DeepSeek(ディープシーク)が「ChatGPTを超えた」や「無料で使えるのはヤバすぎる」などとSNS上で大きな話題となっています。一部では、ChatGPTやGeminiなどの主要な生成AIに匹敵する性能を持つとされることから、AI関係者にも衝撃が走っています。
この記事では、世界が驚くDeepSeekについて、基本的なスペックをはじめ、AIモデルの種類、登録方法や使い方、さらには倫理面やセキュリティ面での不安などについて詳しく解説します。
DeepSeekとは?
DeepSeekとは、中国の浙江省杭州市に拠点を置くAIスタートアップDeepSeek(深度求索)社によって開発された生成AI(大規模言語モデル)です。僅か560万ドル(約8億9000万円)で開発された低コストなAIでありながら、世界で競争できる性能を持っています。
中国語だけでなく日本語や英語を含む100以上の言語で使用可能で、ChatGPTと同じくPCやスマホからチャットで利用できることに加えて、オープンソースのプログラムをローカル環境にダウンロードして使用することも出来るのが特徴です。
オープンソースの生成AI
技術的なことに注目が集まるDeepSeekですが、オープンソースという「ソースコードを公開する」という形で運営が行われていることも重要な特徴です。Facebookやインスタグラムを運営するMeta社もオープンソースによる生成AI開発を進めており、誰もが高性能なAIの中身を見ることができます。
オープンソースは、ユーザーにとって無料で利用できるというメリットがあることに加えて、技術者が新たな開発を進めやすいという特徴があります。つまり、今後はDeepSeekのコードを用いて、さらに高性能な生成AIモデルが次々と生み出されていく可能性があります。
開発元と開発者
DeepSeek社の代表者はリャン・ウェンフェン(梁文峰)氏で、資産運用を行うヘッジファンド「High-Flyer」の創業者としても知られています。ヘッジファンドでは、株式などの売買にコンピューターのプログラムを積極的に活用して、成功を収めています。
ヘッジファンドを離れてからは、AI研究に没頭し、現在では「中国のアルトマン」とも言われ、中国を代表するAI技術者として知られています。
DeepSeek登場の影響
DeepSeekの登場は、AI業界全体に大きなインパクトを与えています。特に、これまでAI技術のリーダーとして君臨していたアメリカ企業にとって、強力なライバルが登場しました。OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどの既存のAIモデルに対抗できるレベルの性能を持つDeepSeekは、AI業界の勢力図を塗り替える可能性があります。
Nvidia株価急落の理由
DeepSeekの衝撃を表すニュースとして、アメリカの株式市場でのNvidia株の急落がありました。これまで大きな費用をかけて開発されてきたアメリカの生成AIに対して、DeepSeekの開発費が非常に安いことが判明し、低コストの半導体で作られていることから、半導体の需要が低下するのではないかとの懸念によって、世界の投資家がNvidia株を手放す事態となりました。
AI業界の競争構図の変化
ChatGPTやGeminiなどの既存の生成AIと比較して、DeepSeekは数学やプログラミングに強いAIであることが評価されています。
具体的には計算能力を測る「MATH-500」のテストでは90.2%の精度を達成し、数学テストの「AIME 2024」で39.2%という優秀な成績を収めています。これによって、AIの活用範囲が広がることが期待されており、特に研究機関が新たな選択肢としてDeepSeekを検討する可能性があります。
DeepSeekのスペック
DeepSeekの性能や機能などのスペックについて、まずは簡単な表にまとめました。それぞれの内容について解説していきます。
項目 | 詳細 |
料金 | 無料 ※APIの利用は有料 |
対応言語 | 日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語など108以上の言語に対応 |
処理速度 | ・平均応答時間:1.2秒未満(クエリ内容による変動あり)・大規模データでもリアルタイム応答可能 |
アルゴリズム | ・次世代トランスフォーマーモデル・独自の意味検索アルゴリズムを搭載 |
対応プラットフォーム | ・Webブラウザ・デスクトップアプリ(Windows、Mac)・モバイルアプリ(iOS、Android) |
キャッシュ機能 | ・クエリ結果のキャッシュによる高速化・頻繁にアクセスするデータの自動保存と最適化 |
対応言語
