Dymocksが塾を9月27日で閉鎖 保護者にAIを勧めた
オーストラリアのシドニーで塾を運営するDymocks Educationは、「Dymocks Tutoring」と「Talent 100」の事業を9月27日で終えました。閉鎖の理由として同社は、多くの生徒がAIから安く役に立つ説明を受けられるようになった点を挙げています。いまの課題は「学習の助けを得られるか」ではなく「AIをうまく使えるか」に移ったという説明です。
家計が厳しい中で、同社は保護者にGeminiやChatGPTなどのAIを安く使うよう勧めました。CEOのマーク・バックランド氏は豪経済紙AFRの取材に「多くの利用者は高額な塾代を払うより、もっと安く学べる方法にお金を使った方がいい」と答えています。人間の講師のほうが優れていることは本人も認めています。
| 項目 | Dymocksの塾 | AI(CEOの説明) |
|---|---|---|
| 費用 | 1科目1学期で800〜900豪ドル(約8万9000円〜10万円) | 月額約30豪ドル(約3300円) |
| CEOの評価 | 人間の講師のほうが優れている | 安く学べる方法として勧める |
| 9月27日のあと | 事業を終了(一部の教室は別会社が引き継ぐ) | 保護者に利用を勧めた |
塾の費用は現地メディアの今日墨尔本、AIの月額はAFRの取材でCEOが示した数字です(GIGAZINEの記事による)。
通う生徒は別会社へ移る 卒業試験前の約38人は試験まで教わる
事業が終わっても、生徒の授業がすべて打ち切られるわけではありません。シドニー西部パラマッタの教室とオンライン授業は、次の学期から別会社のUplift Educationが引き継ぎます。残る4教室の生徒には、Art of Smartという別の事業者が受講料を割り引く予定です。
卒業試験を控えた約38人には、担当の講師が試験までオンラインで個別指導を続けます。今学期の授業は最終営業日の27日まで予定どおり行うとしていました。
業界の受け止めは割れています。オーストラリアの家庭教師の業界団体を率いるモハン・ダール氏は、Dymocksの撤退は予想外だったと話しました。別の塾Matrix EducationのCEOデビッド・ラマッジ氏によると、同社にはシドニー周辺で学期ごとに約8000人が通い数は増えています。

日本ならGeminiは月725円から CEOの約3300円より安い
AInformationが主要AIサービスの料金ページを9月21日に直接見て集めたデータでは、日本円で払えるチャットAI4件の有料プランは月725円から月3,200円まででした。一番安いのはGeminiのGoogle AI Plusで月725円です。ChatGPTのGoは月1,400円で、Goプランには広告が出る場合があります。
バックランド氏が挙げたAIの月額は約3300円でした。日本円で払えるGeminiとChatGPTの有料プランは、どちらもこれより安く収まります。一方でClaudeのProは月22ドルのドル建てなので、円安が進むと請求額が上がります。
ただし安さだけで塾の代わりになるわけではありません。シドニー大学で数学などの教育に携わるベン・ズニカ氏は、生徒がAIにすぐ答えを求めてしまう点を指摘しています。人間の講師なら答えをすぐに教えず、順を追って生徒と一緒に考えられるという見方です。
AIに任せるなら練習問題と採点基準 答えを急がせない工夫が要る
バックランド氏は、塾の指導は結局のところ反復練習が中心で塾にしかできないことではないと話しています。AIに練習問題や作文の採点基準を作らせれば、生徒は自分の実力を試せるという考えです。成績上位の生徒がさらに差をつけるための補習は、今後5年ほどで需要がなくなると予測しました。
AIの効果を示す研究もあります。アメリカの大学院進学試験GREの対策で、成人がAIの家庭教師か人間の専門家から1時間の個別指導を受ける実験がありました。数学と言語を合わせた正答率の伸びは、どちらも同じくらいの範囲だったという報告です。
反対の立場の声もあります。Matrix Educationのラマッジ氏は、成績上位の生徒は対面の指導を求め続けるとみています。同社も生徒の学習を助けるAIを出していますが、人間の講師はAIに置き換えられないという考えです。
家庭で試すなら答えを聞く前に考えさせる
ChatGPTには宿題を手伝いながら答えをすぐに言わない「学習モード」も加わっています。子どもに使わせるなら、答えを聞く前に自分の考えを書かせる約束を先に決めておきたいところです。会話の中身を渡すことになるので、ChatGPTの学習させない設定も確かめておけば安心して渡せます。
バックランド氏の予測どおりなら、次に揺らぐのは成績上位の生徒向けの補習です。
AInformation調べチャット向けの主要AIサービスをいちばん安く使うといくらか
| サービス | 月あたり | 無料 |
|---|---|---|
| Gemini最安 | 725円/月Google AI Plus | ○ |
| GrokX Premium | 980円/月プレミアム(これより安いプランはGrokの対象外) | × |
| Felo | 2,099円/月Pro | ○ |
| Microsoft Copilot | 3,200円/月有料プラン | ○ |
| Claude | $22/月Pro/ドル建て | ○ |
2026年9月21日時点でAInformationが調べたもの。金額はそのAIを使える一番安い有料プラン。調べた8件のうち月額のプランがある5件で、日本円の表示は4件
- GRE
- アメリカの大学院に進むときに受ける共通試験。今回紹介した実験では、数学と言語を合わせた正答率の伸びをAIと人間の指導で比べた
企業の研修でも同じ構図を見ます。eラーニングの外注をやめてChatGPTに練習問題を作らせる会社は増えそうです。ただ答え合わせのやり方を決めずに配ると、社員はAIの答えを写して終わります。Dymocksの判断が正しいかどうかは、AIにすぐ答えを言わせない使い方を家庭や職場が決められるかで分かれるとみています。月725円のGeminiが塾の代わりになるのは、使い方を決めた人の手元だけかもしれません。
- Dymocksの塾に通っていた生徒はどうなる?
- 授業がすべて打ち切られるわけではありません。シドニー西部パラマッタの教室とオンライン授業は、次の学期から別会社のUplift Educationが引き継ぎます。残る4教室の生徒にはArt of Smartが受講料を割り引きます。卒業試験を控えた約38人は、担当の講師が試験までオンラインで個別指導を続けます。
- 塾の代わりにChatGPTやGeminiを使うといくらかかる?
- 日本円で払える有料プランなら、GeminiのGoogle AI Plusが月725円でChatGPTのGoが月1,400円です(AInformation調べ)。DymocksのCEOが挙げたAIの月額は約3300円で、日本ではそれより安く始められます。どちらも無料で試せるので、まず無料の範囲で練習問題を作らせてみると判断しやすくなります。
- AIの家庭教師は人間の講師と同じくらい効果がある?
- 同じくらいだったという実験の報告があります。アメリカの大学院進学試験GREの対策で成人が1時間の個別指導を受けた実験では、AIと人間の専門家で正答率の伸びは同じくらいの範囲でした。一方でシドニー大学のベン・ズニカ氏は、生徒がAIにすぐ答えを求めてしまう点を指摘しています。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月28日
