生成AIにできること・できないことは?影響を受ける職業についても解説

生成AIにできること・できないことは?影響を受ける職業についても解説

生成AIにできること、と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
画像生成、ChatGPTのような会話の生成、この辺りを想像する方は多いのではないでしょうか。
しかし、音声や動画、会議資料に使えるスライドなど、こういったものも作れるということはまだ一般的ではありません。
今回は、生成AIにできることに焦点を当てた記事を作成しました。
気になる箇所からぜひ読んでみてください。

AInformation編集部/藤井俊太のアバター

AI導入コンサルタント

藤井俊太(Shunta Fujii)

AIのスペシャリストとして、最新のAI情報を常にキャッチ、アップデートしている。自らもAI導入コンサルタントとして活動し、主に生成AIを駆使した業務効率化、生産性向上、新規事業開発を行なっている。
AIの総合情報サイト「AInformation」は、AIに関する専門的な情報やサービス・プロダクトを解説、紹介するWebメディア。AIの専門家集団の編集部がAIの活用法、最新ニュースやトレンド情報を分かりやすく発信していいます。藤井俊太のプロフィール

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目次

生成AIにできないことって何?

「生成AIにできること」のお話をする前に、できないことの話をしておきましょう。
逆に言いますと、できないことを含まなければ、生成AIにはおおよそのことができるのです。

指示のない創造

言い換えると自発的な、自律的な創造とも言えますね。
生成AIは指示(プロンプト)があって初めて動作するものです。
人間のように、言われなくとも考えて行動する、といったことはできません。
あくまでも人間の行動を学習したり、模倣したり、そのパターンを分析することによって対応します。

生成AIから出力されてくる結果はオリジナルのようにも見えますが、実際のところは学習データから組み合わせているだけである、ということを忘れてはいけません。
それを忘れてしまうと、生成AIが持つ権利関係の問題を見落とすことになり、結果として法的な問題に触れることになるリスクを伴います。

人間の感情を理解すること

生成AIが学習を行う際には、膨大なデータからパターン化を行っています。
パターン化できないものを学習するのは苦手、とも言える特徴を持っているのですね。

例えば人が褒められた時、素直に受け取る人もいれば、裏があるのではと考える人もいる、という例を挙げると。
素直に受け取る人のパターンと裏があると考える人のパターンを分析することは、その分野を専門としている人々でさえ成しえていないところです。
それを生成AIができるかというと、まだ難しいのです。

対話している相手が怒っているのか、喜んでいるのかといった判断や、それに応じて対応を変えるということは、人間が行った方がいいでしょう。

非合理的な考え方や判断

これは生成AIに限ったことではありませんが、感情に左右されないというシステムの性質上、AIは非合理的な判断を行うことがありません
AIは学習した大量のデータに基づいて、正しい、または最適であると思われる解答を出力しているのです。
そのため、人間であれば悩んでしまうような倫理的な問題など対して、「問題解決に最適だ」と判断した際には悩むこともなく提示します。

生成AIの解答に倫理的な問題が発生する場合などが懸念されますので、鵜呑みにすることなく、人間の価値観に照らし合わせてチェックすることが重要になります。

学んでいないことに対する回答

ChatGPTなど、Web上のデータを学習している場合は、「〇〇年までのデータ」を収集して学習しています。
常に最新のデータを取り込み続けようと思うと膨大なコストがかかります。
そのため、例えばそれが「2023年までのデータ」だった場合、「2024年にリリースされたサービスの情報」は質問しても回答できない、または類似した単語から存在しない情報を作り上げて回答する、といった結果になります。

生成AIの得意分野

そもそも生成AIがどういうものかというと、膨大なデータを基に学習を繰り返した結果、人間の指示(プロンプト)に従って文章や画像などのコンテンツを新しく作ることができるようになったAIです。
そういう仕組みでできているからこそ、学習元のデータを変えたり、学習方法を変えたりすることで、様々な出力結果を生み出すことが可能であるということですね。
では、代表的なものから、生成AIができることの概要を確認してみましょう。

情報収集と分析、翻訳や要約

生成AIの中でも、Web上にある情報を学習元としているものに関しての特徴です。
最新の情報を取り込めているとは限らないものの、Webサイトで自ら情報収集を行うよりも、対話型AIを利用することで大幅にコストを削減できる場合があります。

ファクトチェックはもちろん重要ですが、例えばExcelで行っていたような定量分析なども任せてしまうことができるようになっているため、活用することによって大きなメリットが得られます。
翻訳は元々Web上で実施している方もいるでしょうから想像はしやすいでしょうか。
要約に関しては、元となる情報をファイルまたはコピーペーストによって与えることで、その情報を要約する機能を持った生成AIなども存在します。

いずれも過去記事で取り上げたものがありますので、興味があればそちらもご覧ください。

提案とフィードバック

生成AIは多様なバリエーションの結果を出力します。
それを「提案」として利用し、アイデア出しに活用することが一般的になりつつあります。
ブレインストーミングで出すような情報量が一つのプロンプトで出力されたり、その結果によって人間がプロンプトの改善を考える、などフィードバックを得ることも可能。

