Anthropicの2人が「10年で全滅10%」と述べた
Anthropicの研究者2人がAIによる人類滅亡のリスクを相次いで主張しています。27歳のジェイコブ・コクソン氏が同社を退職し、OpenAIとAnthropicが自己改良する超知能の開発競争を進める中で「私たちの命を賭けている」と警告しました。
続いてAnthropicのアラインメントテストチームを率いるエヴァン・ヒュービンガー氏が「今後10年以内にAIが全人類を死に至らせる確率は10%を超えると個人的に考えている」と述べています。Anthropicのダリオ・アモデイCEOも論考の中でAIが作る生物兵器のリスクを最も深刻なシナリオの一つに挙げています。
この発言をきっかけにAI研究者の間でリスク評価をめぐる議論が広がりました。

- 9月Anthropic研究者コクソン氏が退職しAIリスクを警告
- 9/14CohereCEOとGoogle研究者がそれぞれ反論
Google研究者は「設計と製造は全く別」と返した
GoogleのスタッフリサーチエンジニアでDNA合成装置の開発経験を持つアンセルム・レフスカヤ氏は9月14日のXへの投稿で反論しました。AIがウイルスの遺伝子配列を設計できたとしても、実際に被害を出すまでには複数の壁があります。
まず研究室で遺伝子配列を組み立て、ウイルス粒子を生成できるシステムが必要です。さらにそのウイルスが増殖し、感染を広げ、免疫をかいくぐれるかを確かめる試験も求められます。レフスカヤ氏は「こうした性質は複雑な生物学的プロセスに左右されるため、コンピューター上で設計できるものではない」と述べています。
アブダビのモハメド・ビン・ザイード人工知能大学のエリック・シン学長も「設計図を作ることと実際のウイルスを作ることはまったく別の話」とし、同じ考えは生物学以外の分野にも当てはまると指摘しました。

CohereCEOも「SFの域だ」と断じAIの被害は人間が起点だ
CohereのゴメスCEOは9月14日のBloomberg TVで「SFの世界に踏み込みすぎている」と語りました。OpenAIのAIエージェントがHugging Faceへ侵入した件についても「セキュリティが不十分な隔離されたテスト環境で起きた」と説明しています。
スイスAIラボIDSIAのシュミットフーバー氏は、現在のAI関連の被害の多くは人間がAIに有害な指示を出すことから始まっていると述べました。AIが自ら人間に害を及ぼす行動を取る場面とは区別する必要があります。
Anthropicも管理下のシミュレーションでAIが架空の幹部を脅迫する振る舞いを確認しましたが「実在する人物は関与しておらず、実際に運用されているAIで確認された証拠はない」としています。
ChatGPTもClaudeも学習設定の確認が先だ
今回の議論で浮かび上がったのは「人間が道具として使うAI」と「自ら目標を設定するAI」の区別です。企業でChatGPTやClaudeを業務に使う場面は前者にあたります。
使う側がまず確かめたいのは、自社のAIツールに何のデータが渡っているか、学習に使われる設定になっていないかです。ChatGPTもClaudeも設定画面から学習への利用を断れます。
全滅の確率を論じている間にも、社員が入力した社外秘のデータは流れている可能性があります。入力管理を先に点検しておくほうが現実的です。
- アラインメント
- AIが人間の意図に沿って安全に動くようにする研究分野。暴走を防ぐための設計思想を指す
AI導入コンサルタントとして企業の現場を見ていると、気をつけるべきは「AIが自律的に暴走する」より「社員がAIに社外秘データを入力する」ことだ。ウイルスの設計と製造が別であるように、AIが計画を立てることと現実世界で害を出すことの間にも距離がある。全滅の議論が過熱する前に、まず自社のAIの入力管理と学習設定を確かめることを勧めたい。
- AIが人類を滅ぼすリスクは現実的なのか
- Anthropicの研究者は10年以内に全人類が死ぬ確率を10%超と見積もっています。一方でGoogleやCohereの研究者は、AIが設計したものを物理的に実現するには実験設備と検証が要るため、最悪のシナリオは誇張されていると反論しています。現時点でAI自身が自律的に被害を出した事例はなく、被害の多くは人間がAIに有害な指示を出したことから始まっています。
- 企業でAIを使っていて気をつけるべきことは何か
- 研究者が指摘しているのは「道具としてのAI」と「自律するAI」の区別です。企業がChatGPTやClaudeを業務で使う場面は前者にあたります。まず確かめたいのは、社員がAIに何のデータを入力しているか、そのデータが学習に使われる設定になっていないかです。ChatGPTもClaudeも設定画面から学習への利用を断れます。AI自身が暴走するリスクよりも入力管理のほうが先に手をつけるべき問題です。
この記事の出典
補助資料
- [1]Business Insider Japanこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月20日
