日販がAnthropicへ書籍を売り裁断スキャンで学習にした
日経クロステックが2026年9月25日に報じた。米カリフォルニア州の著作権訴訟の資料から、日本の出版取次大手・日販がAnthropicに大量の書籍を販売する契約を結んでいたことがわかった。
Anthropicは「プロジェクトパナマ」と呼ぶ計画で世界中の書籍を集めていた。搬入した本の背を裁断機で切り落としページをスキャンしてファイル化する。スキャン後の本はリサイクル業者へ引き渡す。この手法を「破壊的スキャン」と呼び、電子データ化した書籍をAIモデルClaudeの学習に使っていた。

- 2024年8月米国の作家3人がAnthropicを著作権侵害で提訴
- 2026年7月約15億ドルの和解が最終承認された
- 2026年9月25日日販のAnthropicとの書籍販売契約が報道で判明
正規購入はフェアユースだが海賊版で約15億ドルの和解になった
この訴訟は2024年8月に米国の作家3人がAnthropicを相手に起こしたものだ。2026年7月に約15億ドル(約2400億円)の和解が最終承認された。
裁判所は正規に購入した書籍の裁断・学習についてはフェアユースと認めた。理由は3つある。適法に購入した本であること。原本を破棄して追加の複製物を市場に出していないこと。社内保管にとどまり外部へ頒布していないことだ。
一方で海賊版サイトから入手したデータはフェアユースに当たらなかった。和解金の約15億ドルはこの海賊版利用に対して発生した。

「正規と海賊版にそれほど差があるか」と福井弁護士は問うた
著作権法に詳しい骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は「米国ではAI学習と著作権の裁判が120件以上ある。AI学習がフェアユースという判決はいくつかあり今回はその1つだ」と説明する。
さらに「正規購入と海賊版ダウンロードの間にそれほど大きな違いがあるのかは一考の余地がある」と指摘した。AI学習による市場への影響を考えれば入手方法だけで線を引けるのかという問題提起だ。
Anthropicは「業界で広く行われている」とコメントした
Anthropicは「Claudeの学習にはウェブデータと商業的に取得したデータセットと自社生成のデータを使っている。書籍を調達して学習に使うことはAI業界全体で広く行われている手法だ」とコメントした。希少本や貴重な古書を購入して破棄することは一切ないとも述べている。
日本の出版取次がAI学習用の書籍供給に関わっていた事実が明らかになった。自社の本がAI学習に使われる可能性がある以上、著作権と学習データの調達の行方は国内の出版関係者にとっても追うべきテーマになった。
- フェアユース
- 著作権の制限規定の1つで批評・教育・研究などの条件を満たせば権利者の許可なく著作物を利用できる米国の法理。日本の著作権法には同じ規定はないが30条の4がAI学習目的の複製を一定条件で認めている
- 破壊的スキャン
- 本の背を裁断してページをばらし高速スキャナーで電子データ化する方法。元の本は壊れるため「破壊的」と呼ぶ。ページを開いたままスキャンする「非破壊的スキャン」と区別される
AI学習のために物理的に本を買い裁断するという調達ルートが裁判で詳しく明かされた。日本の出版取次が関わっていたことで著作権の議論は海の向こうだけの話ではなくなった。正規購入なら合法という判断が出たが入手方法だけで線を引けるかは専門家も疑問を呈している。自社のコンテンツがAI学習に使われるリスクを考えるきっかけにしてほしい。
- 日本の出版社の本もAI学習に使われているのか
- 今回の裁判資料で日販がAnthropicに書籍を販売していたことが判明した。ただし学習に使われた書籍の具体的なタイトルや出版社は開示されていない。Anthropicは「書籍の調達はAI業界全体で広く行われている」とコメントしており日本語の書籍が含まれるかどうかは明らかになっていない。
- 日本でもAI学習用に本を買って裁断するのは合法か
- 日本の著作権法30条の4はAI学習目的の複製を一定条件で認めている。著作物に表現された思想または感情を自ら享受しまたは他人に享受させることを目的としない場合という条件だ。米国のフェアユースとは要件が異なるため同じ結論になるとは限らない。
この記事の出典
補助資料
- [1]日経クロステックこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月25日
