SNSで広がる情報やAIの回答の真偽、見極められていますか?xAI社によって開発された、対話型AI「Grok」は、リアルタイムの投稿からも情報を取得でき、出典付きで回答してくれるツールです。
本記事では、Grokを使ったファクトチェックのやり方や、Xの投稿が正しい情報か、実例とともにご紹介します。参考にして、AI時代の情報リテラシーを高めてください。
Grokの基本については以下の記事で解説しています。Grokを使い始めたばかりの人や特徴を知りたい人は参考にしてください。
Grokとは?使い方や活用例、他のAIとの違いまで実際に使って徹底解説!
Grokのファクトチェックとは?
現代では、X(旧Twitter)などのSNSを通じて情報が瞬時に拡散される一方で、誤情報やフェイクニュースも同じスピードで広がっています。そこで注目されているのが、Grokによるファクトチェック機能です。しかし、AIも完璧ではありません。誤った引用やバイアスのある情報を拾ってしまう可能性もあるため、使い方を誤ると逆に誤情報に加担してしまうリスクもあります。
ここでは、Grokの基本的な機能や特徴、正確性や信頼性について解説していきます。
Grokの特徴
Grokには、X上の投稿をリアルタイムに習得できるという特徴があります。最新ニュースや時事情報についても回答してくれます。Thinkモードを使った高度な推論能力やDeepSearch機能も搭載され、文章、画像ともに読み込みが可能です。Thinkモードは段階的な推論を得意とし、DeepSearchはウェブ上から積極的に情報を集め、その思考プロセスも確認できます。
2025年2月18日に発表された最新モデル・Grok3については以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせて確認してみてください。
Grokの正確性と信頼性
一方で、Grokには、正確性と信頼性に限界があります。Grok3に「あなたの正確性と信頼性はどれくらいありますか?」と聞いてみたところ、「私は正確で役立つ情報を提供するよう設計されていますが、完璧ではありません。」と回答がありました。(下記参照)
5月8日に質問したものですが、データは5月8日までの情報に基づいており、情報元の文脈が不明瞭、複数の解釈ができる場合、誤りが生じることがあることがわかります。
元データが誤っていれば、Grokも誤情報を返す可能性があります。ただし、Grokは情報の出典を提示する設計になっているため、ユーザーが自ら引用元を確認し、信頼できるかどうかを判断することが可能です。
出典が明記されない場合は、「その理由を出典付きで教えて」と入力すると、出典元を提示してくれます。
Grokを使ったファクトチェックのやり方
Grokのファクトチェックは、時事的な話題や拡散されているSNS投稿の真偽を確認する場面でも利用されています。ここでは、Grokを使った具体的なファクトチェックの手順と、Xの投稿を活用してファクトチェックを行う方法について解説します。
Grokを使ったやり方
Grokを使ったファクトチェックの流れは以下の3ステップです。特別な知識がなくても、Grokのチャット欄を使うだけで実践できます。
Grokを使いこなすために知っておきたいプロンプトは下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
Grokプロンプト24選!コピペOKの例文やコツ、注意点などを解説
ステップ1:チェックしたい内容を入力
まずは、検証したい疑問や情報をGrokに入力します。
- 「○○というニュースは事実ですか?」
- 「この投稿の内容は正しいですか?」
- 「△△事件について最新情報を教えて」
今回は、大谷翔平選手の活躍内容が正しいものか確認してみます。
「2024年、大谷翔平選手は二刀流で、メジャーリーグ史上初の50本塁打50盗塁を達成しましたか?」と聞いたところ、誤っていると指摘があり、正しい情報(二刀流ではなく、打者専念)を29のポストと15のウェブページから回答してくれます。
ステップ2:回答内容と引用元を確認
次に、上記で引用されているリンクや投稿内容を確認します。大切なのは、回答を鵜呑みにせず、参考に出典に目を通すことです。
信頼性の高い報道機関や自治体、専門家の投稿が引用されていれば、一定の信頼性があると判断できますが、個人の匿名投稿や未確認情報に注意しましょう。
時事通信社写真部の投稿や岸田文雄前内閣総理大臣の投稿が確認できます。
「打者に専念し」という文言が投稿内容に含まれています。
ウェブサイトは以下のようにNHKや日本経済新聞、Wikipediaを参照したことが確認できます。
ステップ3:他ソースと照合
Grokの回答だけに頼らず、Google検索や報道機関などの信頼できるメディアでも確認する習慣も必要です。複数の情報を照合することで、情報の正確性を客観的に評価できるようになります。
Xの投稿を使ったやり方
Grokのファクトチェックは実際の投稿に対して「@Grok」(メンション)と投稿する、または投稿のリプライに入力することで、Grokが回答してくれます。
