Granite Speech 5.0公開 日本語を含む6言語を文字にする
IBMは10月21日に音声認識AIの新版「Granite Speech 5.0」を公開した。中心になる「Granite Speech 5.0 2B」はパラメーター数が20億で、日本語・英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語の文字起こしに対応する。学習には39万時間分の公開音声データなどを使った。
前の版から強くなったのは雑音と反響への強さだ。マイクから離れた場所で録った音声も、前より正確に拾えるという。IBMが公開した英語のテストでは単語誤り率が平均5.06%で、比べた公開モデルの中で2位だった。
人名や商品名を取り違える問題には、認識してほしい語を最大2000語まで先に渡せる仕組みで手を打った。英語と日本語の間で、音声を訳しながら文字にすることもできる。入力する音声の言語を指定する機能も加わった。
| モデル | 大きさ | 向く使い方 |
|---|---|---|
| Granite Speech 5.0 2B | 20億 | 精度を重視した文字起こしと翻訳 |
| Granite Speech 5.0 470M Turbo CTC | 4億7000万 | 速さ重視。日本語を含む7言語に広がり速度は約1.6倍 |
| Granite Speech 4.1 2B Plus(改良版) | 20億 | 複数人の会話。話者の識別の誤り率が約7%下がった |
IBMの発表をもとに整理した公式の値。
- 10/21Granite Speech 5.0を公開 指定できる語は2000語に
- 10/22編集部が日本語の会議音声で試した
Apache 2.0で商用も0円 MacのGPUでは動かなかった
3つのモデルはどれもApache 2.0ライセンスで公開され、商用利用も手直しもできる。使う料金は0円で、月額の契約も要らない。その代わり、動かすパソコンやサーバーは自分で用意することになる。
編集部は10月22日に、Granite Speech 5.0 2Bを手元のMac(Apple M4 Pro・メモリ24GB)で動かした。モデル一式は約5GBあり、落とすのに6分半かかった。MacのGPUを使う設定ではエラーになって動かせず、CPUだけで動かした。
CPUでも待たされる感じは無かった。29.3秒の音声を文字にするのにかかったのは1回あたり9.2〜10.3秒で、音声の長さの3分の1ほどで終わる。
AInformationが調べた議事録・文字起こしのAIツールは46本ある。無料で試せるのは27本で、料金が分かった38本の月額の中央は2,237円だった。Granite Speechは月額がかからない代わりに、画面もアプリも無く自分で組み込む前提になる。

会議の音声で試した 語の指定で6語中5語が合った
試したのは架空の定例会議の連絡を読み上げた29.3秒の音声だ。Macの読み上げ機能で作り、キントーン・セールスフォース・RPAといった業務の語と渡部・東海林という読みにくい名字を入れた。同じ音声に雑音を重ねた版も用意した。
比べる相手には、ChatGPTの開発元OpenAIの文字起こしAPIから「gpt-4o-transcribe」と「Whisper」を選んだ。どちらも言語に日本語を指定しただけで、語の一覧は渡していない。Granite Speech 5.0 2Bは同じ設定なら毎回同じ答えを返すので各1回ずつ流した。
| 試し方 | 雑音なし(6語中・句点) | 雑音あり(6語中・句点) |
|---|---|---|
| Granite(指示だけ) | 4語・0個 | 4語・0個 |
| Granite(日本語と指定) | 4語・0個 | 4語・0個 |
| Granite(6語を指定) | 5語・0個 | 5語・0個 |
| gpt-4o-transcribe | 6語・5個 | 4語・5個 |
| Whisper(whisper-1) | 4語・0個 | 3語・0個 |
AInformation独自検証(2026年10月22日・各1回)。数えたのはキントーン・セールスフォース・渡部・東海林・RPA・ノーションの6語。原稿は5文。
語を渡すとGraniteは崩れにくくなった。指示だけでは「キントーン」が「キンプロン」になり、雑音ありでは「近況」になった。語の一覧を渡すと、どちらも正しく書けた。雑音ありの音声では語を指定したGraniteのほうがgpt-4o-transcribeよりキントーンを正しく拾えた。
