誰でも耳にすることが多くなったAI。とりわけ「生成AI」の技術進歩は目覚ましく、ビジネス業界においては欠かすことのできない重要なツールになっています。その一方で注意しなければならない点もあるのです。この記事では生成AI活用で成功している事例をご紹介すると同時に、メリットと注意すべきポイントについて解説していきましょう。
生成AIとは何?
別名「ジェネレーティブAI」とも呼ばれる生成AIは、テキストや動画像・音声などのデータをもとにして、新たな情報やコンテンツを生み出すAIです。人工知能であるAIの中でも、「ディープラーニング」というAI自身が学習を繰り返して、人が時間をかけて作り出す成果物を僅かな時間で生成することができます。
身近な生成AIとしては「ChatGPT」が有名ですが、求める情報の条件を入力するだけで、必要な情報を文字や動画像、あるいは音声という形で提供してくれるのです。
生成AIで何ができる?
生成AIはまるで意識を持った人間のような思考パターンを持っているように思えてしまうかもしれません。そんな生成AIは、人が創造したものと同じレベル、もしくはそれを超える成果物を作り出すことができます。そのためこれまでの仕事の進め方が大きく変化してきているのです。
これまで従業員が時間をかけて行ってきた定型業務を数分の短い時間で完了させるすることができますし、販促部門が頭を悩ましてきた宣伝広告のコンテンツを生成AIがテキスト生成・画像生成機能を使って、広告用のコンテンツを作り出せます。
また、イントラに生成AIをベースにした情報検索の仕組みを作り、その中で社員の問い合わせに対して、必要な資料データを引き出すことも可能です。しかも、膨大な資料の場合、その内容を要約して提示してくれることもできるので、社員は限られた時間を有効に活用することができます。
【活用事例】ビジネス業界にみる生成AIの活用の成功例
では、ここからビジネス業界で生成AIを活用した成功例をご紹介していきますが、どのように生成AIが使われているのかがイメージできると思います。
1.製造業:江崎グリコ/人的コスト・商品開発期間の削減
まずは江崎グリコの事例です。同社は老舗の菓子メーカーとして知られていますが、生成AIを導入して人的なコストや商品の開発時間を大幅に削減することに成功しています。
人的なコストの削減については、消費者からの問い合わせに対しチャットボットを活用して、顧客対応業務を効率化しているのです。これによりオペレーターの負担軽減を図り、人的コスト削減に成功しています。商品開発期間の削減は、生成AIによる需要予測で顧客のニーズを把握。新しい商品を開発する段階でも生成AIを駆使して、市場ニーズにマッチしたアイデアを創出しているのです。
2.製造業:アサヒビール/製造過程の最適化し持続可能な事業推進を実践
出典:https://www.asahibeer.co.jp/
スーパードライで知られるアサヒビールでは、商品の製造過程を最適化するために生成AIを活用しています。同社は商品製造プロセスにおいて環境負荷の減らし、資源の有効利用を目指しているのですが、生成AIの活用により、製造過程の中でどのようにエネルギーが消費されているか逐次データを分析しているのです。その結果、CO2の排出を大幅に削減することが期待されています。
この他には、商品生産の流れを管理して、環境負荷の小さい素材選定からリサイクルまでの流れを構築しているのです。しかも生成AIの導入後は、適正な在庫管理と効率的な物流を実現しており、サプライチェーン全体を的確にコントロールすることができています。
3.建設業:大林組/生成AIがよる設計業務を効率化
出典:https://www.obayashi.co.jp/
スーパーゼネコンでも生成AIの導入が図られていますね。それは大林組で、設計業務を生成AIで効率化の取り組みを進めています。同社では初期段階の設計業務を効率化するために生成AIツールを開発。これにより、建物のデッサンや3Dモデルをもとに、いくつかの外観デザイン案を生み出すことができるのです。
これによりハンドで行っていた設計業務の時間を大幅に短縮することができました。クライアントの要望をスピーディにビジュアル化することができ、相手との商談をスムーズに行うことができるようになっています。
4.サービス業:ベルシステム24/生成AIによる顧客対応でスタッフ不足を解消
出典:https://www.bell24.co.jp/ja/
コールセンター業務で知名度のあるベルシステム24。同社はコールセンター事業を核としたアウトソーシングを展開していますが、常に人材の確保が大きな課題でした。この問題を解消するために導入されたのが、生成AIです。
従来のコールセンターとは異なり、オペレーターと生成AIをミックスさせた仕組みを構築して、「ハイブリッド型コールセンター」として実証実験を重ねてきました。同社が長年蓄積してきたコールセンターのノウハウとAIによるチャットボット・ボイスボットの導入により、コールセンターの自動化のめどをつけたのです。
具体的には、顧客からの簡単な質問に対しては生成AIが対応し、AIで対応しきれない難しい問い合わせに対してオペレーターが回答するというもの。これらのハイブリッドな仕組みによって、コールセンターにおける人材不足の解決を目指しているのです。
5.エネルギー業:東京電力エナジーパートナー/ChatGPTによるアンケート分析
出典:https://www.tepco.co.jp/ep/
エネルギー業界では、東京電力エナジーパートナーが生成AIを活用しています。その活用法は、自社のサービス・製品や社員の満足度調査。アンケート方式で調査が行われているのですが、選択式と自由記述の組み合わせで実施されています。
