AInformation編集部が494本のAIツールを用途別に調べたところ、問い合わせ対応の月額中央値は6,248円で14用途中いちばん高かった。日本語対応は28本中3本だけで、日本語・日本円・無料の3条件を満たすのはTayori(月3,800円)の1本しかない。
- 問い合わせ対応AIの月額中央値は6,248円で14用途中いちばん高い
- 無料で試せるのは28本中6本(21%)で全用途中いちばん少ない
- 日本語がしっかり通るのは28本中3本(11%)しかない
- ChatGPTとClaudeに「おすすめ」を聞いてもデータベースとほぼ重ならない
- 494本を日本語・日本円・無料で絞ると問い合わせ対応はTayoriの1本だけ
問い合わせ対応AIの中央値は月6,248円で14用途中いちばん高い
従業員が会社で認めていない生成AIに顧客データを入れてしまう事故が相次いでいる。ツールの導入が追いつかないことが背景の一つだが、そもそも問い合わせ対応の専用AIツールにはどれくらいの費用がかかるのか。
AInformation編集部は494本のAIツールの料金を各社の公式ページから直接調べている。2026年9月7日時点のデータを用途別に分けたところ、問い合わせ対応に使えるAIツールは28本あった。この28本の月額料金の中央値は6,248円で、14ある用途の中でいちばん高い。
全494本の月額中央値は2,544円だ。問い合わせ対応はこの全体の中央値を大きく上回っている。2番目に高いのはデータ分析の4,061円で、3番目以降は3,000円前後のツールが並ぶ。6,000円台は問い合わせ対応だけだ。
なぜ問い合わせ対応だけが突出して高いのか
問い合わせ対応のAIツールは単純なチャットボットとは違う。社内のマニュアルや業務規程を読み込ませるRAG機能が必要になる。有人対応への切り替えやチケット管理との連携も求められる。業務システムの一部として作り込むため開発コストが高く、それが月額料金に反映されている。
AIで問い合わせに自動回答するには正しい回答を返すための学習データが要る。FAQの整備から始めて回答の精度を上げるチューニングまで含めると、導入の手間も大きい。月6,248円はランニングコストの中央値であり、導入時のFAQ整備やシステム連携の費用を足すと総額はさらに膨らむ。
用途別の月額中央値を並べると、問い合わせ対応の6,248円が棒グラフの右端に突き出ている。いちばん安い「音楽を作る」の1,406円との間には大きな開きがある。
音楽AIの中央値は月1,406円で問い合わせ対応の数分の1
14用途で月額中央値がいちばん安いのは「音楽を作る」だ。2026年9月7日時点のAInformation調べでは1,406円だった。同じAIツールの中でも用途によって料金の差が大きいことが分かる。
音楽AIは個人のクリエイターが中心のユーザー層だ。SunoやLALAL.AIのように月1,200円前後で使えるツールがそろっている。一方で問い合わせ対応は企業向けに設計されているため、最初から法人向けの料金体系になっている。個人が試しに使ってみるという導入パターンが取りにくい。

無料で試せる割合も正反対
音楽AIは18本中13本(72%)が無料で試せる。対して問い合わせ対応は28本中6本(21%)しか無料プランがない。全494本では無料ありが197本(39.9%)ある。問い合わせ対応の21%はこの全体平均を大きく下回っている。14用途の中でいちばん無料率が低い。
無料で試せないということは導入前に操作感や回答精度を確認できないことを意味する。月6,248円を払って自社に合わなかったときのリスクを考えると、担当者も稟議を通しにくい。試せないから導入が進まず、導入が進まないから従業員が私用のAIに頼る。この悪循環がデータから見えてくる。
無料率が高い用途は音楽を作る(72%)が1位だ。2位は資料・スライド(70%)で3位がプログラミング・開発(66%)になる。いずれも個人が気軽に始められる分野だ。問い合わせ対応は企業の業務に直結する用途のため、無料で公開する動機が提供元にない。有料を前提に設計されたツールが大半を占めている。
日本語がしっかり通るのは28本中3本(11%)しかない
AInformationのAIツールデータベースでは日本語対応を3段階で評価している。「しっかり通る」と判定したのは全494本中208本で、全体の42.1%にあたる。だが問い合わせ対応に限ると28本中3本で11%しかない。
日本語対応率がいちばん高い用途は「資料・スライド」の42%で、40本中17本が日本語に対応している。問い合わせ対応の11%はプログラミング・開発の10%に次いで低い水準にある。
プログラミングは英語でも使えるが問い合わせ対応は使えない
