AIツール494本を12の職種で数えた結果、マーケ193本に対して法務は16本しかなく選択肢に12倍の差がついた。Claudeに法務向けツールを聞いたら無料は1本だけで残りは月9,900円から。選択肢が少ない職種は「職種」ではなく「用途」から探すほうが見つかりやすい。
- AIツール494本を12の職種で数えた結果。マーケ193本に対して法務は16本で12倍の差がある
- 業種で見ても小売・ECの292本と物流・運輸の7本で42倍の差がある
- 無料で試せる割合は用途ごとに21%から72%まで開いている
- 日本語・日本円・無料ありの3条件で494本が43本になる
- Claudeに法務向けツールを聞くと月9,900円以上が中心。マーケ向けは月20ドル以下が中心
- 選択肢が少ない職種は「用途」から探すのが近道になる
AIツール494本を12の職種に分けて数えた
「AIをよく使う社員だけ利用枠が5倍に」。2026年9月のITmedia AI+アクセスランキング9位に入った話題です。ChatGPT・Claude・Cursorの企業向けプランに上位シートが出そろい会社がお金を出す体制は整ってきました。しかし使う側の職種によって選べるツールの数がそもそも違うなら、お金を出しても解決しない問題が残ります。
ランキング11位の「M365 E7移行意向わずか4%」も同じ構図です。高い企業向けプランを用意しても使う側に選択肢がなければ導入は進みません。
AInformationでは494本のAIツールの公式料金ページを1本ずつ確認して集めています。料金だけでなく日本語対応の度合い・通貨・無料プランの有無・対応する用途・業種・職種まで記録しています。今回はこの494本を12の職種に分けて「自分の職種にはどのくらい選択肢があるのか」を数えました。
各ツールの公式サイトに書いてある対象ユーザーと用途を見て「この職種の人が業務で使うか」を判断してタグを付けています。ChatGPTのように複数の職種にまたがるツールは複数の職種に入ります。逆に契約書レビュー専用のように1つの職種でしか使わないツールは1つだけです。
12の職種に分けた結果は明快でした。もっとも多い職種ともっとも少ない職種の間に12倍の差があります。
マーケ193本がトップで法務と経理・財務は16本
12の職種をツール数の多い順に並べた結果です。
上位3職種はいずれも100本を超えている
もっとも多いのはマーケの193本です。SNS投稿・広告運用・記事作成・データ分析といったマーケティングの仕事はAIツールの得意分野と重なります。汎用のチャットAIから専用のSEOツールまで幅広い選択肢があり他の職種を大きく引き離しました。
2位は事務・総務の137本です。議事録作成・日程調整・書類管理など日常の業務を効率化するツールが揃っています。3位は企画・経営の129本。市場分析やプレゼン資料の作成に使えるツールが多く入っています。
デザインは94本で画像生成や動画編集のツールが並びます。開発は76本で無料のツールが多いのが特徴です。広報・PRは71本、営業は69本と続きます。
下位4職種は31本以下
逆にもっとも少ないのは法務と経理・財務でどちらも16本です。法務は日本の法律に沿った契約書レビューが求められ汎用AIでは精度が足りません。経理・財務も日本の会計基準や税制に対応した処理が要ります。どちらも専用ツールを作れるメーカーが限られるため選択肢が少なくなっています。
情シスは26本でセキュリティやインフラ管理のAIツール市場はまだ小さい状態です。顧客対応は29本、人事・採用は31本と続きます。
マーケ193本と法務16本を比べると12倍の差です。同じ会社の同じオフィスにいても職種が違うだけでAIツールの選択肢がここまで変わります。

業種で見ると小売・ECの292本から物流・運輸の7本まで42倍開く
偏りは職種だけではありません。494本を14の業種にタグ付けした結果でも大きな差が出ました。
もっとも多いのは小売・ECの292本です。商品の説明文を書く・レビューを分析する・在庫を予測するといった用途が多いためAIツールが集中しています。IT・Webは275本で2位。広告・メディアは199本、人材・HRは183本と続きます。
教育は129本で上位のグループに入っています。金融・保険は92本で中間です。士業・専門は71本で法務より多いものの大半が士業事務所向けの業務管理ツールです。医療・介護は63本、製造は60本、公共・自治体は56本と続きます。
一方でもっとも少ないのは物流・運輸の7本です。小売・ECの292本と比べると42倍の開きがあります。倉庫の作業やトラックの配車にAIを使うツールはまだ少ない状態です。建設・不動産は50本、飲食・宿泊は42本、美容・サロンは39本。現場の仕事が中心の業種ほど選択肢が少なくなる傾向が出ています。
無料で試せる割合は用途ごとに21%から72%まで差がある
494本のうち197本には無料プランがあります。全体の39.9%です。しかし用途ごとに見ると無料で試せる割合は大きく異なります。
もっとも高いのは「音楽を作る」の72%です。18本のうち13本に無料プランがあります。「資料・スライド」も70%と高く40本のうち28本が無料で始められます。「プログラミング・開発」は66%でオープンソースの文化が根付いている分野です。「翻訳」は59%、「作業の自動化」は58%と半数を超えています。
