Claudeの文章に透かしが入る EUのAI法に合わせた変更だ
Anthropicは、これから出すClaudeのモデルが書く文章に「透かし」を入れると公式ブログで明らかにした。文章のどこかにClaudeが関わった可能性を、あとから鍵を使って調べられるようにする仕組みだ。理由はEUのAI法で、同社はほかの大手AI企業と一緒にこの対応を進めると書いている。
同社によると、EUは8月2日から域内でサービスを出すAI企業に、AIが作ったものへの目印を求めている。Anthropicは7月に、AIが作った中身の透明性についての行動規範に署名した。署名したのは全部で約190の組織だという。
地域ごとに分ける方法がまだ無いため、透かしは世界中で同時にかけると同社は説明している。日本でClaudeを使っている人も対象になる。

- 2024Google DeepMindがSynthID-Textを論文で出す
- 7月AnthropicがEUの行動規範に署名
- 8/2EUがAIの作ったものへの目印を求め始める
Claudeの料金は変わらない 単語を選ぶ乱数を替えるだけ
透かしを入れても、読む人には違いが分からないと同社は言い切っている。文字を足すことも、見えない文字を混ぜることもしない。出力のトークンも増えないので、料金と速さはそのままだ。
Claudeは次の単語を候補の中から選ぶ。「今日は寒くて…」の続きに「曇り」と「どんより」のどちらが来ても意味はほぼ同じで、ふだんはこの選択を乱数で決めている。透かしはこの乱数の代わりに、鍵と直前の数語から単語を決める。並んだ単語が鍵どおりの選び方と合っていれば、Claudeが書いた見込みを確率で出せる。
この手法はGoogle DeepMindが2024年に論文で出したSynthID-Textをもとにしている。DeepMindはGeminiの利用の一部で透かし入りのモデルを出し、高評価と低評価の割合に統計上の差は出なかったという。
Claudeで翻訳した文には入る 校正やコードには残りにくい
透かしがどこまで効くかは、Claudeがどれだけ単語を自分で選んだかで決まる。ここが日本の利用者にいちばん関わるところだ。
| 使い方 | 透かしの残り方(Anthropic公式の説明) |
|---|---|
| Claudeに翻訳させた文 | 入る。単語を全部Claudeが選ぶため |
| Claudeに一から書かせた長い文 | 入る。長いほど判定の確かさが上がる |
| 人が書いた文の誤字や句読点の校正 | 直した箇所が少ないと判定できないことがある |
| 事実を並べた文・計算 | 答えが1つに決まる所には入らない |
| プログラムのコード | 本体にはほぼ入らず、コメントには入りうる |
| png・jpg・svgのファイル | 透かしでなくC2PAの署名をファイルの情報に付ける |
日本の会社では、英語の資料や海外向けのメールをClaudeでAI翻訳する使い方が多い。この使い方はまるごと透かしの対象になる。一方で、日本語の文で透かしが英語と同じように効くかは書かれていない。公式ページを最後まで読んでも、日本語についての説明は出てこなかった。
全部の単語を書き換えれば透かしは消えるが、軽く直した程度ではほぼ残ると同社は書いている。透かしはClaudeが関わった可能性を示すだけで、書いたのか大きく直したのかは区別できない。誰が使ったかの情報も入っておらず、利用者や組織までたどることはできないという。
一般の利用者は確かめられない 検出APIは規制当局や報道など向けだ
透かしを調べる検出APIは限定公開で、ふつうの利用者は申し込めない。編集部も自分の文で試すことはできなかった。使えるのはEUの法律で求められている組織に限られ、規制当局・捜査機関・報道・ファクトチェック・研究者・教育機関などが挙がっている。AI法に合わせて確認が必要な企業も申し込める。対象は今後広げるとしている。
比べる相手はGoogleのGeminiになる。同じSynthID-Textの手法を自社のサービスで先に試してきた点では、Geminiのほうが先を行く。ただし鍵は会社ごとに違う。Claudeの鍵で分かるのはClaudeが関わったかだけで、ほかのAIが書いた文か人が書いた文かは判定できない。Pangramのような市販のAI判定ツールは鍵を持たず、言い回しの癖を見ている別物だ。
8月2日より前に出たモデルには移行の期間があり、数か月かけて順に透かしを足すという。社外に出す文書をClaudeで作っている会社は、まず翻訳と長文の下書きに使っている部署を洗い出しておきたい。
- SynthID-Text
- Google DeepMindが2024年に出した文章の透かしの手法。単語を選ぶときの乱数を鍵で決め、あとから照合できるようにする
- C2PA
- 画像などのファイルに、どこで作られたかを署名つきで記録する業界の共通規格。カメラや写真編集ソフトでも使われている
企業の導入支援で気になるのは、Claudeで訳した英文の契約書や海外向けのプレスリリースだ。翻訳は透かしがまるごと入る使い方なので、取引先がEUの企業なら後で照合される可能性がある。隠す話ではないが、社外に出す文書にAIを使ったかどうかを社内でどう扱うかは、先に決めておかないと担当者ごとに対応が割れそうだ。日本語の文でどこまで効くかが示されていない点は、今後の発表を待ちたい。
- Claudeの透かしで料金や速さは変わる?
- 変わらない。Anthropicによると透かしは単語を選ぶときの乱数の出どころを入れ替えるだけで、出力のトークンは増えない。速さへの影響もごくわずかだという。文字を足したり見えない文字を混ぜたりもしないので、読む人には透かし入りかどうかの違いが分からない。
- Claudeで翻訳した文にも透かしは入る?
- 入る。翻訳では単語を全部Claudeが選ぶため、透かしの対象になるとAnthropicは説明している。反対に、人が書いた文の誤字や句読点だけを直した校正は、直した箇所が少ないと判定できないことがある。日本語の文で英語と同じように効くかは、発表に書かれていない。
- 透かしから自分や会社が特定される?
- されない。透かしと鍵にはClaudeが関わったかどうかの情報しか入っておらず、利用者や組織や会話の中身はたどれないとAnthropicは書いている。分かるのはClaudeが関わった見込みだけで、Claudeが書いたのか大きく直したのかも区別できない。
- 自分の文章にClaudeの透かしがあるか確かめられる?
- いまは確かめられない。検出APIは限定公開で、EUの法律で求められている規制当局・報道・研究者・教育機関などと、AI法に合わせた確認が必要な企業に限って出している。一般の利用者は使えず、Anthropicは対象を今後広げるとしている。
写真:TechCrunch / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
この記事の出典
補助資料
- [1]Anthropicこの記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月21日