DeepSeekは、日本語、英語を含む世界の108言語を使用することが可能です。また、中国製の生成AIということで、広東語と北京語の違いも設定されており、翻訳機能も備わっています。
日本語に関しては、文法の複雑さや漢字の使い分けにも十分に対応していて、自然な会話の生成や正確な翻訳が可能です。また、言語間の翻訳精度も高く、DeepSeekを活用すれば多言語での情報検索や文章生成がスムーズに行えます。
処理速度
平均応答時間1.2秒で、ChatGPT-4の約3.5倍のスピードに相当します。特に、演算などの数式処理では従来モデル比7倍高速という検証結果がStanford AI Labから報告されています。
なお、特にDeepSeekの処理速度の速さが注目されるのは、APIを利用する場合です。大規模なリクエストにも耐えうる設計がされていて、企業向けの大規模データ処理やリアルタイムAIアプリケーションにも適しています。そのため、チャットボットやデータ解析、AIアシスタントなどでの活用が期待されています。
DeepSeekの料金
高性能AIであるDeepSeekの利用にかかる費用は、無料です。このため、ChatGPT o1にも匹敵すると言われる文章作成や計算能力を、一切のコストをかけずに利用することができます。
チャットの利用 | 無料 |
APIの利用 | 有料・1万リクエストあたり$0.002・ChatGPT-4の20分の1 |
2022年11月に登場したChatGPTも、当初は無料プランのみでした。その後、半年程度で有料プラン(Plusプラン)の提供を開始していますので、今後はDeepSeekでも有料プランによる課金が行われる可能性があります。
DeepSeekの種類
DeepSeekには複数のモデルが存在しています。用途や性能に応じて選択できるため、用途に応じた最適な活用が可能です。
モデル名 | 特徴・性能 |
DeepSeek R1 | OpenAIのGPT-4 Turbo(o1-1217)と同等またはそれ以上の性能高度な自然言語処理に対応し、幅広い用途で活用可能 |
DeepSeek V3 | 数学・プログラミングの分野で特に優れた性能を発揮MATH-500で90.2%の精度を達成し、AIME 2024ではPass@1で39.2%を記録 |
それぞれのモデルは異なる強みを持っています。一般的な会話やコンテンツ生成に適したR1と、数学やコーディングなど専門性の高いタスクに強いV3の2種類が現在、主に提供されています。
DeepSeek R1
DeepSeek R1は、OpenAIのGPT-4 Turboと同等、またはそれ以上の性能を持つと言われているAIモデルです。自然言語処理の精度が非常に高く、幅広い分野での活用が可能となっています。
特に、ビジネス用途では顧客対応の自動化やドキュメント作成の効率化に貢献できるため、多くの企業が関心を寄せています。また、学術用途でも、論文の要約や専門的な文章の生成に活用できるため、研究者にも有益なツールとなっています。
DeepSeek V3
DeepSeek V3は、数学やプログラミングの分野に特化した高性能なAIモデルで、特に数理的な問題解決やコード生成に優れた性能を発揮します。
エンジニアやデータサイエンティスト、数学研究者にとって有益なツールとなることが期待されています。AIを活用したプログラミング教育や数学の学習支援にも応用できる可能性があります。これまでの生成AIとは異なる分野での特化型の使用が期待されています。
DeepSeekの始め方
DeepSeekは、PC(パソコン)とスマホなどで使用することができます。それぞれの使用方法と注意点などについて詳しく解説します。
PC(パソコン)での登録方法
まずは、PCのブラウザからDeepSeekのチャットを利用する方法を紹介します。
1.ブラウザを開いて、DeepSeek公式サイトにアクセス
2.トップページの「Start Now」をクリック
3.次に開いたページで、Log inボタンの下の「Sign up」をクリック
4.メールアドレス(1)と、パスワード(2)を入力
5.認証コード受け取りのため「Send code」ボタン(3)をクリック
6.DeepSeekから届いたメールに記載されたコードを入力
7.利用規約にチェック後、「Sign up」ボタンをクリック
スマホのアプリでの登録方法
DeepSeekには、スマホのアプリも用意されており、日本でも利用することが可能です。
1.スマホアプリ(iPhone / Android)をインストール
2.アプリを開いたら、ログインボタンの下の「サインアップ」をタップ
3.メールアドレス(1)と、パスワード(2)を入力
4.「コードを送信」ボタンをタップ
5.DeepSeekから届いたメールを確認し、認証コードを入力(3)
