書きたい小説の冒頭を入力すると、続きを自動で生成してくれることで話題の「AIのべりすと」。誰でも簡単に創作活動を楽しめる画期的なツールですが、使い方を誤ると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
今回は、AIのべりすとの利用で懸念されるリスクや禁止事項、安全に楽しむコツをわかりやすくお伝えします。本記事を読んで、AIのべりすとの適切な利用を心掛けましょう。
AIのべりすととは?
AIのべりすととは、株式会社Bit192(以下Bit192)が運営する文章生成のAIツールで、主に小説を書くために使用されます。小説の書き出しや導入部分を入力すると、AIがその文体や内容を分析し、自然な形で物語を展開してくれます。

文章のスタイルやストーリー、キャラクターブックなどを詳細に設定することによって、思い描いている通りの文章を生成することが可能です。
AIのべりすとについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶AIのべりすととは?使い方やコツを実際に操作しながら解説!
AIのべりすとで懸念される危険性
AIのべりすとを含む生成AIは非常に便利であり、今では数多くの人が日常でAIを使用しています。その一方で、AIに関わる社会問題やトラブルも起こっています。
AIのべりすとでは現在に至るまで、そのような問題は報告されていませんが、他の生成AIで問題視されていることが、AIのべりすとにも当てはまる可能性があります。実際の訴訟事例やSNSで上がっている声も併せて確認していきましょう。
著作権問題

AIのべりすとを使って生成した文章が、既存の作品と酷似していると判断された場合、著作権侵害に触れる可能性があります。プロンプトを入力する段階で、参考にする著者や著作物を指定する際は注意が必要です。
万が一、AIが生成した文章が著作物と酷似していた場合、その責任はユーザーが抱えることになります。そのため、ユーザーはAIが生成した文章を使用する際、オリジナリティや著作権の観点から慎重に判断する必要があります。
AIのべりすとの著作権
AIのべりすとが作成した文章の著作権は、一般的にユーザーに帰属するとされています。しかし、AIによるコンテンツの権利関係は国や地域ごとに異なる解釈が存在し、統一された基準は確立されていません。そのため、商用利用や公開を考えている場合は、最新の法律や規制を確認する必要があります。
今後の法改正や判例によって、著作権の取り扱いが変化する可能性があるため、常に情報をアップデートすることが重要です。
学習データについて
AIのべりすとの学習データの詳細は公表されていませんが、多くの小説や文章データを元に学習していると推測されます。つまり、既存の作品と類似した表現が生成される可能性があり、意図せず他者のアイデアや表現を流用してしまう危険性があるということです。

既存の作品を指定してその冒頭を書き出すと、「黒板に吊した~問をかけました」まで原文と全く同じ文章が生成されました。
生成された文章をそのまま使用するのは危険なため、確認を怠らないようにしましょう。
2023年、あるAIの学習データに著作権のある小説が無断で含まれていたことが発覚し、開発企業が訴訟を起こされました。この件は、学習データの透明性と著作権の関係について議論を呼びました。
プライバシーリスク

AIのべりすとを使用する際、ユーザーが入力した情報が学習データとして使用される可能性があります。これにより、機密情報が意図せず学習され、将来的に他のユーザーへの出力として現れるリスクが懸念されます。
プライバシーポリシーでは「ユーザーのプライバシー保護に努めるが、クラウドサーバー内でのデータ処理において100%の機密性は保証されない」と明記されており、情報の取り扱いには慎重さが求められます。特に、個人情報や企業の機密事項を入力する際には、情報漏洩のリスクを十分に考慮し、適切な対応を取ることが重要です。
2023年、ある企業の従業員がAIチャットボットに機密情報を入力した結果、他のユーザーへの応答として一部の機密データが流出し、大きな問題となりました。これを受け、企業のAI利用ルールが厳格化される動きが広まりました。
倫理的問題

