Copilot含む100本を50人に配布 8割が効果を実感した
福島県は限られた職員数で行政課題に対応するため、AIに情報収集や文書の下書きを任せる方針を取りました。2025年度にNTT東日本の生成AIサービスとMicrosoft 365 Copilotをそれぞれ50アカウント用意し、約50人に配っています。1人に2種類を渡して使い比べてもらう形です。
対象は各部局で行政改革を担当する職員やデジタル変革課の職員で、比較的ITに強い層を選んでいます。ハンズオン研修も実施し、簡易的なRAGの構築にも携わらせました。
実証後のアンケートでは約8割が業務効率化の効果を実感しています。主な用途は文書表現の修正が43%で最多。情報検索のサポートが38%、Excelデータの整理が35%と続きました。1回あたりの平均削減時間は要約で6.7分、文書作成で5.0分です。検索は4.0分でした。

- 2025年度Copilotなど100アカウントで約50人が実証に参加
- 2026年度minnect AIアシスト導入で約6000人へ全庁展開
使う人と使わない人の差 部署でなく個人の関心が分けた
8割が効果を感じたにもかかわらず、日常的に使うヘビーユーザーとほとんど触らない職員に分かれました。
福島県が利用状況を調べたところ、特定の部署だから使うという相関は見つかっていません。同じ部署にいても関心の高い人は頻繁に使い、そうでない人はアカウントを持っていても触りません。利用を分けたのは業務や所属ではなく個人の関心と意欲でした。
Microsoft 365 Copilotは各製品と連携できる点が強みですが、実証時点では思い通りの資料を作らせるための習熟が追いつかなかった面もあります。職員側のスキルとシステム側の仕様の両方に課題がありました。
この二極化はIT寄りの職員を集めた実証でも起きています。前向きな職員を選んだにもかかわらず分かれたという事実は、どの企業にも当てはまる問題です。
「入力していいか分からない」不安 ガイドラインで具体化した
セキュリティに配慮した有償サービスを用意しても「どこまでの情報を入力してよいか分からない」という声が上がりました。安全な仕組みであっても中身を理解していなければ使うのをためらうのは当然です。
福島県はこの点を説明不足だったと振り返り、独自のガイドラインを策定しました。国の情報セキュリティ基準をそのまま出すのではなく、現場の職員が入力の可否を自分で判断できる水準まで具体化しています。
「対策済みだから使ってよい」と通知するだけでは不安は消えません。実際の業務データを前にした職員が自分で可否を判断できるところまでルールを具体化する必要があります。

6000人に広げても全員は監視しない 利用傾向で判断する
2026年度に福島県は「minnect AIアシスト」を導入し、約6000人が使える環境へ広げました。使わない人がいる状態で全庁展開に踏み切った形です。
約6000人の入力を1件ずつ確認するのは現実的ではありません。過度な監視は職員を萎縮させるおそれもあります。そこで入力内容を逐一チェックせず、利用傾向の把握にログを使う方針です。
集合研修に加えて全職員向けの動画研修も用意しました。使いこなしている職員のノウハウやプロンプトを共有する仕組みも作り、一度で終わりにしない運用にしています。最新モデルの利用枠を使い切っても過去モデルは制限なく使えるため、コストを抑えながら全員に環境を開放できています。
- RAG
- 社内の文書やマニュアルをAIに読ませて回答の精度を上げる仕組み。検索拡張生成の略で質問のたびに関連する文書を探してから答えを作る
企業のAI導入を手伝っていて「配っても使われない」という相談はいちばん多い。福島県の事例で参考になるのは、使わない原因を部署や業務に求めなかった点だ。現場では「情シスがCopilotを入れたけど誰も使わない」という話の裏に、入力していい範囲が分からないという不安が隠れている。ガイドラインを「対策済みです」で終わらせず職員が自分で判断できる水準まで具体化した福島県のやり方は、企業の推進担当者がまず試す価値がある。
この記事の出典
補助資料
- [1]ITmedia AI+この記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月7日