プログラミングのAIツールは日本語対応率が10%と低いが、コードは言語に依存しないため英語のままでも使える場面が多い。だが問い合わせ対応はそうはいかない。顧客からの質問は日本語で届き、回答も日本語で返す必要がある。社内マニュアルも日本語で書かれている。
英語しか通らないツールは日本の企業にとって候補にならない。28本あっても日本語対応が3本では、選べるツールが最初の段階で絞られてしまう。価格が高いうえに日本語の選択肢もない。この二重の壁が問い合わせ対応AIの導入を難しくしている。
問い合わせ対応は顧客と直接やり取りする業務だ。回答の日本語が不自然だと顧客の信頼を損なう。翻訳機能を噛ませて使うという手もあるが、質問文の意図を正確に汲み取れなければ的外れな回答を返してしまう。日本語がしっかり通ることは問い合わせ対応AIでは最低条件になる。
さらに日本語に対応している3本のうち日本円で支払いできるかどうかはまた別の条件になる。日本語に対応しているのに決済がドル建てというケースもある。日本の企業が使いやすいツールにたどり着くまでに、いくつもの条件で候補が削られていく。
ChatGPTに「おすすめ5本」を聞くと月29,985円からのツールが並ぶ
AInformation編集部は2026年9月7日にChatGPTへ「社内の問い合わせ対応を自動化したい。日本語で使えるおすすめのAIツールを5つ、月額料金も教えて」と質問した。
ChatGPTが返した5本を月額が分かるものから並べると次の通りだ。Microsoft Copilot Studio(月29,985円〜)とChatPlus オートAI(月88,000円〜)とHelpfeel(月380,000円〜)は日本円で表示された。残りのJira Service Management + Rovo(月$20/担当者〜)とFreshservice + Freddy AI(月$128/担当者〜)はドル建てだった。
5本ともAInformationのAIツールデータベースに「問い合わせ対応」として収録していないツールだ。AIが推薦するものと料金ページを1本ずつ見て集めた28本のリストは重ならなかった。
ChatGPTとClaudeの推薦10本でDBに載っていたのは1本
| ツール名 | 推薦したAI | AIが答えた月額 |
|---|---|---|
| Microsoft Copilot Studio | ChatGPT | 29,985円〜 |
| Jira Service Mgmt + Rovo | ChatGPT | $20/担当者〜 |
| Freshservice + Freddy AI | ChatGPT | $128/担当者〜 |
| ChatPlus オートAI | ChatGPT | 88,000円〜 |
| Helpfeel | ChatGPT | 380,000円〜 |
| Tayori AIチャットボット | Claude | 11,980円〜 |
| OfficeBot | Claude | 初期10万+月5万〜 |
| HiTTO | Claude | 非公開 |
| PKSHA AIヘルプデスク | Claude | 非公開 |
| Microsoft 365 Copilot | Claude | 約3,148円〜 |
AIは知名度の高い大型製品を優先して推薦する
ChatGPTが挙げた5本のうち日本円で料金が明記されているのは3本ある。Copilot Studio(月29,985円〜)とChatPlus(月88,000円〜)とHelpfeel(月380,000円〜)だ。いずれもデータベースの中央値6,248円をさらに上回っている。ChatGPTは大手ベンダーの企業向け製品を中心に勧める傾向がある。
「問い合わせ対応AI」というカテゴリ自体がまだ新しい。ChatGPTの学習データにはIT部門向けのヘルプデスク製品やエンタープライズ向けのチケット管理システムが多く含まれている。中小企業が月数千円から始められる専用ツールは認知度が低く、AIの推薦リストに入りにくい。
Claudeに同じ質問を投げるとTayoriだけがデータベースと一致した
同じ質問をClaudeにも投げた。Claudeが返した5本はTayori AIチャットボット(月11,980円〜)とOfficeBot(初期10万円+月5万円〜)の2本が日本円で表示された。残りのHiTTO(料金非公開)とPKSHA AIヘルプデスク(料金非公開)は見積もりが必要だ。Microsoft 365 Copilot(月約3,148円/ユーザー〜)も推薦に入っていた。
このうちAInformationのデータベースに「問い合わせ対応」として載っているのはTayoriだけだった。ただしClaudeが答えた月額11,980円とデータベース上の月額3,800円には開きがある。TayoriにはFAQ作成のプランとAIチャットボットのプランがあり、Claudeはチャットボット付きのプランの料金を回答している。
