メディア側のCEOが年200億ドルの著作権料を「誤差」と言い切った
米CNETを保有するZiff DavisのVivek Shah CEOがFortuneへの寄稿で反論した。米音楽業界がロイヤルティーとライセンス料として毎年200億ドル未満を支払っている一方で、OpenAIは2030年までにインフラへ7500億ドルを投じる見通しを投資家に示している。Shah氏はこの数字を比べたうえで報道機関へのライセンス料として年200億ドル程度を払ったとしてもAI企業には「誤差の範囲」だと主張した。一方でパブリッシャー側にとっては経営を支える大きな収入源になるとしている。
Ziff DavisやThe New York Timesなど複数の報道機関は共同で提出した書面の中で、ChatGPTの学習に自社コンテンツが無断で使われた結果ウェブサイトへのアクセスが減少したと訴えた。AI生成による低品質なコンテンツが市場にあふれ「ピンクスライム」と呼ばれる粗悪な記事が本物の報道を押しのけているとも主張している。

OpenAIは「暗黙の許諾」で対抗 フェアユースが最大の争点だ
OpenAIはインターネットから収集したデータの利用はフェアユースに当たると反論した。根拠として「利用の変容性が高い」「対象は事実に基づく著作物だ」「事前学習は著作物の市場価値に法的に認められる損害を与えていない」の3点を挙げている。
加えて報道機関がrobots.txtなどの仕組みで同社のスクレイパーを当時遮断していなかった点を指摘し、コンテンツへのアクセスは暗黙に許諾されていたと主張した。「検索エンジンは何十年もウェブのクロールに依存してきた。原告の報道機関もスクレイパーを使っている」として従来の慣行との一貫性を強調している。
著作権訴訟をめぐる両者の主張
| 争点 | メディア側 | OpenAI側 |
|---|---|---|
| コンテンツの利用 | 著作権侵害に当たる | フェアユースに当たる |
| アクセスの許諾 | 無断で利用された | robots.txtで遮断されていなかった |
| ライセンス料 | AI企業には誤差の範囲 | ライセンスは障壁になる |
| AIの影響 | アクセス減少と低品質記事の氾濫 | ジャーナリズムに良い影響 |
AIボット遮断が広がればオープンウェブが縮まる
現在は多くのパブリッシャーがOpenAIなどAI企業のボットによるアクセスを遮断している。Shah氏はこうした動きが加速すればペイウォールやアクセス制限がさらに広がりオープンウェブそのものが損なわれると警告した。報道機関側も2022年11月のChatGPT公開以降、Googleの「AIによる概要」のようなAI製品の登場でアクセスが奪われたと主張している。「ライセンスは難しく費用もかかるという誤った前提を放置しているのが原因だ」とShah氏は述べた。
数年にわたった証拠開示の手続きが終盤を迎え、OpenAIとMicrosoftに対する複数の訴訟は1人の判事のもとでまとめて審理されている。裁判所は重要な争点について判断を下したうえで各訴訟を元の地区裁判所に戻す見通しだ。フェアユースの線引きがどこに落ち着くかが今後の判例に直結する。
自社の利用規約とAIクローラーの設定を確かめる
この裁判がどちらに転んでもサイト運営者がいま確認すべきことは2つある。robots.txtでAI企業のクローラーを許可したままにしていないかという点と、利用規約にAI学習への使用に関する条項を明記しているかという点だ。OpenAIが「遮断しなかった以上は許諾だ」と主張しているため設定の放置がリスクになりえる。
Shah氏は「適切な料金体系があれば質の高い入力と質の高い出力の好循環が生まれ、AIの利用者にも社会全体にも利益をもたらす」と述べた。ライセンスの仕組みが整うかどうかはこの裁判の結論に大きく左右される。
- フェアユース
- 著作権者の許諾なしに著作物を利用しても侵害に当たらないとする米国の法理。利用の目的や市場への影響など4つの要素で判断される
- robots.txt
- ウェブサイトの管理者が検索エンジンやAIのクローラーにアクセスの可否を伝えるためのファイル。法的な強制力はないが業界標準として広く使われている
robots.txtの設定がAI学習への許諾の根拠になりうるというOpenAIの主張は見逃せない。多くのサイトが初期設定のままAIクローラーを許可している。自社サイトのrobots.txtを確認してGPTBotなどAI関連のボットを明示的にブロックするのが最初の対応になる。ライセンス料が年200億ドルでも「誤差」になるほどAI企業の投資規模は大きい。この論点はメディアに限らずコンテンツを持つすべての企業に当てはまる。
- フェアユースとは何か
- 著作物を権利者の許諾なく利用しても著作権侵害にならないとする米国著作権法上の規定だ。利用の目的や性質、著作物の性質、使用された量、市場への影響の4要素を基に裁判所が判断する。日本にはフェアユースの規定はないが「引用」や「私的利用」など個別の制限規定がある。
- robots.txtでAIクローラーをブロックすれば法的に保護されるのか
- robots.txtはあくまでクローラーへの要請であり法的な強制力はない。ただしOpenAIがrobots.txtで遮断していなかったことを暗黙の許諾と主張しているため設定しておけば少なくともこの論点では有利になる。GPTBot、Google-Extended、ClaudeBot、CCBotなど主要なAIクローラーを個別に指定するのが確実だ。
この記事の出典
補助資料
- [1]CNET Japanこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月16日