ビジネス利用に関しても注意点はあるものの、無限の思考力と試行回数による「案出し」は魅力的ですね。

上記の特徴を持つからこそ、次に述べる分野での生成AIの発達は目まぐるしいものとなっています。
代表的なサービスの例を挙げながら紹介していきます。

画像生成

アートやロゴ、写真に似た画像の生成が瞬時に生成できるのが、画像生成AIです。
デザイナーやイラストレーターといった技術を持つ人々に限らず表現が可能になる技術ですが、出力されたものをそのまま使うことは、著作権的な観点からも推奨はされていません

しかし、生成AIならではのプロンプトの解釈、要素の組み合わせなどによって、人間には思いつくことの難しいたくさんの、斬新なアイデアが生まれる可能性があり、ブレインストーミング的な手法やアイデアのたたき台として活用されています。
チラシやポスターなどのデザイン、テンプレート作成やキャラクターデザイン、データを基にしたグラフやチャートなどの表現に関しても、人間が完成させることを前提に利用されている場合がありますね。
また、技術の発展によって、今ではまだ難しい製品デザインや建築物の意匠デザインなど、専門性やデザイン性の要求される分野でもAIの活躍が見込まれる、と良そうする向きもあるようです。

代表的な画像生成AIサービスは以下の通りです。


【無料】Canva:デザイン面に優れたWebサービスですが、AIでの画像生成も可能です。日本語プロンプトが可能な点で優秀と言えます。

【無料】Microsoft Designer:プロンプトは基本的には英語ですが、サンプルプロンプトがあるので編集を加えることでイメージした画像に近づきやすいのが強みです。

【無料】Artguru:スタイルやアスペクト比、画像枚数などが設定しやすい直感的なUIが魅力。

文章生成

ChatGPTやGeminiの活躍で、生成AIといえばこれ!と思っている方もいるかもしれません。
そのくらい代表的な機能が、文章生成です。

文章生成AIが得意とするのは、コピーライティングや原稿の生成、多言語対応など。
企業であれば、プレスリリースやニュースの作成、ブログやメールの執筆、商品説明やカタログの作成、教材やトレーニング用のコンテンツを作成したり。FAQの自動生成や、パーソナライズされた案内文の作成まで。
生活の中で文章が活用されるシーンが多いために、これらの機能が活きるシーンも多いというわけです。

エンジニアなどの職業や、趣味でゲームなどを作成している方などは、プログラムコードの作成に生成AIを利用している場合もあります。
使用する言語や条件などを適切に指示することができれば、ある程度は動作するコードが作成されます。
あとはテストを繰り返して条件を加えるなどで、0から作るよりはうんと手軽になりますね。

代表的な文章生成AIサービスは以下の通りです。


【無料】ChatGPT:最新版以外は無料で使えます。すでに代表的なサービスですが、まだ成長が見込まれます。

【無料】Gemini:文章の長さやスタイル、トーン、キーワードなどを指定することができるため、使い方によって多様な文章が生成できます。

【有料】Notion AI:Notionのサービス内で利用可能で、法律に関連する文書や契約書なども作成できるのが強みです。

音声生成

さまざまなトラブルがあったため、その印象で記憶している人もいるかもしれません。
しかし、学習元に音声データを使用することで本物の人間が話しているかのような音声データを作成することができる、という特性は、例えば何かを解説するような動画でのナレーションであったり、多言語通訳、コールセンターの自動応答などで活用することができます。

加えて、生成された音声データはリアルタイムでテキスト化したり、要約したりすることも、生成AIというシステムであるから可能です。
これらを活用することによって、お客様の意図をすばやく把握することができたり、自動的に多言語での応答が可能になったり、対話データをもとにして最適な回答を提案したりすることも可能になります。

医療面では、病気で声を失った人の会話サポートという面でも期待されます。
法整備や職業倫理の問題で検討すべき点は多々ありますが、技術として非常にまだ伸びしろのあるケースであると言えるでしょう。

代表的な音声生成AIサービスは以下の通りです。


【無料】Microsoft VALL-E X:声の変換、感情表現の反映が可能

【無料】CoeFont:Webブラウザ上で音声編集、合成が可能

【無料】VOICEVOX:プロトタイプ版ではあるものの、歌声音声機能が使える

動画生成

フェイクニュースに使われる懸念が語られていますが、懸念点を払拭することさえできれば非常に期待の持てる分野です。
入力されたテキストや画像データなど、さまざまな情報をもとに、新しい動画を生成することができます。
もともとの動画撮影手順には、機材の準備や場所、時間の確保などたくさんのリソースが必要でしたが、そのリソース問題も生成AIを利用すれば解決します。
また、既存の動画編集を効率化する方面で発達しているAIもありますね。