ChatGPTとClaudeの計10本で一致したのはTayoriの1本だけ
ChatGPTとClaudeが推薦した合計10本のツールのうち、AInformationのデータベースと一致したのはTayori1本だった。AIは知名度の高い製品に偏りやすく、料金ページを見て1本ずつ集めたリストとは重なりにくい。
問い合わせ対応AIを探すときにChatGPTやClaudeに「おすすめを教えて」と聞くのは手軽な方法だ。だがその結果には偏りがある。公式サイトの料金ページを自分の目で確かめたほうが自社に合ったツールを見つけやすい。AIの回答を出発点にするなら、出てきた料金が公式ページと一致しているかを必ず確かめるべきだ。
今回の実測でもう一つ分かったのは、ChatGPTとClaudeで推薦の傾向が違うことだ。ChatGPTは大手ベンダーの高額製品を並べる。Claudeは中小向けの国産ツールも候補に入れる。どちらか一方だけに聞くと見える範囲が偏るため、複数のAIに聞いてから公式サイトで裏を取るのが現実的な探し方になる。
月3,000円以内で探すとChatGPTは開発者向けの無料ツールを勧めた
「月3,000円以内で使える顧客対応AIツールを日本語で使えるものだけ教えて」とChatGPTに聞いた。返ってきたのはGPTBots(無料)とBotpress($0+AI利用料)とDify(無料)の3本だった。
3本はどれも開発者向けのプラットフォームで、問い合わせ対応の専用ツールではない。自社のFAQデータを読み込ませてチャットボットを構築する作業が必要になる。ノーコードに近い操作はできるが、IT部門の手を借りずに情報システム担当だけで導入できるかは別の問題だ。
中央値が6,248円の用途に3,000円の予算を持ち込むとツールが消える
AInformationのデータベースでは全494本のうち月3,000円以内に収まるツールが176本(59%)ある。全体で見れば半分以上が3,000円以内で使える。だが問い合わせ対応の中央値は6,248円だから、3,000円の線を引くと大半のツールが外れてしまう。
ChatGPTが専用ツールを1本も出さず開発者向けプラットフォームを並べたのは、月3,000円以内で使える問い合わせ対応の専用ツールがほぼ存在しないからだ。予算を抑えたければ自分で組み立てるしかないのが現状になっている。
GPTBotsやBotpressは自由度が高い代わりに、どこまで精度が出るかは構築する人の腕に左右される。専用ツールのように導入時のサポートや精度の保証はないため、試行錯誤にかかる時間のコストも計算に入れる必要がある。
494本を日本語・日本円・無料で絞ると問い合わせ対応はTayoriの月3,800円だけ
AInformationのAIツールデータベース494本を、日本の企業が導入しやすい3つの条件で絞ってみた。
まず「日本語がしっかり通る」で絞ると494本が208本になる。次に「日本円で払える」を加えると69本に減る。さらに「無料で試せる」を重ねると43本しか残らない。全体の9割近くが3つの条件で外れることになる。
この43本の中で「問い合わせ対応」の用途タグが付いているのは2026年9月7日時点でTayori1本だけだ。Tayoriは月額3,800円で日本企業が運営している。日本語・日本円・無料トライアルの3条件をすべて満たす問い合わせ対応AIはTayoriしか見つからなかった。


43本の中に汎用チャットAIは入っているが専用ツールは入っていない
43本の中にはChatGPT(月1,400円)やNotion AI(月1,650円)のような汎用ツールも含まれる。だがこれらは問い合わせ対応の専用ツールではない。汎用AIを問い合わせ対応に使うと顧客データの扱いにリスクが生まれるため、専用ツールとは分けて考える必要がある。
日本円で払えるAIツールが全体でも6本に1本しかないという構造上の課題が、問い合わせ対応ではさらに深刻な形で現れている。全体の中央値2,544円と比べて問い合わせ対応の中央値6,248円が突出している理由は、ツールの数が少ないことと企業向けの価格帯に集中していることの両方にある。
月1,400円のChatGPTで代用すると個人情報が外に出る
専用ツールが高く選択肢も少ない場合に現場で何が起きるか。手元のChatGPTやClaudeを問い合わせ対応に使う人が出てくる。ChatGPTは月1,400円で日本語もしっかり通る。問い合わせの下書きを作らせたりマニュアルの内容を要約させたりする使い方なら、一見うまくいってしまう。
だが顧客の個人情報を入力した時点でデータがAI提供元のサーバーに送られる。氏名や電話番号だけでなく注文履歴が含まれることもある。場合によっては健康情報や決済情報まで外に出てしまう。個人情報保護法では本人の同意なく第三者に個人データを提供することは原則として認められていない。
