半導体最大手がAIの「共有地」を買った 約2兆300億円で合意
NVIDIAは9月3日、AIモデルの共有サイトを運営するHugging Faceを129億3030万ドル(約2兆300億円)で買収することで合意したと発表した。
Hugging FaceはAIモデルやデータセットを公開・共有するサイトで、「AIのGitHub」と呼ばれる。1800万人を超える開発者と研究者が参加し、300万件以上のモデルと50万件のデータセットが公開されている。利用企業は20万社を超える。
Hugging Face側からNVIDIAに話を持ちかけたと共同創業者のドゥラングCEOが明かしている。2023年の資金調達では評価額が45億ドルだったため、今回の買収額はその約3倍にあたる。

- 2023NVIDIAも参加する出資で評価額45億ドルに
- 9/3NVIDIAが約129億ドルでの買収を発表
フアンCEOが「NVIDIAは必須にしない」と明言した
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、買収後もHugging Faceをオープンなプラットフォームのまま残すと言い切った。開発者はモデルもフレームワークもクラウドも自由に選べる。NVIDIAの計算基盤を使うことは必須にしない。
オープンソースとオープンウェイトのモデルのサポートも続ける。フアンCEOはオープンウェイトの重要性を訴える公開書簡にも署名した。オープンモデルがスタートアップや大学に先端的なAI機能を届け、安全性の強化にもつながると主張している。
一方でOpenAIやAnthropicなどクローズドモデルの提供元は自社でAIチップの開発を進めている。NVIDIAにとってオープンモデルの普及基盤を押さえることは、GPU市場での優位を守る手でもある。
Hugging Faceの規模
| 指標 | 数 |
|---|---|
| 登録開発者 | 1,800万人以上 |
| 公開モデル | 300万件以上 |
| データセット | 50万件以上 |
| 利用企業 | 20万社以上 |
社内でHugging Faceを使っているなら 確認しておくこと
いま何かが変わるわけではない。Hugging Faceのサービスはそのまま使える。モデルのダウンロードもAPIの利用も従来どおりだ。
ただし中長期では注意が要る。NVIDIAが自社のGPUやクラウドとHugging Faceの連携を深めれば、NVIDIA以外のハードウェアを使う企業は不利になる可能性がある。料金体系や利用規約が変わることも考えられる。
先月にはAIエージェントがHugging Faceを攻撃する事件も起きた。NVIDIAの傘下に入ることでインフラが強化されれば、セキュリティ面の改善は期待できる。社内でHugging Faceからモデルを取得しているなら、利用規約の変更通知が届く窓口を確認しておくとよさそうだ。
買収額「129億3030万ドル」に込められた遊び心
買収額が半端な数字なのには理由がある。129億3030万ドルの「129303」は、Hugging Faceのシンボルであるハグする顔の絵文字の文字コードを10進数にした数値と同じだ。ドゥラングCEOがXで種明かしした。
Hugging Faceの年間売上は約1億5000万ドルとされており、買収額はその約86倍にあたる。NVIDIAにとっては売上を買ったのではなく、1800万人の開発者が集まるエコシステムを手に入れた形になる。
NVIDIAはこれまでにHugging Face上で500以上のモデルと250のデータセットを公開してきた。買収によってインフラを強化し、世界中の開発者がAIを使いやすくすると述べている。
- オープンウェイト
- AIモデルの内部パラメータを公開して誰でも使える形で配布すること。コードまで全部公開するオープンソースとは区別される
GitHubがMicrosoftに買われたときと構図は似ている。あのときも「オープンは続ける」と言った。実際にそうしたが、GitHubの中にMicrosoftのサービスが自然に溶け込んで離れにくくなった。NVIDIAも同じことをやるだろう。Hugging FaceのインフラにNVIDIAのGPUが深く組み込まれ、使う側は意識しないうちにNVIDIAの基盤に乗ることになる。社内でオープンモデルを使っている企業は、取得先をHugging Face1本に絞らないほうがいい。
- Hugging Faceは買収後も無料で使えるのか
- NVIDIAのフアンCEOはHugging Faceをオープンなプラットフォームのまま残すと明言した。開発者がモデルやフレームワークやクラウドを自由に選べる状態を続け、NVIDIAの計算基盤を必須にしないとしている。オープンソースとオープンウェイトのモデルのサポートも引き続き行う方針だ。ただし買収が完了すれば経営判断はNVIDIA側に移るため、将来の料金体系や利用条件が変わる可能性は否定できない。
- NVIDIAがHugging Faceを買収した理由は何か
- NVIDIAはオープンモデルの普及が自社GPU需要の拡大につながると見ている。Hugging Faceには300万件超のモデルが公開されており、そのほとんどがNVIDIAのGPU上で動く。OpenAIやGoogleなどクローズドモデルの提供元が独自チップの開発を進めるなか、オープンモデルの流通基盤を押さえることでGPU市場の優位を守る狙いがある。
この記事の出典
補助資料
- [1]PC Watchこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月4日
