日々の問い合わせや顧客対応に多くの時間を取られている。
カスタマーサポートの品質を落とさずに、業務負担を減らしたい。
チャットボットが気になるが、導入前に業務の効率化や顧客満足度の向上などの効果を確認したい。
「チャットボットは本当に必要なのか?」と考える企業も増えてきています。
この記事ではチャットボットのメリット・デメリットについて解説します。
チャットボットを導入するメリット
チャットボットには、日々の問い合わせをサポートする、さまざまなメリットがあります。
企業がチャットボットを導入するメリットは下記の5つです。
【メリット①】問い合わせ窓口の業務負担を減らせる
チャットボットを導入すると、問い合わせ窓口の業務負担を減らせます。
今までカスタマーサポート担当者が繰り返し対応していた「ログインパスワードを忘れた」「支払い方法を変更したい」など、よくある質問に担当者の代わりに答えてくれます。
よくある質問の一覧をWebサイトに掲載していても、全ての人がそのページを確認して自己解決するとは限りません。聞きたい内容がよくある質問になかったり、追加の質問をしたかったりすると電話やメールでの問い合わせが発生し、問い合わせ窓口の業務負担となります。
その点、チャットボットは追加の質問にも対応しているため、自己解決してくれる利用者も増えるでしょう。
【メリット②】いつでもすぐに対応できる
利用者がお問い合わせするのは、商品やサービスについて知りたいことがあるためです。
たいていは、困ってホームページにたどり着いています。
すぐに回答がほしいのに、電話やメールだと待ち時間が発生し、利用者に不満を与えてしまいます。
チャットボットがあると、24時間365日、好きなタイミングで問い合わせができ、回答もすぐに返ってくるので、顧客満足度が高いです。
事実、私も電話で問い合わせしたときに、延々とコール音だけが聞こえてきて、アフターサービスが悪いと感じ、解約した経験があります。
企業の問い合わせ窓口の電話が繋がりづらいと、回線が混み合うほど多くの問題が生じているという印象を与える恐れがあります。
これでは商品やサービスの信頼も損ないかねません。
【メリット③】人件費を抑えられる
チャットボットを導入すると、人件費を抑えたり、他の業務に人員を配置したりできます。
なぜなら、人が対応するのと違い、同時に複数人の問い合わせに対応できるからです。
電話での問い合わせでは、1人の利用者に対してカスタマーサポート担当者が1人必要です。
メールでの問い合わせでも、1人のカスタマーサポート担当者が対応できる数には限界があります。
よくある質問や定型的な対応はチャットボットに任せられるので、導入前より問い合わせ対応にあたる従業員の数を減らせます。
人手不足に悩む企業の強い味方になるでしょう。
【メリット④】対応のばらつきを減らせる
チャットボットは、人が対応するよりも回答内容のばらつきを減らせます。
同じ質問には、同じ回答をするようにプログラムが設定されています。
マニュアルの見落としやニュアンスの違い、その日の担当者によって回答が異なるといったことも起きません。
やりとりを行った履歴も逐一記録されるので、「言った」「言ってない」などのトラブルも回避できます。
【メリット⑤】問い合わせへのハードルが下がる
チャットボットを導入すると、利用者にとって問い合わせのハードルが下がります。
利用者は問い合わせ方法が電話やメールのみだと、問い合わせに躊躇することがあります。
なぜなら、電話では次の感情によって問い合わせするのはやめておこうと考える方もいるからです。
- 「どんな人が対応するかわからない。高圧的な口調だったらどうしよう」
- 「一方的に話されそうで嫌だな」
- 「緊張して聞きたいことが聞けないかもしれない」
- 「自分にとって不利とわかっていても、はいと返事してしまいそう」
メールでも、困っている内容を文章で伝えるのが苦手だったり、メールするほどでもないし、面倒だからと諦めたりしてしまいがちです。
チャットボットには、感情の起伏がなく、利用者は聞きたい内容を選択肢通りに進めるだけなので、問い合わせのハードルが下がります。
企業側としても、問い合わせの件数が増えることでメリットがあります。
企業にとって、利用者の生の声は貴重なものですが、聞く機会は多くはありません。
レビューやアンケートのお願いをしてもなかなか書いてもらえないからです。
しかし、チャットボットへ頻繁にくる問い合わせを蓄積していくことで、利用者が何に困っているのかが明確になります。
企業側では気づけなかった商品やサービスの改善点を知る機会が増えるでしょう。
求職者向けにチャットボットを採用している企業もあります。
求職者が採用担当者に直接聞きづらい、給料や待遇などの踏み込んだ質問をチャットボットを通して質問できるようにしています。