以下は自分の投稿の最後に「@grok ファクトチェックして」と入力しています。
Grokが「ファクトチェックしてみたよ」と因果関係や例を出して回答してくれます。
Grokのファクトチェック活用例
Grokは、AIの力とSNSの即時性を掛け合わせてファクトチェックできるツールです。ここでは、Grokが有効に機能したケースと、逆に誤情報を返してしまったケースの両方を紹介します。長所と限界を正しく理解し、適切に活用するための判断材料にしてください。
Grokが正しく情報検証した例
以下の投稿では、「グミは英語でgummy」という投稿(抜粋)に対し、Grokが回答しています。
「まず、『グミは英語でgummy』ってのはその通り。英語圏ではグミキャンディーを「gummy」って呼ぶのが一般的だよ。例えば『gummy bears』とかね。これはもう常識レベルで間違いない。」
gummyという英単語には、ゴム(性)の、粘着性の、などの意味がありますが、以下のように英和辞典にも「gummy bears」が確認できるので、正しいことがわかります。
Grokが誤情報を回答した例
実際に、5月9日「東京は雨が降っている」と投稿後、「@grok ファクトチェック」とリプライして検証してみました。5月9日11時29分、ウェザーニュースの雨雲レーダーでは東京都に雨雲はありませんでした。
Grokは、最新のデータは5月8日23時49分で、雨の記述は見つからず、リアルタイムの情報とは異なる可能性を示唆しています。Grokはその投稿をリアルタイム情報として信頼性が高いと判断したようですが、実際の天気とは一致しませんでした。
また、JST(Japan Standard Time)と回答しているにも関わらず、投稿時刻は02時29分と誤った情報を回答しています。
Grokは、Xの投稿をリアルタイムで参照するため「有名人が逮捕された」という投稿が間違っていても、Grokはそれを真実として受け取り、出典の確認が不十分なまま回答してしまう場合もあります。政治的にセンシティブな話題や、意見が分かれる社会問題については、偏ったソースが引用されることもあるため注意が必要です。
Grokを正しく使うための注意点
Grokは便利なAIツールですが、すべての情報が正確であるとは限りません。情報の出典や文脈を誤って解釈するリスクもあるため、ユーザー自身のリテラシーが重要になります。
自分で確認する習慣を身につける
Grokの回答はあくまでも補助的な参考情報にすぎません。大切なのは、最終的な判断は自分自身で行うという意識です。Grokが提示した引用元を実際に開いて中身を読み、他の信頼できる情報源と照らし合わせる習慣を持つことで、誤情報に惑わされるリスクを減らすことができます。特に、デマや誤解が広まりやすい話題ほど、自分の目で確認しましょう。
偏りやバイアスに注意する
Grokが参照しているX上の投稿には個人の主観や政治的・思想的なバイアスが含まれていることが少なくありません。たとえば、ある政治家を批判する投稿ばかりを引用していた場合、Grokの回答も自然と偏ってしまう可能性があります。これはGrokの意図ではなく、元データの性質によるものです。そのため、「この情報は偏っていないか?」「他の立場の意見も確認したか?」という視点を常に持ちましょう。
引用元の正確性を確認する
Grokは回答とともに、元となる投稿やニュース記事を提示しますが、その引用元の信頼性もユーザー自身が判断する必要があります。政府機関・大学・報道機関といった信頼できるソースであれば、引用の価値が高いといえますが、一方で匿名の個人アカウントや悪意のあるまとめアカウントからの引用であれば、情報の信ぴょう性には疑問が残ります。引用元の「誰が言っているのか」を確かめて、正しい情報かどうか自分で判断しましょう。
Grokファクトチェックに関する賛否両論
Grokによるファクトチェック機能は、画期的で便利な一方、機能や回答に疑問の声が多くみられました。ここでは実際のXの投稿を引用し、Grokのファクトチェックの価値と課題を見ていきましょう。Grokを使うべきか、どう使うべきかの判断材料として活用してください。
賛成意見
Grokのファクトチェックに対する肯定的な意見として、便利であるという声が多く見られました。
本当に正しいのか疑問に思った投稿に対して行うことで、活用しているユーザーもいます。
また、間違った情報かどうか判断するために利用し、誤情報の拡散防止に利用できないか、といった意見もありました。
反対意見
一方で、Grokのファクトチェックに懸念や反対の声も少なくありません。AIの回答を鵜呑みにする危険がある、自分の頭で考えずGrokの回答に頼る人が増える、チェックするのは人間の役目だといった投稿がありました。Grokは引用元を表示していても、すべてのユーザーがそれを丁寧に確認するわけではありません。
Grokが必ずしも正しいわけではないという前提を忘れてしまうと、誤情報の拡散に加担する危険性もあります。自分で情報を確かめて判断することが必要です。