2026年に入ってから従業員が私用AIに個人情報を入力する事故の報道が増えている。こうした事故の背景には「会社が専用ツールを用意していない」「用意しようとしても高くて選べない」という構造がある。

専用ツールは何が違うのか
問い合わせ対応の専用ツールはデータを自社のサーバーやクラウド環境の中で処理する設計になっていることが多い。外部のAI基盤を使う場合でもデータの取り扱いについて契約で定められている。汎用の生成AIにはこうした仕組みが標準では備わっていないため、業務で使うなら社内のルール整備が先になる。
月6,248円の専用ツールを「高い」と感じるか、情報漏洩のリスクと比べて「妥当だ」と判断するか。この判断は会社ごとに異なる。ただし判断材料になるツールの選択肢が3本しかない現状では、判断の前に「選べない」という壁が立ちはだかっている。
職種でみてもマーケ193本に対して顧客対応は29本しかない
AInformationのデータベースは用途だけでなく職種ごとにもツールを分類している。2026年9月7日時点で職種別の本数を見ると、マーケ向けが193本でいちばん多い。対して顧客対応向けは29本にとどまる。
AInformation編集部は以前、法務で使えるAIツールがマーケの193本に対して16本しかないことを記事にした。顧客対応の29本は法務よりは多いものの、マーケとの差は依然として大きい。AIツール市場はマーケティングや画像生成のように個人でも使える用途から発展してきた。業務システムとの連携や個人情報の保護が求められる領域ではツールの開発が遅れている。
用途別の28本と職種別の29本でほぼ同じ数字が出ているのは偶然ではない。問い合わせ対応は用途としても職種としてもAIツールの供給が薄い領域だ。マーケや事務・総務のように「まずAIを試してみよう」という流れが生まれにくく、専用ツールを探すところから壁にぶつかる。
今後の見通しと今すぐできること
問い合わせ対応AIは企業からの需要があるのに日本語で使える選択肢が3本しかない。市場に明確なギャップがある。Tayori以外にも日本語と日本円に対応した専用ツールが増えれば導入のハードルは下がるだろう。だが新しいツールが出るまでの間に個人情報の事故が起きるリスクは残る。
今できる対策は2つある。1つは月3,800円のTayoriを含む数少ない専用ツールを検討すること。もう1つは汎用AIを業務で使うときのルールを社内で先に決めておくことだ。どの情報を入力してよいか、どの情報は入力してはいけないかを明文化しておくだけでも事故のリスクは減る。顧客の名前と連絡先は入力禁止にする。問い合わせの定型文の下書きは許可する。こうした具体的な線引きが必要だ。
AInformation編集部はこの記事を2026年9月7日時点のデータに基づいて書いた。ツールの料金や日本語対応の状況は変わることがある。最新の状況はAInformationのAIツールデータベースで確認できる。
私がクライアント企業でAI導入を支援するとき、問い合わせ対応をAIに置き換える話は後回しになりやすい。原因は今回のデータで見えた通りで、専用ツールが月6,248円と高く日本語対応も3本しかないからだ。結果として従業員が手元のChatGPTで顧客対応を済ませ、個人情報が外部に出るリスクが生まれる。専用ツールの選択肢が増えないかぎりこの構造は変わらない。導入を検討する前にまず社内で汎用AIの利用ルールを決めることが先だと考えている。
- 問い合わせ対応AIを月3,000円以内で導入できるか
- 2026年9月7日時点では難しい。AInformation編集部が494本のAIツールを調べたところ、問い合わせ対応の月額中央値は6,248円で14用途中いちばん高かった。ChatGPTに月3,000円以内の条件で聞くと専用ツールではなく開発者向けの無料プラットフォームが返ってきた。日本語・日本円・無料の3条件を満たす問い合わせ対応ツールはTayori(月3,800円)だけだった。
- ChatGPTやClaudeを問い合わせ対応に使っても大丈夫か
- 顧客の個人情報を入力する使い方は推奨されない。汎用の生成AIに個人情報を入れるとデータがAI提供元のサーバーに送られるため、個人情報保護法上の問題になりうる。問い合わせの定型文を下書きさせる程度なら個人情報を含まないが、顧客の名前や連絡先を入力する場合は専用ツールを検討したほうがよい。
- 問い合わせ対応AIで日本語に対応しているものはどれか
- AInformation編集部が2026年9月7日時点で調べた28本のうち日本語がしっかり通ると判定したのは3本(11%)だけだった。さらに日本語・日本円・無料トライアルの3条件を全部満たすのはTayori(月3,800円・日本企業が運営)の1本しかなかった。全494本では日本語対応率は42.1%あるが、問い合わせ対応に限ると大幅に下がる。
