「ChatGPT」という言葉を耳にしたことのある人も多いでしょう。これは人が入力した質問に対してAIが人間のような回答を対話形式で示すAIのチャットボット。いわゆる「生成AI」の1つですが、昨今、ビジネス業界ではAIによる業務改革が広がりつつあります。
そこでこの記事では、今ビジネスの世界で生成AIがどのような変革をもたらしているのかを解説していきます。企業内で従来の仕組みを見直して効率性を高める必要がある人は、ぜひ参考にして、今後の生成AIの活用に役立ててください。
ビジネス業界で生成AIを活用するメリットとは？
既存情報から学んだパターンや関係性をベースに新たなテキスト・画像・動画・音声などのコンテンツを生み出す生成AI。従来のAIは人が与えたデータを指標にしながら、予め指定された範囲内でのタスクを自動的に行うものでしたが、生成AIは「深層学習（ディープランニング）」機能により、AI自身が自ら学習を繰り返しながら、新たなアプトプットを生成します。
今この生成AIがビジネス業界で活用されるようになったのですが、一体どのようなメリットがあるのでしょうか？
コスト削減
生成AI活用が企業にもたらすメリットの1つは「コスト削減」です。連続的で反復したタスクなどはAI自身が自ら学習して、仕事を自動化することが可能。そのため人手が必要なコールセンターなどでは、生成AIがチャットポットで顧客の問い合わせに対応したり、FAQを示すことで、限られた社員のリソースの有効活用することが可能になり、ひいてはこれがコスト削減につながるのです。
生産性の向上
2つ目のメリットは、生産性の向上です。生成AIの導入によって、これまで社員が膨大な時間とコストをかけて行ってきた定型業務（ルーチンワーク）をスピーディーに処理していくことが可能になり、生産性が飛躍的に高まっていきます。
その結果、社員はより重要な業務に意識を集中することができるので、企業全体としては効率的な業務運営を図ることができるわけです。
新しいアイデアの創出
生成AIは、ビッグデータを背景にクリエイティブな情報を生成することが可能になりました。中々、人では思いつかなかったクリエイティブなアイデアを生み出すこともできるのです。
そのため従来の価値観に捉われない発想で、独創的な宣伝活動やマーケティング活動もできるようになります。
業界別にみる生成AIの活用事例
これまでの業務の効率性を飛躍的に高めて、新たな価値をもたらす可能性を秘めた生成AIですが、すでに様々な業界で導入・運用が進んでいます。そこでここからは、具体的な活用事例をいくつかご紹介していきましょう。
金融業界：三菱UFJ銀行/ChatGPTによる労働時間の削減
三菱UFJ銀行では、これまで膨大な時間を要していた社内資料や稟議書の作成にChatGPTを活用するようにしました。その結果、全行レベルで月20万時間以上もの時間を節約することができるようになり、これらの業務にかかっていた時間を顧客対応に充てることができるようになりました。
これで取引業務まで時間を生み出すことができるため、行員のやるべき仕事に意識を集中させることができるわけです。
出典：https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00713498
製造業界：パナソニックコネクト/AIアシストによる業務効率化
出典：https://news.panasonic.com/jp/press/jn230628-2
パナソニックコネクト社では、社内にある膨大なデータベースと連携したAIアシストの仕組みを構築しています。この企業では自分が必要とする情報やデータは、イントラを調べれば入手することは可能です。
しかし、あまりに多岐に渡る分野の情報が分散されていることや階層が深いため、必要な情報を探し出すためには、かなりの時間を要していました。それをAIアシストによって効率的な情報検索が可能になったのです。
流通業界：セブンイレブン商品企画の創出
出典：https://www.sej.co.jp/company/
セブンイレブン・ジャパンでは、小売業の企業が商品企画の創出のために、生成AIを導入しています。1つの商品を生み出すためには、店舗の販売データ分析による消費者ニーズの把握から商品企画まで、膨大な時間を必要としていました。
しかし、生成AIを活用することで、市場のトレンドを反映した顧客のニーズにマッチした新製品のデザインやPRポイントをテキストで生成することができるようになったのです。従来のステップと比較すると、企画創出にかかった時間はこれまでの約1割程度。驚異的な期間で、新たな商品が世に生み出されていくのですから、驚嘆に値しますね。
生成AIのビジネス活用方法
前章でご紹介したビジネス業界における生成AIの活用事例を見ると、非常に高い効率性を実現していることが分かります。
では、ここから生成AIの具体的な活用方法を見ていくことにいたします。
1.販促・プレゼン資料の自動作成
生成AIの中には、自動で文章を作成する機能があります。これを使って自社製品やサービスのカタログやリーフレットなどの販促資料やプレゼン資料を作ることができるようになります。顧客の嗜好やニーズにマッチした広告に展開することも可能なのです。
また、生成AIは文字だけでなく、画像や動画・音声まで自動で生成してくれるため、販促活動に必要なプロモーションコンテンツも作成することができます。これまで専門の広告業者などに委託していた作業まで、内製化することができ、短時間に有効な資料を作ることができるので、ビジネスチャンスを逸することも軽減されるでしょう。
