AIの実用化が進み、多くの企業が導入しているのをご存じでしょうか。普段何気なく使っているものやサービスにも、実はAIが活用されているということが一般的になってきているのです。
そんなAIの中でも、感情を判別する感情認識AIは革新的な技術だとされています。すでに活用する企業も多く、さらにこれからの活躍が期待されている新しい技術です。この記事では、そんな感情認識AIの活用事例や導入のメリットとデメリットについて紹介します。
感情認識AIとは
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感情認識AIとは、音声やテキストなどから人間の感情を読み取り、判別するAI技術のことを指します。これまで、感情の認識をAIにさせることは難しいとされてきました。ところが、近年のインターネットやSNSの普及で、テキストや音声、表情などのデータを大量に集めることが可能になり、AI技術の発展に貢献したのです。
感情認識AIは、「音声」「表情」「テキスト」「生体データ」の4種類の感情分析方法があります。サービス内容にあった分析方法でデータを収集し、活用することで業務の効率化を図る企業も増えました。例えば、コールセンターは音声による感情認識、SNSを活用した集客方法では口コミなどのテキストによる感情認識が活躍します。
顧客の感情を分析することでサービス業は、顧客のニーズにあったサービスの提供が可能になります。消費者の感情を分析すれば、消費者のニーズを知り、より売れる商品を生み出すこともできるでしょう。こうして感情認識AIは、多くの企業の発展に貢献しています。
また、ディープラーニングと呼ばれる、人間の脳を真似た人工知能技術が、感情認識AIの精度をさらに上げています。ディープラーニングは、膨大なデータの中から様々なパターンを学習するシステムです。いくつもの層を重ねて学習させることで人工知能のデータへの理解を深めさせます。この技術により、感情認識AIも多くのデータをより深く理解し、人間の感情という曖昧なものでさえも判別することが可能になってきています。
音声による感情認識AIの活用事例
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音声の認識は、スマホのアシスタント機能や翻訳機能などでなじみがありますね。ここに感情認識が加わると、読み取った声の主が、どのような感情を抱いているかがわかります。音声による感情認識AIは、どのようなサービスや事業で活用されているのかいくつか事例を紹介します。
スポーツ選手のコンディションサポート
スポーツ選手のコンディションは、フィジカル面はもちろんですがメンタル面もパフォーマンスに大きな影響を与えます。メンタルコンディションは、選手の自己申告では本心が見えにくいこともあり、いつも適切なサポートができるとは限りません。
音声による感情認識AIを使用し、選手のストレス度をチェックしたり、本人も気づけない心の敏感な動きに気づいたりできるようになるでしょう。これにより、選手は適切なメンタルケアを受けられ、パフォーマンスの向上にも繋がることが期待できます。
コールセンターでの顧客対応
コールセンターにおける顧客対応は、顧客とオペレーターの声によるやり取りが全てです。オペレーターが、顧客の感情を声色や話すスピードなどから判断し、会話を上手に目的に合わせて繋げていきます。ですが、経験の浅いオペレーターはもちろん、経験のある者でもどのように対応するか判断が難しく、労力がいる仕事です。
この顧客の感情を判断するのを、音声による感情認識AIに任せれば、顧客の望む対応を選びやすくなります。相手の感情を判断する苦悩がなくなるため、オペレーターのストレスも軽減されます。顧客にとっては、感情に沿った対応をしてもらえるので不快感が無く、顧客満足度も上がるでしょう。
表情による感情認識AI活用事例
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表情による感情認識AIは、カメラで認識した顔の表情から人の感情を判別する仕組みです。目の動きや瞳孔の開き方などから、表情を読み取り隠れた感情までもを判別します。表情による感情認識AIは、従業員のケアやトレーニング、接客対応などに活用されています。
営業職のトレーニング
表情による感情認識AIにより、営業職や販売職など対人コミュニケーションを必要とする職種のトレーニングが可能です。営業や接客を受ける相手の表情を読み取り、どのような印象を受けるかが可視化されます。
そのため、顧客にとって良い印象を与えられる接客や、成約しやすい営業方法を見つけるのに効果的なトレーニングを行うことができます。また、トレーニングをAIが行うことで社員の研修に人員をさく必要がなく、人手が少なくても社員のスキルアップを目指せるのもメリットです。
バーチャルスタッフとして接客対応
商業施設のサービスカウンターなどで、AIやロボットが接客対応しているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。顧客の感情を読み取り適切な対応ができれば、道案内などの簡単な接客は感情認識AIに任せることができます。
私も以前、ショッピングモールで地図を検索するロボットを利用したことがあります。地図の検索中に話しかけてくれたり、操作を間違えた時に正しく誘導してくれたりするので、リラックスして操作できました。一人で機器を操作するよりも、AIとの会話が生まれることで顧客の感情をポジティブに動かしてくれることが期待できるのではないかと思います。
AIが実際の接客対応を経験することにより、顧客と対面する機会が多くなれば、感情認識AIのデータも収集しやすい環境になります。こうしてデータをたくさん集めることで、感情の判別や対応の精度もブラッシュアップされることでしょう。人と違い、研修の必要がないためすぐに導入できるのも便利です。