AIのべりすとは、大量のデータをもとに文章を生成するため、バイアスや偏見を含んだ内容が出力される可能性があります。特定の思想や偏見が無意識に反映されることで、不適切な情報が広まるリスクがあり、虚偽情報の拡散にもつながる恐れがあります。
また、AIツールを悪用して、マルウェアの作成や不正アクセスが行われるケースが報告されています。国内では逮捕者も出ており、AIの倫理的な使用基準の策定と監視体制の強化が急がれます。
こうした問題を防ぐため、倫理的利用のガイドラインを設け、AIツールの位置づけを再確認することが求められます。AIの出力をそのまま信じるのではなく、内容の正確性を確認する自己管理の意識が必要です。
2022年、AIを使って加工された豪雨災害の偽画像が出回り、大きな混乱を招きました。この影響で、AI生成コンテンツの信頼性や情報の正確性に対する不安が広がりました。
2024年、生成AIを利用してランサムウェア(身代金要求型マルウェア)が作成したとして、日本国内初の逮捕者が出ました。この事件により、AIを悪用したサイバー犯罪への懸念が高まり、対策強化が求められました。
創造性への影響
AIのべりすとの普及により、創作活動における独自性や創造力の低下が懸念されています。AIに依存しすぎることで、人間が自ら考え、表現する力が弱まる可能性があります。
また、AIそのものを否定的に考える人も少なからずいます。AIのべりすとを活用して作られた本が商業的に成功することはあり得ますが、制作過程で著者の創造的関与がほとんどなかったとなると、批判を呼ぶ可能性も否めません。
下記はAIのべりすとではありませんが、AIを使って生成したコンテンツへの批判の声です。
AIはまだ進化途中とも言えるため、上記以外にも「AIで作ったものはクオリティが低い」「全部同じに見える」「AIを使っただなんて楽している」といった声が多く聞かれます。
しかし、上手く利用すれば賞を取れるほどの高クオリティの小説が書けるようです。この場合は、文体はAIだとしてもプロンプトに一工夫を入れていると考えられるため、完全にAIに任せたとは言えないでしょう。今のところ、この事例での批判は見られていません。
とはいえ、創作においてはまだまだAIに関するトラブルが多いのが現状です。人間らしい創作の重要性を再認識し、AIをあくまで補助的なツールとして活用することが望まれます。
創造性に関わるSNSでの声
昨今のSNSでは、AIの使用をよく思っていない人たちの「AIを使っただろう!」という決めつけによるトラブルが多く発生しています。そのトラブルの多くが「AIを使っていないのにも関わらずAIを使ったと批判を受ける」というものです。
これらは、既存のイラストがAIの学習に使われることへの懸念や、AIを使用したイラストをあたかも自分が描いたかのように発言するといった問題が積み重なり、「AIを使用」という言葉に過剰になった結果です。
このような事例は特にイラストや動画コンテンツに多いのですが、小説で起こらないとは限りません。
ただし、小説においては、最終的に人の手による推敲をおこなえば、大きな問題にはならないと考えられます。
適切なバランスを保ち、AIと共存しながら創造的な活動を続けることが、これからの時代における課題となるでしょう。
AIのべりすとで禁止されていること
AIのべりすとは、ユーザーが快適にサービスを使用するために利用規約を設けています。その中には禁止事項が多く記載されており、規約違反が認められた場合、Bit192は事前通知なく利用停止などの措置を講じることがあります。
脆弱性の悪用や不正ソフトウェアの使用

サービスの脆弱性を悪用したり、不正なソフトウェアを使用してサービスを改変・妨害することは禁止されています。
これらの行為は、システムの安定性やセキュリティを損ない、他のユーザーの正常な利用を妨げる可能性があります。また、悪意のある攻撃やデータの漏洩につながり、ユーザーの個人情報が危険にさらされることもあります。
さらに、不正ソフトウェアの使用は、サーバーに過度な負荷を与え、サービス全体のパフォーマンス低下を引き起こす原因となるため、厳重に禁止されています。
不適切なコンテンツの作成

