日俳連が声のAI指針を公表 柱は同意・管理・対価の3つ
日本俳優連合(日俳連)は10月15日、「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を公表した。俳優や声優の声をAIの学習や生成に使うときの決まりで、法的な拘束力はない。まずは業界の基準として広め、最終的には法制化につなげたい考えだ。
柱は3つある。事前の通知と同意・データの管理・適正な対価だ。学習から生成・公開・利用までのすべての段階で本人の事前の許諾を求め、まとめて一括で許諾を取る形は認めない。
同意の有効期間は原則として最長1年とした。声をAIに使うときは通常の出演料とは別に対価を払う。同意が撤回されて事業者も合意したときは、音声データやプロンプトを消してAIモデルの提供も止める。

- 8月法務省が声の無断利用は権利侵害の可能性と示す
- 9月東京地裁が声もパブリシティー権の対象になり得ると判断
- 10/15日俳連が音声の生成AI利用ガイドラインを公表
第2条の「事業者」は法人だけではない 架空の声も第3条で対象
AInformationが全22ページの本文を読むと、決まりを守る側の「事業者」は広く取られていた。第2条では、法人か個人かを問わず個人事業主・フリーランス・同人クリエイター・個人配信者も入る。
「AI利用」の範囲も学習だけではない。プロンプトの入力や画面での調整、参照ファイルの指定まで含む。プロンプトに声優の名前や役名を書いて声を寄せる行為も、その人の「デジタル・レプリカ」を作ったものとして扱う。
第3条では架空の名前を付けたAI音声も対象に入る。学習データに声優の音声が一部でも混ざっていれば、その声優との関係では無断のAI音声とみなす。似せるつもりがなくても、聞き分けにくいほど似ていると事業者が気づけた場合は同じ扱いだ。

広告はキャンペーンごとに同意 違反は売上相当額を求める
会社の広告で使うときの決まりは細かい。テレビCMやWeb広告・SNS広告に使う場合は、商品やキャンペーンごとにセリフまで含めた個別の同意が要る(第8条)。第10条では、作った音声にAIで作った旨・使った製品名・元の声の主の名前を表示するよう求める。
第20条が定める違反時の求めも重い。配信の即時停止とAIモデルの廃棄に加え、その事業の売上に当たる額を特別損害賠償金として求める形だ。額は無断利用を始めた日にさかのぼって数える。完全な人工音声で人の役を置き換える場合も、関係団体で作る「音声AI取引適正化委員会」(仮称)の事前の承認が要るとしている。
この求めが外れる場合は3つしかない。1つ目は許諾ずみの声を一般の利用者が個人の配信で使う場合だ。残りの2つは、特定の声を真似ない汎用の読み上げソフトを個人の表現活動で使う場合と群衆の声(ガヤ)として使う場合になる。ここでいう一般の利用者は個人か小規模事業者で、会社の広告や販促の動画に当てはまる免除は出てこなかった。
| 条文 | 決めていること |
|---|---|
| 第2条 | 事業者は法人・個人事業主・フリーランス・個人配信者まで含む |
| 第3条 | 架空のAI音声も学習データに声優の音声があれば無断扱い |
| 第8条 | 広告は商品やキャンペーンごとにセリフまで個別に同意を取る |
| 第10条 | AIで作った旨・製品名・元の声の主の名前を表示する |
| 第12条 | 同意の有効期間は原則として最長1年 |
| 第20条 | 違反は即時停止・モデル廃棄・売上相当額の賠償を求める |
音声AIを使う会社が先に見たい4点 学習元・表示・期限・指定
指針は法律ではないが、周りの判断は先に動いている。法務省は2026年8月に、声の無断利用は権利侵害の可能性があるとの見解を示した。9月には東京地裁が、声優の津田健次郎氏の訴訟で声もパブリシティー権の保護対象になり得ると判断した(削除の請求は棄却)。
ナレーションや広告の読み上げに音声AIを使っている会社は、次の4点を確かめておきたい。
- 使っているボイスが、元の声の主から許諾を得たものか(提供元の説明やライセンス)
- AIで作った旨と製品名・声の主の表示のしかたを、提供元が示しているか
- 許諾の期限。長く流す広告は1年後の差し替えまで段取りしておく
- プロンプトや設定で、実在の声優の名前や役名を指定していないか
業界からは「厳しく手続きが大変だ」との声も出た。これに対し、日俳連の副理事長で声優の池水通洋氏は「今までが簡単すぎた」と答えている(ITmedia AI+)。日俳連は伊藤忠グループなどと適用の事例を増やし、指針を見直しながら法制化を目指す。
次の焦点は、音声AIの提供元が許諾の期限や表示のひな形をこの指針に合わせて出すかどうかだ。
- デジタル・レプリカ
- 特定の声優の声質や話し方を再現した音声モデルと、そこから出る音声。指針ではプロンプトで名前を指定して寄せた声も含む
導入の現場で多いのは、研修動画や商品紹介の読み上げを音声AIに任せる使い方だ。今回効いてくるのは2つの条文とみている。架空の声でも学習元を問う第3条と、同意を1年ごとに取り直す第12条だ。会社が自分で学習元を確かめるのは難しいので、提供元に許諾の範囲と期限を書面で出してもらうのが近道になる。広報や販促の担当者はAI音声を使った動画の一覧を作り、いつ差し替えるかまで決めておきたい。ここを後回しにすると指針が広まった段階で慌てる可能性がある。
- 日俳連のAI音声ガイドラインに法的な拘束力はある?
- 法的な拘束力はない。日本俳優連合が10月15日に出した業界の指針で、まずは業界内の基準として広めるとしている。ただし法務省は2026年8月に声の無断利用は権利侵害の可能性があるとの見解を示し、9月には東京地裁が声もパブリシティー権の保護対象になり得ると判断した。日俳連は最終的に法制化を目指している。
- 会社の広告でAI音声を使うと何が必要になる?
- 声優の声をもとにしたAI音声なら、商品やキャンペーンごとにセリフまで含めた個別の同意が要る。音声にはAIで作った旨と使った製品名、元の声の主の名前を表示する。同意の有効期間は原則として最長1年なので、長く流す広告は更新か差し替えが必要になる。
- 汎用の読み上げソフトを使うだけでも対象になる?
- 個人か小規模事業者が特定の声を真似ない汎用の読み上げソフトを個人の表現活動で使う場合は、事前協議と特別損害賠償金の求めから外れる。会社の広告や販促の動画をそのまま外す条文は無い。架空の声でも学習データに声優の音声が混ざっていれば無断扱いになるので、提供元に学習元と許諾を確かめておきたい。
この記事の出典
補助資料
- [1]ITmedia AI+この記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月16日
