「YOLOに人と映らない」シャツ ベルリンの作家が売り出した
ベルリン在住のアーティストのサイモン・ウェッカート氏が、AIの監視カメラに人と認識されないという柄のシャツ「Digital Camouflage」を作った。狙いは多くの物体検出システムが採用しているオープンソースのモデル「YOLO」だ。公開されている動画では、人に「PERSON」と表示するYOLOのシステムがシャツを着た人に反応していない。
きっかけはベルリンの監視カメラだ。政府のカメラが公共の場所を撮り、AIが通行人の行動を「正常」か「不審」に分けている。そのカメラがYOLOを使っているかは分かっておらず、作者は「こうした不透明性こそが問題」だと話す。
シャツは11,835円から買える。作者は新しいYOLOが出るたびに新しい柄を出す予定だという。
作者も「全てのシステムは突破できない」と断る
作者自身は、このシャツを警察の目を逃れる道具でも匿名を約束するものでもないと説明している。どんな柄も全ての状況で全てのシステムを突破できるわけではない、とも断る。狙いは公共の場で着て「機械に読み取られることを全員が望んでいるわけではない」と示すことだ。

作者の写真4枚をYOLO7種にかけた 28回とも人と判定した
AInformationは作者のサイトに載っている写真4枚を、YOLOの7種類にかけて確かめた。4枚とも作者が判定の枠を描き込んだ写真で、シャツの人にだけ枠が付いていない。結果は28回すべてで、シャツの人を人と判定した。
| YOLOの種類 | 駅前 | 通りを上から | スタジオ | 横断歩道 |
|---|---|---|---|---|
| YOLOv5nu | 0.62 | 0.88 | 0.28 | 0.91 |
| YOLOv8n | 0.72 | 0.89 | 0.72 | 0.90 |
| YOLOv8s | 0.89 | 0.91 | 0.41 | 0.91 |
| YOLO11n | 0.83 | 0.87 | 0.84 | 0.90 |
| YOLO11s | 0.89 | 0.90 | 0.90 | 0.91 |
| YOLO11m | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.92 |
| YOLO26n | 0.85 | 0.90 | 0.77 | 0.86 |
2026年9月27日にAInformationが試した結果だ。Ultralyticsが公開している学習ずみのモデルを使い、人とみなすしきい値は既定の0.25のままにしている。数字はシャツの人を人と判定した信頼度で、1に近いほど確かな判定になる。
いちばん低いのはスタジオ写真の0.28だった
信頼度がいちばん低かったのはスタジオの写真だ。YOLOv5nuで0.28、YOLOv8sで0.41まで下がった。ほかの3枚は7種類とも0.62以上で人と判定している。

「しきい値0.5」なら2回見落とした AIカメラの設定で結果が変わる
人とみなすしきい値を0.5に上げると、スタジオの写真でYOLOv5nuとYOLOv8sの2回がシャツの人を人と数えなくなる。しきい値を0.7にすると28回のうち25回、0.8にすると22回まで減る。同じ写真と同じシャツでも、カメラ側の設定しだいで見落としが出てくる。
作者の写真で枠が付かなかったのは、作者の試した条件がこちらと違うからの可能性がある。元の記事には、どの版のYOLOをどの設定で試したかは書かれていない。しきい値が既定の0.25のままでは、シャツの人を人と認識させないことは1度もできなかった。
店や工場のAIカメラにも数え漏れは出うる
店の人数計測や工場の立ち入り検知にAIカメラを使う会社にとっては、服の柄とカメラの設定の組み合わせで数え漏れが出うるという話になる。見落としが許されない用途では、AIの判定だけで決めない仕組みを残しておきたい。
AIが画像を見誤るのは物体検出に限らない。AInformationの検証でもClaudeはグラフを1つ多く数え、画像の読み取りではGeminiだけがお釣りを2回外した。
オープンソースのYOLOで自社の映像を試す 見る点は3つ
YOLOはオープンソースで公開されていて、自社のカメラの映像でも同じ試験ができる。AInformationは手元のMacで7種類を動かし、判定は数分で終わって費用はかからなかった。確かめておきたい点は次の3つだ。
- カメラの提供元にYOLOなどどのモデルで人を見つけているかを聞く
- 人とみなすしきい値がいくつに設定されているかを確かめる
- 柄の強い服を着た人の映像で数え漏れが出ないかを試す
導入を決める前に1日だけ試し撮りをすると、自社のカメラがどんな服と距離で人を見落とすかが先に分かる。

- YOLO
- 多くの物体検出システムが採用しているオープンソースのモデル。映像に写った人を見つけると「PERSON」と表示する
作者が問題にしたのは、街のカメラがどのAIで何を判定しているかを外から確かめられない点だ。会社がAIカメラを入れるときも同じで、提供元がモデルの名前やしきい値を明かさなければ今回のような試験は自社でできない。情報システムの担当者は、契約の前にモデル名と設定を開示してもらえるかを確かめておきたい。社員や来店客を撮るなら、何をどう判定しているかを説明できない仕組みは後で説明に困る可能性がある。
- デジタル迷彩シャツを着ればAIカメラに映らなくなる?
- 必ずそうなるわけではない。AInformationが作者の写真4枚をYOLOの7種類で判定すると、28回すべてでシャツの人を人と判定した。作者自身も、どんな柄も全ての状況で全てのシステムを突破できるわけではないとしている。警察の目を逃れる道具でも匿名を約束するものでもないという。
- デジタル迷彩シャツはいくらで買える?
- 作者の販売ページで11,835円から買える。作者は新しいYOLOが出るたびに新しい柄を出す予定だという。ただしAInformationの試験では7種類のYOLOが28回ともシャツの人を人と判定したので、どの版のどの設定で効くのかは買う前に分からない。
- 会社のAIカメラも服の柄で人を見落とす?
- 設定によっては見落とす可能性がある。AInformationの試験では、しきい値が既定の0.25なら28回とも人と判定した。0.5に上げるとスタジオの写真で2回、0.8では6回が人と数えられなくなった。自社のカメラがどのモデルとしきい値で動いているかを提供元に聞いておきたい。
- ベルリンの監視カメラにもこのシャツは効く?
- 分かっていない。ベルリンでは政府の監視カメラが公共の場所を撮り、AIが通行人の行動を「正常」か「不審」に分けている。ただしそのカメラがYOLOを使っているかは明らかにされていない。作者はこの不透明さこそが問題だとして、このシャツを作った。
この記事の出典
補助資料
- [1]GIGAZINEこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年9月27日
