トーバルズ氏がClaude Codeで改良 パッチ8本を公開した
Linuxカーネルの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏が、Claude Codeを使ってカーネルの改良を進めている。米Phoronixの報道をGIGAZINEが10月16日に伝えた。作業は本人の「noref-filemap-read-with-llm」というブランチで進んでいる。
直すのはメモリ管理の部分だ。たくさんのスレッドが1つのファイルを少しずつ読むと、読むたびにfolio構造体の参照の数を書き換えるので競合が起きる。改良版はこの参照を取らずにページキャッシュからデータを読む。
AInformationが10月16日にgit.kernel.orgでこのブランチを開くと、パッチは8本あった。日付は10月7日から10月10日までだ。8本すべてに「Assisted-by: LLM」の欄があり、その下に本人の「Signed-off-by」が付いている。
トーバルズ氏はもともとAIをカーネルのデバッグに役立つ道具とみていた。カーネルの外ではGoogleのAntigravityでバイブコーディングをしていることも知られている。AIでコードを読みやすくして長年のバグを見つけた例も本人が紹介している。

- 10/7トーバルズ氏が最初のパッチを書く
- 10/108本目のパッチと説明文をブランチに置く
- 10/16GIGAZINEがClaude Codeの利用を報じる
Claude Codeが書いたのはコードと試験 測定は本人のPCだけ
トーバルズ氏は10月10日付けの説明文にある「Tools」の節で、AIとの分担をはっきり書いた。Claude Codeが本人の指示で作ったのは4つだ。コードとテスト用のプログラムに加え、問題点リストの元になったレビューとこの説明文の初稿である。測定だけは自分のマシンで走らせたとしている。
測ったのは4コア8スレッドのノートPC(Core i7-8565U)1台だ。1ページのファイルを16バイトずつ読ませて、1回の読み込みにかかるカーネルのサイクル数を比べている。
| 条件 | 改良前 | 改良後 |
|---|---|---|
| 1スレッド | 452〜454サイクル | 408〜409サイクル |
| 8スレッド | 2,937〜2,975サイクル | 725〜726サイクル |
| 4コアに1スレッドずつ | 1,318〜1,401サイクル | 417〜438サイクル |
数字はトーバルズ氏が説明文に載せた値だ。8スレッドでは手間が大きく減り、1スレッドの差は小さい。GIGAZINEが載せたグラフでも、1スレッドでは差がなく8スレッドや4コア4スレッドで大きく伸びている。
本人は、熱で速度が落ちるノートなので1秒あたりの回数でなく1回あたりの手間で比べてほしいと断っている。もっと大きなマシンでは「何も測っていない」とも書いた。

既知の問題は10件 メモリ不足で止まった例も書いた
説明文の後半には「既知の問題」が10件並ぶ。AIに書かせた改良を完成品として出してはいない。
1つ目は、解放を待っているページをメモリを割り当てる側が見られないことだ。2GBの仮想マシンでの再現試験では、パッチ1〜6の段階でOOMキラーが大きなプロセスを止めた。パッチ7と8で最後まで動くようになったが、割り当てる側から見えない点は残ると本人が書いている。
試していないことも並べた。ファイルシステムの標準テストxfstestsや32ビット環境、clangでのビルドなどだ。最後には「このマシン以外のすべて」とまで書いている。
会社でAIにコードを書かせるときも、この書き方はそのまま使えそうだ。AIに任せた範囲と人が自分の環境で確かめた範囲を分けて書くと、レビューする人が何を疑えばよいかが分かる。今回の問題点リストは、その裏のレビューまでClaude Codeが下支えしていた点も見ておきたい。
署名欄の義務は外す方向 Claude Codeは月18ドルから
カーネル開発の側では、AIを使ったパッチに付ける「Assisted-by:」の記載を義務から外す方向で検討が進んでいる。トーバルズ氏の8本にはこの欄があるが、中身は「LLM」の3文字だけだ。どのツールをどう使ったかは説明文の側に書かれていた。
義務が外れても、責任の置き場所は変わらない。GIGAZINEの過去の報道では、AIが生成したコードの法的な責任はそれを提出した人間が負う決まりになっている。社内で「AI使用の明記」を決めている会社は、印の有無より「何を任せて何を人が確かめたか」を残す形に寄せると役に立ちそうだ。
同じ道具を試すなら、Claude Codeは単体の契約ではなくClaudeの契約に含まれる。AInformationが料金ページで確かめた範囲では、いちばん安い有料のProは年払いで月18ドルだ。10月15日の為替(1ドル157.98円)で直すと約2,844円になる。
次の山は、この8本が次期Linux 7.4のマージウィンドウで取り込まれるかどうかだ。
- Assisted-by
- Linuxカーネルのパッチに付ける欄で、AIやLLMの道具を使ったことを示す。これまで義務だったが外す方向で検討されている
AI導入の現場で多いのは、AIに書かせたものを誰がどこまで確かめたか分からないまま回ってくるレビューだ。トーバルズ氏の説明文は任せた範囲と自分で測った範囲を節で分けている。試していない項目まで並べてある。社内の開発ルールに「AI使用」の欄だけを足しても、レビュー担当は何を疑えばよいか分からない。情報システム部門は提出の雛形に「AIに任せた作業」「人が確かめた環境」「試していないこと」の3行を入れておくと、手戻りを減らせそうだ。
- トーバルズ氏はClaude Codeに何を任せた?
- 任せたのはコードとテスト用のプログラムに加え、問題点のレビューと説明文の初稿だ。トーバルズ氏が10月10日付けの説明文に自分で書いている。測定は本人のノートPC(Core i7-8565U)1台で走らせ、それより大きなマシンでは測っていない。公開された8本のパッチには、すべて「Assisted-by: LLM」と本人の署名が付いている。
- Claude Codeはいくらで使える?
- Claude CodeはClaudeの有料プランに含まれ、いちばん安いProは年払いで月18ドルだ。10月15日の為替(1ドル157.98円)で直すと約2,844円になる。Claude Codeだけを単体で契約する形ではない。金額はAInformationが料金ページで確かめた範囲の値だ。
- AIで書いたコードにAssisted-byは要る?
- Linuxカーネルでは記載の義務を外す方向で検討が進んでいる。それでもトーバルズ氏の8本には「Assisted-by: LLM」が付いていた。義務が外れても、AIが生成したコードの法的な責任は提出した人間が負う。会社で使うなら、何をAIに任せて何を人が確かめたかを残しておくと後で困らない。
写真:TechCrunch / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月16日