選択式は数値化で集計することができますが、自由記述の回答から社員の傾向を集計・分析することは非常に厄介な作業。これを生成AIを駆使して分析しているのです。数千もの自由記述回答から、職場が抱える課題や社員間の人間関係までカテゴリ別に分類して、業務改善を図っています。
生成AIの活用メリット
多くの企業で生成AIの導入・活用が進んでいるのですが、一定の成果を出しつつあるのが実情でしょう。そこであらためて生成AI活用のメリットを考えていきましょう。
1.作業工数の削減
事例でご紹介してきたように、生成AIを活用することで、大幅な作業工数を削減できる可能性があります。前述のコールセンターではオペレーターと生成AIの融合で、効率的な顧客対応が可能になりましたが、顧客との会議の録音記録やオペレーターの応対録音を音声生成AIが自動的にテキストにすることができます。
これによって顧客対応した後に人が録音データを聞きながら、手打ちでデータベース化する時間を省略することができるのです。これも作業工数の削減の1つであり、ひいては大幅なコスト削減につながります。
2.新たなアイデア創出のサポート
生成AIは作業工数削減だけでなく、新たなアイデアの創出をサポートすることも可能です。これはディープランニングという機能で、学習を繰り返しさらに多くの情報を分析し新しい情報を作り出すことができるためです。
特に宣伝分野においては、製品・サービスの販売拡大のために、効果的なPR活動が重要な鍵を握っていますね。そのため広告宣伝のプロの力を借りて宣伝に必要なコンテンツを創出する必要があります。この分野で生成AIを活用すると、クリエイティブなアイデアを創出してくれるので、人では中々気付かなかった斬新なアイデアを生み出すことも可能でしょう。
3.顧客ニーズの把握支援
顧客ニーズを把握することも生成AIの得意分野ですね。企業においてマーケティング活動は、経営基盤を安定させて拡大させていく重要なものです。そのためには長年蓄積してきた経験・ノウハウをもとに製品・サービスの商品化を図っていきますが、近年の顧客ニーズは多様化しています。
多岐に渡る市場のニーズを的確に把握するためには、生成AIの技術で膨大なデータを分析し、顧客がどのようなことを求めているのかを把握するのです。これにより市場のニーズにマッチした商品やサービスを作ることや販売効果の最大化を狙った商機をとらえることができます。
生成AIの業務活用における注意点
高い効果を生み出すことが期待できる生成AIですが、活用するにあたり、十分に注意しなければならないこともあります。
1.生成された情報の正誤チェックを徹底する
1点目は、AIで生成された情報(コンテンツ)の正誤のチェックを徹底することです。従来のAiから進化した生成AIでもまだ発展途上の技術と言ってもいいかもしれません。そのため生成AIが導き出した情報は、必ずしも正しいという保証はありません。
生成された情報の内容に誤りがないかや、著作権に抵触していないかを必ず人間の目でチェックして正誤確認を徹底することが大切です。誤ったコンテンツをもとに宣伝に活用するなど社外に向けて発信した場合、思わぬトラブルを引き起こして、企業ブランドを失墜させてしまう恐れもなるので十分に注意しなければなりません。
2.不適切な表現が含まれていないか確認する
生成AIが吐き出す成果物の内容を見ると、不適切な表現が含まれている場合も否定できません。いわゆる反倫理的なことが内容が記述されていることもあるのです。生成AIは自身が学習したパターンをもとにして新しいコンテンツを作りますが、それが倫理的に問題になることも。
AIは自身が学習したパターンをもとにして新しいコンテンツを作りますが、それが倫理的に問題があるかどうか判断することは不可能。そのため、生成されたものの中に差別的な表現などがないか、細かく確認する必要があります。
生成AIに対して適確な命令を示す
誤ったコンテンツや倫理的に問題のあるコンテンツを生み出す可能性もある生成AIですが、精度の高い情報を引き出すためには、生成AIに対して適確な指示・命令を示すことも重要です。
AIが必要なコンテンツを生成できるように、求めるテーマに関連する情報を提供すること。これにより、生成AIは、問題を正しく理解できるようになり、人間が求める正確な回答を作り出すことができるのです。
今後生成AIはどのように進化していくか?
AIはこの数年ですさまじいスピードで進化を遂げてきました。これからのそのペースはさらに加速していくでしょう。現時点でもルーティンワークを生成AIに代替させるだけでなく、企画やマーケティングなどクリエイティブな分野でも、生成AIに置き変わっていく可能性を秘めています。
今ビジネス業界では、人の高齢化を背景に数年の間に熟練した社員が減少されていくことが懸念されていますね。そのため長年蓄積してきた人の経験が失われていく恐れでもあるでしょう。匠の技が継承されなくなるかもしれません。
しかし、生成AIがこれを補完しつつ、新たな人材育成の面で、大きな役割を果たしていく可能性も考えられます。人にできて生成AIにできないもの。それは直感的な判断です。これから生成AIに任せられるものは任せて、人間にしかできない分野をじっくりと考えていく時期に差し掛かっていると思うのです。
まとめ
この記事では、ビジネス業界における生成AIの成功事例を交えながら、活用のメリットと注意点を説明してきました。今あなたのいる職場でも生成AIの導入が進んでいるかもしれません。このような環境の中で、AIが何をやってくれるのかを正しく理解して、さらに価値の高い仕事ができるようにしていってください。