2.会議議事録の自動作成
社内業務で意外に面倒で時間を要する1つに「会議議事録の作成」があります。ブラインドタッチで文字打ちが速い社員なら、会議の進行中でもほとんど同時にメモを残すことができるでしょう。しかし、従来は録音した音声を聞き返して議事録を作成することが少なくなく、時間を要していたのです。部署によっては作成した議事録の内容チェックに余計な時間がかかることも。
これを生成AIの音声テキスト機能によって、短時間のうちに議事録を作成することが可能になりました。その結果、社員に対してイントラなどを使い、会議後すぐに議事録を共有することができるのです。
3.自社が蓄積した情報をベースにしたチャットボット
生成AIで最もポピュラーなのは、自社が蓄積した情報を活用したチャットポットですね。企業では長年培ってきた経験値やノウハウが蓄積されています。いわゆる「自社ナレッジ」というものですが、これをチャットポットで社員に対して、対話形式で応えていくのです。
これにより社員は、欲しい情報やデータを短時間に入手することができるため、スピーディーに次ステップに進むことが可能になります。
4.リスク判定の自動化
生成AIの中で最も期待されるのが、「リスク判定の自動化」でしょう。企業ではコンプライアンスを重視することが当たり前の時代。モラルに反する行動をすることは言語道断ですが、業務が複雑になっていけばいくほど、社員は良いことと悪いことの判断に悩むことが多くなっていきます。
特に取引先との契約においては、リスクの有無さえ見極めなければなりません。その指標として、生成AIによるリスク判定で自動化するのです。最終的には人間による判断が必要ですが、判断基準として生成AIを活用する価値が高まっていくでしょう。
生成AIを効果的に活用するための心構え
業務で生成AIを活用して最大限の効果を生み出すためには、いくつかのポイントを意識して導入する必要があります。ここからは効果的に活用するための心構えについて説明していきましょう。
1.目的にマッチしたツールを選定する
生成AIを導入する目的は、業務効率化・効果の最大化のためです。しかし、闇雲にAIツールを導入すればいいというものではありません。導入する目的を明確にして、それにマッチしたツールを選定する必要があるのです。
生成AIには、「テキスト生成」「画像生成」「動画生成」「音声生成」などの種類がありますが、業務内容によっては、既存の生成AIツールだけではなく、自社で開発したり、専門のベンダーに委託開発させることもあるでしょう。その場合でも業務に合ったツールを考えなくては何の意味もないことを理解しておくべきです。
2.不足する情報を追加学習させる
これは「AIの稼働状況を見ながら、不足する情報を追加学習させる」というもの。生成AIを活用する上で重要な心構えだと言ってもいいでしょう。
生成AIは1度導入すると、それで終了というわけではありません。生成AIは「深層学習（ディープランニング）」という自己学習能力がありますが、それだけでな足りない部分も出てくるのです。
例えば「ChatGPT」をベースにした社員向けのチャットポットを導入したとしましょう。社内独自のルールなどを知らない段階では、社員の問い合わせについて、適切な回答を示すことができません。そのために生成AIに追加学習させる必要があるのです。
3.社員の利用を促進する
これは生成AIに限った話ではありませんが、新たな仕組みを構築した後は、社員の利用を促進することが大切です。社内検収会や使用ガイドを作成して認知度を高めていくことも必要ですし、生成AI自身もディープランニングで、さらに自身をブラッシュアップさせることができます。
生成AIを活用する上での注意点
企業で生成AIを導入するにあたり、注意しなくてはならない点があります。ここからはその注意すべき項目を挙げておきましょう。
注意点1：情報漏えい
生成AIを活用する上で最も注意しなくてはならないことは「情報漏えい」です。セキュリティ対策を講じておかなければ、会社そのものの信頼が失墜してしまう可能性があります。
生成AIを効果的に利用するためには情報の取り扱いルールを決めておき、情報漏えいのトラブルが発生しないようにしなくてはなりません。
注意点2：アウトプットの信憑性
2点目は、AIで生成された情報の信憑性をチェックすることです。生成AIがでディープランニングで学習を重ねることやビッグデータをもとに、必要な情報を新たに提供してくれます。しかし、そのアプトプットが必ずしも正しい保証はありません。そのためAIが導き出した結果に対して、必ず人間の目で、サーベイする必要があることを覚えておいてください。
注意点3：著作権侵害
生成AIで生み出された情報やコンテンツが既存の情報と類似しているケースが少なくありません。その場合、著作権に抵触している可能性があります。また倫理的に相応しくない表現のデータを作り出してしまうこともあるかもしれません。これらの生成物もまた、企業のイメージを損なったり、社会的使用を失ったりする恐れがあるので、法務部門と連携しながらチェックする必要があるのです。
まとめ
ここまで企業における生成AIの活用メリットや注意点について、解説してきました。AIは業務を効率化するだけでなく、これまでとは異なる新たな価値観を創出する可能性を秘めていますが、注意すべきポイントがあることも念頭に置きながら、活用することがあるのです。
