商務長官の「信頼する」発言 翌日に国防次官がXで否定した
ラトニック商務長官がG20イノベーション閣僚会議でAnthropicについて「とても信頼しています」と述べた。アモデイCEOを信頼しているかと問われ「はい」と答えた。「我々の要望通りに動き、正しい側に戻ってきました」とも述べ、関係修復を印象づけた。
G20に同席したAxiosの共同創業者トム・ブラウン氏が政権とAnthropicの関係修復に動いていたとされる。ラトニック氏の発言はその仲介の延長線上にあった。
ところがその翌日に国防次官のエミル・マイケル氏がXに投稿した。「Anthropicは引き続き戦争省および防衛産業基盤のサプライチェーンリスクに位置づけられている。本件に関心を持っていただきありがとうございます」という内容で、商務長官の融和ムードを正面から打ち消すものだった。
安全制限の撤廃を要求 Anthropicは関係断絶を選んだ
対立の発端はヘグセス国防長官がAnthropicに出した要求だ。AIに対する安全制限を撤廃するか、国家安全保障にAIを利用する契約を破棄して関係を切るかの二択を迫った。Anthropicは安全制限を外すことを拒否し、政府との関係断絶を選んだ。
国防省はこれを受けてAnthropicを「国家安全保障に対するサプライチェーンリスク」に指定した。Anthropicは指定の取り消しを求めて国防省を提訴している。連邦地方裁判所のリタ・リン判事はこの指定を憲法に反する行為と認定する判決を下した。判決はAnthropicの主張を認めた形だったが、国防省の対応は変わっていない。

裁判で「違法」でもリスク指定2件は残る 政権内の溝は深い
判決が出たにもかかわらず国防省は指定を撤回していない。Anthropicには訴訟の対象になった件とは別にもう1件のサプライチェーンリスク指定がある。合わせて2件が残ったままで、いずれも解除の見通しは立っていない。
国防次官はわざわざラトニック氏の発言の翌日にXで投稿してきた。商務長官の発言に重ねるタイミングで出した動きは、国防省としてAnthropicに折れるつもりがないことを示している。政権の中で商務長官と国防省が逆のメッセージを出しており、統一された方針は見えていない。
Anthropicは国防省との対立だけでなくソニーやワーナーとの著作権訴訟も抱えている。Claudeの開発元に複数の方向から圧力がかかっている状態だ。

Claudeを業務に使う日本の企業 いま確かめておきたいこと
この対立は米国政府との契約をめぐる話であり、日本の企業がClaudeを使う機能や料金にいまのところ直接の変化はない。Claudeの性能やAPIの仕様が変わるわけではない。ただしAnthropicの経営環境が変われば、APIの安定供給やモデルの更新にも影響が出うる。
Anthropicが安全制限を貫いたことは利用者にとって安心材料になる。政府に迫られてもルールを曲げない態度はデータの扱いにも一貫性が期待できるからだ。
一方でClaudeをシステムに組み込んでいるなら、リスクの分散も考えておきたい。ChatGPTやGeminiのAPIで同じ処理が動くか試しておくだけでも備えになる。提供元のリスクがゼロでない以上、代わりがあるかを確かめておく意味は大きい。
- サプライチェーンリスク
- 政府の調達先が国家安全保障上の脅威になりうると判断した際に付ける指定。指定された企業は政府との契約から外される
Anthropicが政府の圧力に折れなかったのは、AIサービスの信頼性を考えるうえで大きい。安全のルールを曲げる会社にデータを預けるわけにはいかないからだ。ただし注目すべきは商務長官と国防省で方針が正反対になっている点だ。米政権の内部分裂がこのまま続けばAnthropicだけでなく他のAI企業にも波及する可能性がある。AI導入の現場では「どの会社のAIが安全か」だけでなく「その会社は政府との関係をどう整理しているか」まで見る必要が出てきた。
- Anthropicのリスク指定はなぜ解除されないのか
- 裁判所は1件のリスク指定を違法と認定したが、国防省は撤回していない。さらにAnthropicには訴訟の対象になった件とは別にもう1件の指定がある。合わせて2件が残った状態だ。商務長官が「信頼している」と表明した翌日に国防次官がXで否定しており、国防省として折れる意思は見えていない。政権内部で商務長官と国防省が逆の立場をとっており、統一方針が出るまでは動かない可能性が高い。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月5日