動画が作れるということは、製品のプロモーション映像や教材にするビデオ、映画やアニメなどのクリエイティブ方面など、様々な活躍が期待できるということです。
また、編集では既存の動画のまとめを作成したり、ニュースからハイライトを作成するといったことも手軽にできるようになります。

代表的な動画生成AIサービスは以下の通りです。


【有料】Filmora:様々な機能が利用できる、高性能な動画生成/編集AIです。無料でのお試し利用も可能。

【有料】FlexClip:無料機能の間でも、10分までの動画は作成できます。月額プランもありますので、スポット利用にも向いていると言えるでしょう。

生成AIが活きる仕事

これまでお伝えしてきた生成AIにできること、できないこと、そしてそれらの個別の機能。
それらを活かすことで、人間が担う必要のなくなるかもしれない仕事があります。

例えば、コピーライティングや翻訳、技術文書の作成、一般的な話題に関する記事やレポートのライティングなどは、生成AIにある程度任せてしまってもよいと言えるでしょう。
インターネットを利用して情報収集を行うのであれば、利用するAIの学習元にそのデータが含まれていること、出力された結果に問題がないかどうかのファクトチェックを怠らないこと、など数点気を付けることで、現在の作業を代替してもらうことができるかもしれません。

テンプレート的な作業に関して言えば、グラフィックデザインやウェブデザインも候補に入ります。
革新的なアイデアの採用は難しくなるかもしれませんが、基本的な部分のデザイン、あるいはコーディングであれば、人間がするべき仕事は出力結果のチェックだけ、と言える可能性もあるでしょう。

すでに活用が進んでいる面としては、カスタマーサービス(簡単な問い合わせ対応)やデータの集計、分析レポートの作成。そして法務では契約書の下書きや文書のレビュー
これらを実施するための生成AI技術は企業による導入が進んでおり、人間と違って24時間365日の対応が可能であることなどを取柄に浸透が進んでいます。
また、有料サービスではありますがNotionAIなど、法務面での活躍を見せているサービスもありますので、今後に期待の持てる分野と言えるかもしれません。

生成AIによって変わる仕事

完全に代替可能とまではいかずとも、人間が担う部分のある程度をAIに任せることによって、変わっていくと予想されている仕事もありますね。

ジャーナリストはAIを利用して情報収集や整理を行うことができるようになり、より思索的な活動に時間を割くことができるようになるかもしれません。
教育に携わる人は、学習過程にAIを活用することによって全体のフォローを行うよりも「個別の学習を最適化するために」考えることができるようになる可能性もあり、これは「診断の補助としてAIを用いること」によって医療従事者が得られるメリットとも通じるところがあるでしょう。
同様に、AIに市場分析を任せることができれば、金融等でのアドバイザーとして活躍している人にも似たメリットが生まれるかもしれません。

生成AIによって生まれる仕事

今までの話は「AIが人間の代替をすることで、人間の仕事が奪われる」という説にも通じるかもしれない話でした。
が、生成AIが活躍することによって生まれる仕事も、もちろんある、と言われています。
なぜなら少なくとも現在の生成AIには、明確に「できないこと」があるからです。

生成AIには指示を与えなければいけません
そのため、プロンプトエンジニアリングという概念があります。
最適なプロンプトを作成することで、欲しかった出力結果にたどり着くまでのコストを削減する、という考え方です。
これを職業とする、「AIプロンプトエンジニア」が生まれる可能性もあるのではないでしょうか?

また、生成AIは倫理的な問題を考慮することが苦手です。
出力結果に問題がないかということは、常に人の目で監査を行う必要があります。
そうすると、「AI倫理コンサルタント/アドバイザー」などの職業が生まれる気がしませんか?

加えて、生成AIは学習元となるデータによって出力結果の品質や傾向が左右されます
学習データを最適化したり、不要なものがあれば選別を行うような、「AIトレーナー」や「AIデータキュレーター」と呼べる仕事が生まれる可能性もありますね。

そして、生成AIがシステムである以上、その動作の正しさや安全性を監査、検証する必要があります。
ここから「AIシステム監査」という仕事が必要になるとも言われていますね。

AIと協同するという意味では「AIアーティスト」はすでに生まれている、またはそれを認める法や文化がないだけである、とさえ言えるかもしれません。

生成AIが社会に影響を与えることは少なからずあり、すでにその変化は始まっている、ということです。

まとめ:生成AIにできることって何?

さて、本記事をまとめていきましょう。

  • 情報収集と分析、翻訳や要約、提案は生成AIの得意分野
  • 画像生成、文章生成、音声生成、動画生成では既にAIが大活躍
  • 生成AIにできることを活かして、現在ある職業の内容が変わる/代替される可能性がある
  • 生成AIにできないことを補うために、新しい職業が生み出される可能性がある

要点はこの4つです。
生成AIのサービスを利用するだけでなく、生成AIにできることやできないこと、それを知っておくことによって、変化していく社会にも対応することができるようになるのではないかと思います。

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