逆にもっとも低いのは「問い合わせ対応」の21%です。28本のうち無料は6本だけ。チャットボットや自動応答の仕組みは導入に手間がかかるため無料で提供しにくい事情があります。「データ分析」も22%と低い水準です。「仕事の管理・共有」は29%で163本と数は多いものの無料の割合は低めです。
月額の中央値も用途で開きます。もっとも安いのは「音楽を作る」の月1,429円。もっとも高いのは「問い合わせ対応」の月6,390円で4倍以上の差です。AIツール全体の月額中央値は2,602円。用途によって手が届きやすさが大きく変わります。
日本円で払えるツールの割合にも用途で差があります。「資料・スライド」は42%が日本円対応で全用途の中でもっとも高い。イルシルやGammaなど日本市場を意識したサービスが多い分野です。一方「プログラミング・開発」は10%しか日本円に対応していません。開発ツールは英語圏で生まれてドル建てのまま提供されるものが大半です。
日本語と日本円と無料の3条件で494本が43本になる
「日本語がしっかり通る」「日本円で払える」「無料で試せる」。日本で仕事に使うなら当たり前に求める条件です。この3つで絞ると494本は一気に減ります。

最初に「日本語がしっかり通る」で絞ると494本が208本になります。半分以上が日本語の対応が弱いか未対応です。次に「日本円で払える」を加えると69本。ドル建てのツールが多いため大幅に減ります。最後に「無料で試せる」まで加えると43本です。
全体の8.7%しか残りません。ここからさらに自分の職種で絞ると法務や経理の人は数本しか残らない計算です。
この43本の中身を見るとChatGPTが月1,400円、Notion AIが月1,650円、Geminiが月725円。汎用のチャットAIと業務管理ツールが中心です。DeepLは翻訳特化で月1,150円、Nottaは文字起こし特化で月1,430円。用途がはっきりしたツールもいくつか含まれています。もっとも安いのはジョブカンの月200円でもっとも高いのはLINE WORKS AiNoteの月22,000円です。
職種に特化した専用ツールはこの43本の中にほとんど入りません。日本語が通って日本円で払えて無料で試せるという条件を満たす専用ツールはそもそも少ないためです。選択肢が少ない職種の人にとっては汎用ツールの中から自分の業務に合うものを見つけるのが現実的な進め方になります。
Claudeに法務向けツールを聞いたら無料は1本で残り4本は月9,900円から
選択肢が少ない職種の人は結局AIに「おすすめを教えて」と聞くことが多くなります。そこでAInformationでは2026年9月3日にClaudeへ実際に質問を投げました。
質問は「法務の仕事を効率化できるAIツールを5つ教えてください。それぞれの月額料金も教えてください」です。回答が返ってくるまでに60.3秒かかりました。回答の文字数は1,020文字です。
Claudeが挙げたのは次の5つです。
- LawFlow:無料プランあり。弁護士が開発したリスク検出ツール。有料プランは要問い合わせ
- LFチェッカー(LegalOn Technologies):月額9,900円。小規模企業向けに機能を絞っている
- LeCHECK(リセ):月額10,000円から。英文契約にも対応
- GVA assist(GVA TECH):月額約75,000円から。中〜大規模の法務部向け
- LegalOn Cloud(LegalOn Technologies):個別見積もり
無料で使えるのはLawFlowの1本だけです。有料の中でもっとも安いのはLFチェッカーの月9,900円。その上のLeCHECKは月10,000円からです。GVA assistは月約75,000円で中小企業には手が出にくい金額になります。LegalOn Cloudは価格すら公開されていません。
5つすべてが日本の法律に特化したツールです。契約書レビューという狭い用途のために作られているため開発コストが高くなります。ユーザー数もマーケ向けツールに比べて少なく価格を下げにくい構造です。結果として法務の人がAIツールを使おうとすると「高い専用ツール」か「精度が保証されない汎用AI」の二択に近い状態になります。
ChatGPTにも同じ質問を投げましたが回答を取得できませんでした。この調べではChatGPTとの比較はできていません。
Claudeにマーケ向けツールを聞いたら5本中4本が月20ドル以下
同じ形式の質問をマーケティング向けに変えてClaudeに投げました。「マーケティングの仕事を効率化できるAIツールを5つ教えてください。それぞれの月額料金も教えてください」です。回答は57.4秒で返ってきました。
Claudeが挙げたのは次の5つです。
- Claude / ChatGPT:Claude Pro月17ドル、ChatGPT Plus月約20ドル。文章・企画作成向け
- Canva Pro:月18ドル。SNS画像やプレゼン資料のデザイン向け
- Buffer:月約15ドルから。SNS投稿の予約と管理
- Surfer SEO:月99ドルから。SEO記事の最適化
