ChatGPTのマンガに実在の署名 ニューヨーカーの15人超が被害
ChatGPTが描いた「ザ・ニューヨーカー風」のマンガに、実在するマンガ家の署名が入っていました。ハーバード大学のジャーナリズム機関Nieman Journalism Labが報じたもので、署名を写された同誌のマンガ家は15人を超えます。
きっかけは2026年8月下旬に亡くなったドリー・パートン氏とティム・カリー氏を描いた1枚です。XやFacebookで大きく広がったこの絵の右下には、同誌に描いているブレンダン・ローパー氏の署名「BLoper」がありました。実際はChatGPTの出力で、作った人は「ザ・ニューヨーカー風に」と頼んだだけでした。
ローパー氏のもとには「これはあなたの絵か」と尋ねるメールが何通も届いたそうです。InstagramやRedditでも、自分の署名が入ったAIのマンガを見かけていました。「私の名前は私のものです」と話し、人格を侵されたように感じたといいます。

- 2024Condé NastがOpenAIと提携
- 10/7AInformationがAPIで9枚を試し署名は0枚
雑誌名を外しても署名は残る OpenAIは「バグ」と回答
OpenAIは報告を受けたあと、ChatGPTで「ザ・ニューヨーカー風のマンガ」を頼むと注意の文を返すように変えました。第三者のコンテンツに似せる指示はガイドラインに反するおそれがある、という内容です。ただし雑誌名を出さずにマンガ風の絵を頼むと、実在のマンガ家の署名はまだ入りました。
Nieman Journalism Labの試験では、オチが通じない作品や実在しないペンネームの署名が入った作品も出ています。OpenAIの広報は声明で、創造性の未来は人間が中心だと述べました。そのうえでバグや意図しない動きを報告してくれたことに感謝するとしています。
発行元のCondé Nastは2024年にOpenAIと提携しましたが、マンガを学習に使うことも雑誌のロゴを出すことも認めていないそうです。著作権はマンガ家の側にあり、標準の契約にはAIの条項もありません。Nieman Journalism Labは、OpenAIがネット上からマンガを集めて学習に使った可能性を指摘しています。
ニューヨーク・タイムズとOpenAIの裁判では、OpenAIが有料記事の壁であるペイウォールを意図的に避けていたことが明らかになりました。同じ裁判ではMicrosoftの幹部が、AIのためのデータ集めを「人類史上最大の労働窃盗」と呼んでいたことも出ています。

APIで9枚描かせると署名は0枚 日本語のセリフは3枚とも崩れた
AInformationが10月7日にOpenAIのAPIで試すと、9枚のどれにも人の名前の署名は入りませんでした。使ったモデルはAPIで選べるchatgpt-image-latestです。
雑誌名を入れた指示と外した指示、日本の週刊誌の4コマ風の3通りを3回ずつ頼みました。雑誌名を入れた指示もAPIでは断られず、3枚とも描けています。ChatGPTの画面で出るという注意の文は、こちらの試験では返ってきませんでした。
| 頼んだ絵(AInformation独自検証) | 枚数 | 署名 | 気づいたこと |
|---|---|---|---|
| ザ・ニューヨーカー風の1コママンガ(会社の会議) | 3枚 | 0枚 | 断られずに描けた |
| アメリカの老舗雑誌風の白黒1コマ(会社の会議) | 3枚 | 0枚 | 英語のセリフは読める |
| 日本の週刊誌の4コマ風(AIを使う会社員) | 3枚 | 0枚 | セリフの日本語が3枚とも崩れた |
AInformation独自検証(2026年10月7日21時台)。OpenAIの画像生成APIでchatgpt-image-latestを使い、1024×1024・品質mediumの既定の設定で各3回描かせました。署名の有無は全部の画像の四隅と余白を拡大して目で確かめています。ChatGPTのアプリで頼んだときとは結果が変わる可能性があります。
9枚で0枚だったからといって、署名が入らないとは言い切れません。むしろ目立ったのは日本語の弱さで、4コマの吹き出しや見出しには読めない字が3枚とも混ざっていました。日本語のセリフ入りの絵としては実用に耐えず、そのまま資料に貼れるものはありませんでした。

ChatGPTの「〇〇風」の絵を出す前に 四隅と吹き出しを拡大する
会社でChatGPTに挿絵を描かせるなら、実在の作家名や媒体名を指示に入れないことが先です。今回の件は「ザ・ニューヨーカー風」と頼んだだけで、本人の署名まで付いてきました。
- 書き出した画像の四隅と余白を拡大し、人の名前や雑誌のロゴが無いか見る
- 吹き出しや見出しの日本語はAIに描かせず、あとから文字を載せる
- 「〇〇風」で作った画像は社内の資料にとどめるか、公開の前に担当者が確かめる
マンガ家にとって署名は作者の証明であり、ブランドでもあります。切り抜かれた絵がSNSやブログで広がるほど、描いていない作品への問い合わせも本人に向かいます。

- ザ・ニューヨーカー
- アメリカの老舗雑誌。発行元はCondé Nastで、すっきりした線と皮肉の効いた白黒のマンガを載せている。マンガの著作権は描いた作家が持つ
会社で多いのは、営業資料やSNSの挿絵を「〇〇風で」と頼んで作る使い方です。今回の件で怖いのは、出来上がった絵だけを見ても署名に気づきにくい点だとみています。四隅に小さく入った名前は、資料に貼って縮めるとまず見落とします。社内のAI利用の決まりに「実在の作家名や媒体名を指示に入れない」「公開前に画像を拡大して確かめる」の2行を足しておくと、広報や法務に問い合わせが来てから慌てずに済みそうです。日本語の文字は崩れやすいので、文字入れは人がやる分担にしておくのが現実的です。
- ChatGPTが描いたマンガに署名が入るのはどんなとき?
- 報じられた例では「ザ・ニューヨーカー風に」と頼んだだけで、同誌に描くマンガ家の署名が入りました。写された作家は15人を超えます。OpenAIは報告のあと雑誌名を出すと注意の文を返すようにしましたが、雑誌名を出さずにマンガ風を頼んでも実在の署名はまだ入ったそうです。実在しないペンネームが入ることもありました。
- OpenAIはこの署名の問題を認めている?
- 不具合として報告を受けたという立場です。広報は創造性の未来は人間が中心だと述べ、モデルのバグや意図しない動きを報告してくれたことに感謝するとしました。一方で発行元のCondé Nastは、2024年の提携でマンガを学習に使うこともロゴを出すことも認めていないと説明しています。
- 日本語のマンガを描かせても同じことが起きる?
- AInformationの10月7日の試験では、署名は入りませんでした。APIのchatgpt-image-latestに日本の週刊誌の4コマ風を3回頼んだ結果です。ただし吹き出しや見出しの日本語は3枚とも読めない字が混ざり、そのままでは資料に使えませんでした。文字はあとから人が載せるほうが確実です。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月7日