求職者は面接の際「入社する前に聞いておきたいけど、就職に不利になるのでは」と質問を躊躇してしまいがちです。事前に情報の共有ができるのはお互いにとって大きなメリットになります。
チャットボットを導入するデメリット
チャットボットにはさまざまなメリットがありますが、慎重な対策が必要なデメリットもあります。
チャットボットの効果を最大化するためには、適切な対処が求められます。
企業がチャットボットを導入するデメリットは下記の4つです。
【デメリット①】導入までの準備が大変
チャットボットを導入するまでに、準備が大変で時間がかかります。
導入までには次の準備が必要です。
- ターゲット層を明確にする
- チャットボットの配置場所を決める
- 対応する質問の種類を決める
- 想定される質問と回答を準備する
- チャットボットで対応できなかった時の対策を講じる
- 利用者が満足する回答になっているか繰り返しテストをする
導入までの期間は、企業により大きく変動します。
事前に質問の洗い出しが終わっている場合は数週間で終わる場合もありますが、基本的には数ヶ月から半年は必要になるとみていいでしょう。
【デメリット②】複雑な問い合わせに対応できない
蓄積されたデータと事前に設定したプログラムを元に回答するため、想定していない質問には対応できません。
利用者が質問を自由に入力できるタイプは、質問の内容次第でチャットボットの回答も変化します。
その結果、利用者の質問の意図とチャットボットの認識にズレが生じて利用者が望む回答を得られないことがあります。
利用者があらかじめ決まった質問に答えるタイプでは、途中で間違った選択をすることもあります。その結果、最初の選択肢からやり直すことになり、余計な手間をかけさせてしまうことになります。
また、そもそも質問内容に合う選択肢が存在しないこともありえます。
チャットボットが問い合わせに対応できないことを想定し、カスタマーサポート担当者への導線をスムーズにしておくことで顧客満足度の低下を防ぎましょう。
【デメリット③】定期的に更新が必要
チャットボットを導入してからも、想定される質問と回答を定期的に更新する必要があります。
更新が必要となるのは次のケースです。
- 商品やサービスが変更になった
- 当初想定していた質問にはなかったが、同じ質問が頻繁にくるようになった
- バグが発生している
- 新しい商品が発売された
情報が古いままだと、利用率の低下やクレームにつながります。常に最新の情報にしておきましょう。
そのためには、チャットボットのメンテナンスができる人材の確保や外注の発注が必要になります。
【デメリット④】期待する効果が得られない可能性がある
チャットボットを導入しても使われなければ意味がありません。
電話やメールでの問い合わせの件数が減らず、チャットボットの利用回数が増えないこともあります。
チャットボットの利用率が上がらない原因は主に次の2つです。
- 回答精度が低く、利用者が満足する回答を得られない
- チャットボットが認知されていない
『【デメリット②】複雑な問い合わせに対応できない』の章でも解説しましたが、利用者がチャットボットの精度の低さを感じてしまうと、電話やメールでの問い合わせを優先するでしょう。
また、チャットボットの存在が認知されていなければ利用率は上がりません。
次のような場合、認知されない恐れがあります。
- 利用者がWebサイトを訪れたときに、チャットボットがすぐ目につく場所に設置されていない
- 電話やメールでの問い合わせがあったときに、チャットボットの存在の周知・案内を徹底していない
- 取扱説明書の問い合わせ窓口の連絡先にチャットボットを紹介していない
せっかく高精度のチャットボットを導入しても、使われなければ、毎月のコストだけがかかり続け、費用対効果は得られません。
チャットボットの精度を維持しながら、認知してもらえるよう工夫を凝らしましょう。
まとめ
チャットボットのメリットとデメリットについて解説しました。
最後にもう一度おさらいです。
メリット | デメリット |
---|---|
問い合わせ窓口の業務負担を減らせる いつでもすぐに対応できる 人件費を抑えられる 対応のばらつきを減らせる 問い合わせへのハードルが下がる | 導入までの準備が大変 複雑な問い合わせに対応できない 定期的に更新する必要がある 期待する効果が得られない可能性がある |
チャットボットの導入は、企業側にとっても利用者側にとってもさまざまなメリットがあります。
一方で、デメリットも存在します。
チャットボットをサポートをする人材を確保できればデメリットも補えるでしょう。
メリットとデメリットを理解した上でチャットボットを導入するかご検討ください。