AIのべりすとでは、以下のようなコンテンツの生成を全面的に禁止しています。
- 法令、公序良俗、他者の権利の侵害
- 政治的利用投資性商品や金融商品への勧誘
- 差別や攻撃
- ヌード、わいせつな内容
このようなコンテンツは、ユーザーに不快感や精神的苦痛を与えるだけでなく、社会的な混乱を招く恐れがあります。また、法律に抵触する可能性があり、法的責任を問われるケースもあります。さらに、サービスの健全な利用環境を損なうことにつながるため、厳しく制限されています。
法的に許可されていない技術的解析

法律で明示的に許可されている場合を除き、サービスに対する逆コンパイル、リバースエンジニアリング、逆アセンブル、ハッキング行為は禁止されています。これらの行為は、知的財産権の侵害につながるだけでなく、サービスの機密情報が漏洩し、不正利用される危険性をはらんでいます。
また、サービスの安全性が損なわれることで、悪意のある第三者による攻撃が容易になる可能性もあります。こうした行為は法的措置の対象となる場合があるため、厳に慎む必要があります。
サービスへの過度な負荷や妨害

サービスを提供・サポートするためのコンピュータやサーバーに過度な負荷をかけたり、妨害する行為は禁止されています。また、他のユーザーやBit192の関係者に対する嫌がらせ、危害、罵倒、またはそれらを扇動する行為も同様に禁止されています。
これらの行為は、サービスの正常な運営を妨げるだけでなく、全体のパフォーマンスを低下させ、他のユーザーの体験を著しく損なう恐れがあります。さらに、意図的な妨害行為は法律違反となる場合があり、民事・刑事責任を問われることもあります。
不正アクセス

Bit192が提供するインターフェース以外の方法で、サービスやアカウント、関連するコンピュータ、サーバー、ネットワークに不正にアクセスしようとすることは禁止されています。
不正アクセスは、データの盗難や改ざんにつながるだけでなく、システム全体のセキュリティを脅かす重大な犯罪行為とみなされます。さらに、不正アクセスを試みることで、アカウントが永久に停止されるだけでなく、法的措置の対象となる可能性があります。
その他サービスの趣旨に反する行為

上記以外にも、サービスの精神や趣旨に反するとBit192が判断する行為、またはBit192のサポートやサービスを不適切に利用することは禁止されています。これには、サービスの目的とは無関係な悪質な利用や、他のユーザーの体験を損なう行為が含まれます。
サービスの提供者や他の利用者に不利益を与えるような行為は、信頼性の低下やコミュニティ全体の健全性の損失につながるため、厳格に対処されます。適切な利用を心がけ、快適な環境を維持することが求められます。
AIのべりすとを安全に使うために
このように、AIのべりすとでも問題視されていることがいくつかあります。しかし、誤った使い方をしなければトラブルを防ぐことはできます。
倫理的なルールを守る

AIのべりすとを使用する際は、著作権やプライバシーに十分配慮し、適切な利用を心がけましょう。特に、他者の作品や個人情報を無断で使用することは避けるべきです。
また、AIのべりすとの利用規約の冒頭には「Bit192は、当サービスを用いて生成されたコンテンツ、およびそのコンテンツによって利用者が受けうる影響について一切の責任を持たない」と記されており、自己責任の範囲で使用するように呼びかけています。
利用規約を遵守することで、安心してAIを活用でき、創作活動の幅を広げることができます。
情報の精査を徹底する

AIが生成した文章は便利ですが、そのまま鵜呑みにせず、必ず事実確認を行いましょう。
誤った情報を拡散すると、誤解を招いたり信頼を損なう可能性があります。特に、重要な情報を発信する場合は複数の信頼できる情報源を照らし合わせることが大切です。慎重に確認することで、正確で信頼性の高いコンテンツを作成できます。
補助ツールとして活用する
AIのべりすとは物語の続きをすぐに書き出してくれますが、生成された文章をそのまま使用せず、編集や改変を加え、オリジナリティを高めましょう。
以下のようにAIのべりすとにアイデアを考えてもらい、それをもとに文章を書くのも一つの手段です。

創作においては、作者にしか出せない「味」が存在します。AIを使いながらその魅力を最大限に引き出すためにも、あくまで創作の補助ツールとして活用し、アイデアを磨く手段とするのが理想的です。