接客業は、時間帯や曜日でシフトに偏りが起きやすい業種ですが、感情認識AIの導入により従業員のアシスタントが可能となり人員の確保に労力を割かなくて済みます。
テキストによる感情認識AI活用事例
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テキストによる感情認識AIは、SNSやインターネット上にある口コミやブログなどのテキストから感情を判別します。そのため、市場調査やマーケティングで主に活用されています。
顧客の口コミやアンケート
インターネットが発展した今、顧客が顔を見せることなく気軽に会社や商品への評価を伝えられるのはネット上の口コミです。このようなweb上にある口コミや、お客様向けアンケートなどのテキストから、怒りや喜びなどの感情を読み取る際に活用されています。
文字の並びや、使われている言葉などから顧客の感情を判別することで、顧客への適切な対応が可能になるでしょう。テキストによる感情認識AIを使えば、顧客のニーズもどのくらいの熱量で望んでいるのかがわかりやすく、市場調査においても貢献します。口コミから感情を判別できれば、より良い商品とサービスの提供が期待できますね。
社内文書や社員向けアンケート
社内文書や社員向けアンケートは、書き手が自分の気持ちが上司や人事に悪く伝わってしまわないよう、言葉選びに注意して書くことがあります。そのため、社内環境の改善が目的のアンケートでも、社員の本心がわかりづらくなってしまい、アンケートの効果が発揮できません。
私も、会社のパワハラやいじめに関するアンケートで、気になる事があってもはっきりわかるような書き方はできませんでした。テキストの感情認識AIを使用し、社員の文書やアンケートから本心を理解できれば、社内環境の改善に効果的です。
生体データによる感情認識AI活用事例
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生体データによる感情認識は、脈拍や脳波などをもとに感情を判別する仕組みです。これまで紹介してきた感情認識AIに比べると、専用の機器を使用して読み取る必要があるためデータの収集が難しいと言われています。そのため、まだ研究が発展途上の技術です。
スポーツ選手の体調管理とメンタルケア
生体データの認識を行う機器といえば、スマートウォッチが挙げられます。スマートウォッチのように、脈拍や睡眠時間などを計測し、健康状態を随時チェックすることが可能です。
緊張状態や不安が強い状態などを、こうしたウェアラブルデバイスを日常的に着用することですぐに判断することができます。このように、心の状態もわかるようになれば、コーチなどの指導者はもちろん本人もマインド調整がしやすくなります。
介護施設利用者へのケア
介護施設を利用する高齢者の人にとって、健康管理は必須です。とはいえ、大きな施設になればその分入居者数も多く、全員に対してフィジカルとメンタルの両面で健康管理を行うのはかなりの負担が予想されます。そこで、生体データによる感情認識AIを使えば、施設利用者の体調や心の変化に気づきやすく、介護士も対応しやすくなるでしょう。
介護士が一人ひとりに密着して観察することはできませんが、代わりにデバイスが判断し介護士に伝えてくれるのです。利用者の感情を読み取り、心の状態を知ることができれば、怪我を防止したり、精神的に追い詰められないように日頃からケアできたりするので安心です。
導入のメリットとデメリット
感情認識AIを導入するか検討するとき、気になるのはそのメリットとデメリットです。感情認識AIはまだまだ発展途上の技術ですから、これからさらに活躍することが期待される一方、未完の部分もあります。ここからは、感情認識AIを導入するメリットとデメリットを紹介します。
導入のメリット
- 顧客満足度が上がる
- 市場を把握できる
- 社員がサービス提供や生産に集中できる
感情認識AIの導入メリットは、接客業や営業の場合では顧客満足度アップが図れることです。顧客の感情を読み取り、ニーズに合わせた対応ができるため、顧客にとって心地よい営業や接客を提供することができます。
マーケティングでも、顧客の感情を理解できれば、必要とされている商品や今のトレンドを知ることができます。マーケティングでは口コミやSNSに投稿されたテキスト、商品レビューをコンテンツとしている動画配信者の表情などから感情認識を行い、市場調査に活用しているのです。
このように、人の手やスキルで対応していたところの一部を感情認識AIに任せることにより、サービスの提供や企画、生産に集中できるのもメリットです。
導入のデメリット
- 導入コストがかかる
- 誤認識することもある
- メンテナンスの頻度
デメリットとして最もよく挙げられるのは、高額な導入コストでしょう。企業やサービスに合わせて表情認識AIをプログラミングする技術料から機器の導入にかかる費用など初期費用がかかります。そのため、一時的に導入してみるというのではなく、長期的に利用することを検討する方が良いでしょう。
また、表情認識AIはまだ発展途上でもあり、データを収集しアップデートしながら活用することになります。症例や実例が少ないうちは対応に手こずることや、機器の誤認識や誤作動の可能性が起こりうることを考慮しなくてはなりません。
こういった誤認識や誤作動を防ぐためにも、メンテナンスの頻度が高くその都度費用がかかる場合もあります。そのため、ランニングコストも高くなるので、予算をしっかり組んで導入しましょう。
まとめ
感情認識AIは、既にさまざまな業種で活用され始めています。人の感情はかつてAIには読み取れないものだとされてきましたが、技術の発展により不可能ではなくなりました。対人のサービスは、感情への対応が難しく人にしかできない分野でしたが、これからはAIが対応できるところも増えていくでしょう。
AIに任せられる作業が増えれば、その分人が労力をさけるところや時間をかけられる先が変わるはずです。これにより、より良い商品やサービスを生み出すことができ、社内環境の改善などにも力を入れられるようになるでしょう。