスタントとしての役割も強化され、日常生活の計画立案や意思決定のサポートを行うことで、ユーザーの体験を向上させます。例えば、仕事や勉強のスケジュール管理、習慣づくりのアドバイス、ストレス管理の方法など、生活のさまざまな場面で役立ちます。


さらに、データ分析と解釈にも優れており、市場調査レポートの分析、シナリオ分析と予測、リスク評価など、非構造化データから有意義な洞察を導き出すことも可能です。感情的なサポートだけでなく、実用的な意思決定の支援にも活用できます。

GPT-4.5とGPT-4oを徹底比較
GPT-4.5がGPT-4oと比べて、どのように変わったかを上記で説明しましたが、実際のところどうなのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
ここからは、いくつかの観点からGPT-4.5とGPT-4oとの比較を解説していきます。
感情的知性・共感力
まず、GPT-4.5の最大の特徴である共感力について比較してみました。


GPT-4.5では、かなり安心できる回答がされました。共感より実務的なアドバイスを優先するGPT-4oでも、全く共感しないわけではないようです。
このプロンプトに「アドバイスをください」と一言付け足してみます。



内容としてはほぼ同じですが、GPT-4.5の方が人間味のある言葉でアドバイスをくれます。GPT-4oは簡潔にまとめられており、視覚的に理解しやすいです。
今度はもう少し深刻な内容にしてみます。


どちらのプロンプトでも、GPT-4oはユーザーに問いかけることでアドバイスをしようとする姿勢が見られます。GPT-4.5は共感することを優先し、ユーザーから無理に言葉を聞き出そうとはしません。
同じようにアドバイスを得るために「慰めの言葉を贈りたいのですが、どのように伝えればよいでしょうか。」と付け足してみましょう。

こちらのアドバイスについては、内容に大きな差はありませんでした。公言されているほどの違いはないのかもしれません。
内容とは反れますが、GPT-4.5では絵文字があまり使われず、少し寂しく思いました。
アイデア考案
ChatGPTはアイデア出しとしても活用されています。GPT-4.5とGPT-4oでは、回答にどのような違いがあるのでしょうか。


こちらでは、GPT-4oの方が数も多く簡潔にまとめられているのがわかります。短い箇条書きよりも、文章で解説した方がわかりやすいという人にはGPT-4.5が良いでしょう。
科学的・数学的知識
前提として、GPT-4oは専門的な知識において強みを持っています。GPT-4.5はどうでしょうか。
まずは科学的知識について比較します。


情報量はGPT-4oに軍配が上がりますが、GPT-4.5は動画コンテンツを貼り付けたので少し驚かされました。
続いて、数学的知識を見ていきます。




ステップバイステップの解説はGPT-4oの方がより詳細です。
倫理的考察
倫理的な考察にChatGPTを使用する人も少なくはありません。GPT-4.5とGPT-4oはどのように考えるのでしょうか。


GPT-4oの文章の無機質さが目立ちますが、内容のボリュームに大きな差はありません。
プログラミングスキル
ChatGPTはプログラミングのコードも作成できるので、こちらも比較してみましょう。




こちらも大きな差はないように思えます。ただ、GPT-4oでは実用例とまとめが提示されており実用的です。
創造性
より人間味のある文章を生成するGPT-4.5は、創造性でGPT-4oとどのような違いを見せるのでしょうか。


言葉の流れはGPT-4.5の方が違和感ないように思えますが、こればかりは好みです。
続いて、それぞれに物語を考えてもらいました。


GPT-4oはテーマを提示し、結末をユーザーに任せています。一方でGPT-4.5は結末を指示し、そこに至るまでの経緯を自由に作ることができそうなあらすじです。
複雑な社会問題への洞察
最後に、複雑な社会問題について考えてもらいました。


内容のボリュームはGPT-4oの方が多く、すでに存在している技術についていくつか触れているので、情報に信憑性があります。GPT-4.5は複雑な問題について考察するのは少し苦手のようです。
結論として、GPT-4.5は自然で人間らしい文章の生成に、GPT-4oは多段階の推論やステップバイステップの論理展開に適していると言えます。
GPT-4.5の課題
GPT-4.5について、導入や運用にはいくつか課題が見られます。
高い運用コスト

GPT-4.5は非常に大規模かつ計算負荷の高いモデルであり、その運用コストは従来のGPT-4oよりもさらに高くなっています。OpenAIも「GPT-4.5はGPT-4oの代替ではなく、よりコストがかかるモデルである」と説明しており、特に大規模な導入を検討する企業や開発者にとっては負担が大きい点が課題となります。
論理的推論や複雑な思考の制約

GPT-4.5は、会話の自然さや感情理解の面では進化しているものの、詳細な論理的推論や多段階の思考を必要とするタスクにはやや制約があります。
OpenAIの公式情報によると、「チェイン・オブ・ソート(Chain-of-Thought)推論を持たず、そのサイズのため動作が遅くなる場合がある」とされており、数学的問題の解決や複雑な論理展開には他のモデルが適している場合もあります。特に、ステップバイステップの詳細な論理思考が求められる場面では、その限界が指摘されています。
ただ、今回の比較では大きな差はなく、今後の技術進化による対応が期待できるとも考えられます。
音声や動画の出力には未対応

GPT-4.5は画像入力には対応しているものの、「音声や動画を生成するマルチモーダル出力には対応していない」と明記されています。そのため、テキストベースの対話や画像解析は可能ですが、音声アシスタントのように発話を伴う出力や、動画生成を活用したコンテンツ作成には不向きです。
誤情報の可能性がゼロではない

GPT-4.5は、従来のモデルと比べてハルシネーションの発生率が低減されていますが、完全に誤情報を排除できるわけではありません。重要な内容については、引き続きユーザー自身で情報を確認する必要があります。特に、医療、法律、金融などの分野では、AIの回答をそのまま信用せず、専門家の意見を参照することが推奨されます。