6.「サインアップ」ボタンをタップ
ローカル環境での利用(ollama)
AIモデルをローカル環境で利用できるollamaを使用することで、DeepSeekをご自身のパソコン上で稼働させることができます。ただし、ハイスペックのPC以外では稼働しません。
1.ollamaの公式サイトにアクセス
2.ダウンロード完了後、インストールを実行
3.インストール完了後、ollamaを起動
4.「ollama run deepseek-r1」と入力し、DeepSeekのインストールを開始
5.インストール完了後、DeepSeekを利用開始
Feloで利用
情報収集や調査、まとめなどに利用されるAIサービスの「Felo」では、有料プランのユーザーはDeepSeekが利用可能です。
1.設定画面を開く
2.回答の設定にある「AIモデル」で、「DeepSeek V3」もしくは「DeepSeek R1」を選択
DeepSeekの活用事例
ここでは、DeepSeek R1が使用できるチャットでの活用方法として具体的な事例をご紹介します。
LINEで送信する文章の相談
例えば、「長年、ずっと連絡を取っていない友人に久しぶりに連絡を取るときのLINEの文面」について相談してみると、次のような回答が来ました。
久しぶりに届いたLINEのメッセージが、まさか生成AIによって作られたとは友人も驚きでしょう。文面からはさまざまな配慮がにじみでていて、これなら久しぶりのLINEでもトラブルは無さそうです。
文面の例の下には、このような注意すべきポイントも添えられています。
【ポイント】
- 共通知識に触れて懐かしさを喚起
- 返信義務感を与えない配慮表現
- 簡単な自己近況報告で情報のバランス
- 絵文字は1-2個で柔らかさ演出
- 健康を気遣う締めくくりで温かみ
子育て中の悩みを相談する
答えに困るお子さんからの質問に対する答えも、DeepSeekに質問してみると的確な答えが返ってくるかもしれません。
例えば「赤ちゃんはどうやってできるのか」という質問に対しては、さまざまな視点からの考察が書かれたうえで、最終的に次のような提案がありました。
回答の模範例を示したうえで、書籍を使って伝える方法や、子供のリアクションを受けてからの対応、さらには避けるべき対応までを丁寧に教えてくれました。
中国語の勉強サポート
ChatGPTと同じく英語の勉強にも役立つDeepSeekですが、せっかく中国製の生成AIですので中国語の勉強にも活用したいところです。
とても丁寧に中国語の発音や、学習方法のアドバイスなどを返してくれます。まだ、DeepSeekには音声を発する機能はありませんので、今後、音が出るようになればさらに学習効率があがりそうです。
なぞなぞを考えてもらう
DeepSeekに対して、なぞなぞを考えて欲しいと依頼すると、次のような答えが出てきました。このようなトリビアは、なぞなぞとは少し違いますが、子供たちの学習に役立つ問題です。
「数字の国」という表現を使って、すこしメルヘンな表現にしているのは、なぞなぞが子供向けだという配慮によるものだと思われます。
生成AIの思考方法を学ぶ
これまでに紹介したすべての回答を出す際に、DeepSeekは今、何を思考しているのかを文字で表示します。この文字は中国語で表記されていますが、日本語で思考するように指定することも可能です。
生成AIの頭の中がどのようになっているのかを知ることで、AIの基礎的な技術への理解が深まります。
DeepSeekの安全性について
中国製の生成AIということで、DeepSeekに対しては「データを抜き取られるのではないか」や「セキュリティ面で不安に感じる」などの声が、SNS上では見られます。ここでは、DeepSeekの機能から、データの安全性について確認します。
リアルタイム学習
DeepSeekは、ユーザーが入力した内容からデータを収集して学習する「リアルタイム学習」や「クラウドソーシング学習」と呼ばれる機能を持っています。常にユーザーからの情報を学習することによって、データを最新の状態に保つ技術です。
しかし、ChatGPTなどの主な生成AIでは、プライバシー保護などの理由から、このようなユーザーの入力情報からの学習を行っていません。データを抜き取られる可能性について懸念が表明される理由のひとつは、このリアルタイム学習によるものです。
キャッシュ機能
DeepSeekは低コストのGPUで稼働することを強みとしており、APIの速度向上のための施策としてキャッシュ機能を持っています。キャッシュ機能とは、ユーザーが利用するAPIによるやりとりのなかで、頻繁に使用される内容をサーバーに保存するものです。
キャッシュ機能はあくまでAPIの処理速度を向上させるものですが、通信の内容がサーバーに保存されている点については留意が必要です。