一方でRPAは最後まで書けなかった。一覧に入れても「アールpa」や「garpa」と出ている。指示だけの回では「見積もり」が「三森」に、「担当」が「本当」に変わる取り違えもあった。
いちばん困ったのは句点だ。句読点を付けるよう頼んだ回を含め、6回とも「。」が1つも付かなかった。gpt-4o-transcribeは雑音の有無にかかわらず5文すべてに句点を付けて返している。

Granite Speech 5.0を議事録に使う前に 語の一覧を作る
社内で試すなら、まず自社の会議を1本録って流してみるのがよさそうだ。今回は読み上げの音声で試したので、人の話し声で同じ結果になるかは確かめていない。
- 社名・製品名・担当者の名字を部署ごとに一覧にして、指定する語として渡す
- 英字の略語は一覧に入れても崩れることがあるので、出力を検索して直す
- 句点が付かない前提で、清書と要約は別のAIに渡す流れにする
- 会議の録音を社外へ出せない職場では、手元のPCで動く点を生かす
音声を外のサービスへ送らずに済む文字起こしが0円で手に入るのは大きい。句点を打つ清書の工程を1つ足せるかどうかが、現場で使えるかの分かれ目になる。
AInformation調べ議事録や文字起こしのAIツールはいくらで使えるか
| ツール | 月あたり | 無料 |
|---|---|---|
| Google WorkspaceGemini最安 | 800円/月Starter/年払い | × |
| ElevenLabs | $6/月スターター/約948円 | ○ |
| Notta | 1,185円/月プレミアム/年払い | ○ |
| Doraverse | $8/月Starter/年払い/約1,264円 | × |
| Happy Scribe | $8.5/月Basic/年払い/約1,343円 | ○ |
| PLAUD NOTE | 1,400円/月Pro/年払い | ○ |
| LINE WORKS AiNote | 1,440円/月ソロ/年払い | ○ |
| TurboScribe | $10/月無制限/年払い/約1,580円 | ○ |
2026年10月22日時点でAInformationが調べたもの。金額はそのツールを使える一番安い有料プランの月あたり。議事録や文字起こしのAIツール46本のうち、日本円で払えるのは12本、無料で試せるのは27本。表に出したのは画面が日本語のもの。外貨は1ドル158.05円で換算
- 話者の識別
- 複数人の会話で、どの発言を誰がしたかを見分ける機能。会議やインタビューの記録づくりで使う。
- Apache 2.0ライセンス
- 商用利用や手直しを認めるオープンソースのライセンス。Granite Speechの3つのモデルはこの条件で公開された。
研修先でよく聞くのは、会議の録音をクラウドの文字起こしに上げてよいか決められず止まっている話だ。Granite Speech 5.0は手元のPCで動くので、金融や自治体のように音声を外へ出しにくい職場でも試しやすい。ただ句点が付かない以上、そのまま議事録として配る使い方には向いていない。情報システム部門は、文字起こしをこのAIで行い清書と要約は社内で許可済みのAIに任せる2段の流れを先に決めておきたい。語の一覧を誰が更新するかも決めないと、固有名の取り違えが残りそうだ。
- Granite Speech 5.0は商用利用できる?
- 商用利用できる。Granite Speech 5.0 2B・470M Turbo CTC・改良版の4.1 2B PlusはどれもApache 2.0ライセンスで公開され、手直しも認められている。使う料金は0円だが、動かすパソコンやサーバーは自分で用意する。編集部のMac(Apple M4 Pro)ではGPUの設定がエラーになり、CPUで動かした。
- Granite Speech 5.0は日本語の会議を文字起こしできる?
- 日本語の文字起こしには対応している。編集部が29.3秒の会議の連絡を読み上げた音声で試すと、約9〜10秒で文字になった。ただ句読点を付けるよう頼んでも句点は6回とも0個で、文はつながったまま出た。議事録にするには清書の工程が別に要る。
- 人名や製品名を正しく書かせるには?
- 認識してほしい語を最大2000語まで先に指定できる。編集部の試験では指定なしで6語中4語だった正解が、6語を指定すると5語に増えた。キントーンは雑音ありでも正しく書けたが、RPAは指定しても「アールpa」などに崩れた。英字の略語は出力を検索して直すのが確実だ。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月22日