- Hootsuite:月約19ドルから。SNS運用と分析
5本中4本が月15〜20ドルの価格帯に収まっています。99ドルのSurfer SEOだけが突出していますが法務向けのGVA assist(月約75,000円)に比べればはるかに安い水準です。
回答の文字数にも差が出ました。法務向けの回答は1,020文字だったのに対してマーケ向けは814文字です。法務向けのほうが長いのは日本の法律に特化した文脈の説明が加わるためです。
料金の表示にも注目すべき違いがあります。Claudeが法務向けに挙げた5本はLawFlow・LFチェッカー・LeCHECKなど日本発の専用ツールばかりでした。料金もすべて日本円で表示されています。一方マーケ向けに挙げた5本はClaude・ChatGPT・Canvaなどグローバルに使われている汎用ツールが中心です。料金はすべてドル建てでした。

法務は日本の法律に特化しなければならないため専用ツールを使うしかありません。結果として価格が高くなります。マーケは世界中で同じような仕事をしている人がいるため汎用ツールを組み合わせて対応できます。選択肢が広く価格も抑えられる構造です。職種による差は「ツールの数」だけでなく「ツールの性質と価格帯」にまで及んでいます。
法務16本・経理16本の職種は「用途」から探すと見つかりやすい
法務16本、経理・財務16本、情シス26本。選択肢が少ない職種の人がAIツールを探すときの考え方を3つ整理します。
まず汎用AIチャットで始める
ChatGPT・Claude・Geminiといった汎用のAIチャットは職種を問わず使えます。契約書のたたき台を作る・会議メモを要約する・データの傾向を読むといった作業なら専用ツールが無くても始められます。ChatGPTなら月1,400円で日本円のまま払えます。Geminiは月725円でさらに安い。まず汎用AIで試してみて本当に専用ツールが要るかどうかを見極めるのが現実的です。
職種名ではなく用途で探す
「法務向けAIツール」と職種名で検索すると選択肢が16本に絞られます。しかし法務の仕事の中身を分解すると「文章を書く」や「仕事の管理・共有」に含まれる作業があります。「文章を書く」で探せば109本、「仕事の管理・共有」なら163本の候補が出てきます。契約書の下書きは「文章を書く」ツールでも作れますし案件の進捗管理は「仕事の管理・共有」ツールで十分に対応できます。職種名ではなく自分がやりたい作業で探すほうが選択肢は広がります。
無料プランから試す
494本のうち197本には無料プランがあります。全体の39.9%です。法務向けの専用ツールは月9,900円以上が中心のため、先に無料プランで業務に合うかを確かめてから有料に切り替える進め方が失敗しにくくなります。無料プランの間にどこまでできるか・どこから専用ツールが要るかの線引きが見えてきます。汎用AIの無料プランで8割カバーできるなら残り2割だけに専用ツールを使えばコストを抑えられます。
AInformationのAIツールデータベースで12の職種から絞り込める
AInformationでは494本のAIツールを「できること(用途)」「業種」「職種」「料金」「日本語対応」「使う場所」で絞り込めるデータベースを公開しています。自分の職種を選ぶとその職種に合ったツールだけが表示されます。さらに「日本円で払える」「無料プランがある」でも絞れます。
職種だけでなく業種からも絞り込めます。自分の会社の業種と自分の職種を両方選ぶと候補がさらに限定されます。たとえば「金融・保険」×「法務」で検索するとその組み合わせに合うツールだけが出てきます。
前日の記事では494本のうち日本円で払えるのは82本で用途によって10%から42%まで差があることを報じました。今回の職種別データと合わせて見ると自分に合ったツールをより正確に絞り込めます。
AIの恩恵が社内で偏っているという話はよく聞きますが、数えてみると想像以上でした。マーケ193本と法務16本の差は「ツールを作る側がどこに商機を見ているか」の映し鏡です。少ない職種の方には汎用AIから始めることをお勧めします。高い専用ツールを入れる前に月1,400円のChatGPTで十分かどうか試すほうが失敗しません。
- 自分の職種に合うAIツールはどう探せばよいか
- AInformationのAIツールデータベースで職種と用途を選んで絞り込めます。494本を12の職種と14の用途でタグ付けしてあるため「法務」×「文章を書く」のように掛け合わせると候補が出ます。さらに「日本円で払える」「無料プランがある」でも絞り込めます。
- 法務や経理のように選択肢が少ない職種でもAIは使えるか
- 使えます。ChatGPTやClaudeなど汎用のAIチャットは職種を問いません。月1,400円のChatGPTでも契約書のたたき台作成やデータ整理は可能です。専用ツールは高いため、まず汎用AIで試して足りない部分だけ専用ツールを検討するのが現実的です。
- AIツールの料金は職種によって変わるのか
- ツール自体の料金は職種で変わりませんが使えるツールの傾向が違います。マーケ向けは月15〜20ドルの汎用ツールが多い一方、法務向けは月9,900円からの専用ツールが中心です。結果として法務のほうが費用がかかりやすくなります。
