京都府庁はCopilot ChatとChatAIの2本立て 一本化しなかった
京都府庁は対話型AIを1つにまとめず、仕事の中身で2つを使い分けています。文章の作成や企画のアイデア出しはCopilot Chat、庁内マニュアルの検索はユーザーローカル ChatAIという分け方です。
Copilot Chatを全庁に入れたのは2025年1月でした。ところが当時のCopilot ChatはRAGが十分ではなく、会計事務や文書事務の「手引き」のような大量の資料を読ませて使うのは難しかったといいます。そこで2025年4月に、RAGを備えたChatAIを追加で全庁に入れました。
職員はそれまで手引きを1ページずつめくって確かめ、見つからなければ制度所管課へ問い合わせて回答を待っていました。所管課の側も、毎日のメールと電話の質問に追われていたそうです。

利用率71%と45% 削減は1人年109時間と74.4時間だ
庁内調査では、2つのツールの数字にはっきり差が出ています。
| 項目 | Copilot Chat | ユーザーローカル ChatAI |
|---|---|---|
| 主な用途 | 文章の作成・企画のアイデア出し | 庁内マニュアル(手引き)の検索 |
| 全庁導入 | 2025年1月 | 2025年4月 |
| 利用率 | 71% | 45% |
| 満足度 | 95% | 93% |
| 年間の削減時間(週1日以上使う職員1人あたりの見込み) | 109時間 | 74.4時間 |
継続して使いたい職員はどちらも99%でした。ChatAIを使う所管課の職員の84%は「問い合わせが減った」と答えています。使う人の数ではCopilot Chatが上ですが、所管課の負担を減らしたのはChatAIのほうという結果です。

エージェントは3つに割ると安定した 一度に任せると精度が落ちる
府庁は次に、Copilot StudioでAIエージェントを職員が自分で試作しました。対象は請求書の受け付け審査や補助金申請の書類の一次チェックです。外部へ委託する前に、どこまで自動化できてどこに限界があるかを現場でつかむためでした。
試作で分かったのは、ルールの読み取りから書類のチェックと結果の整理までを1つに任せると、精度が大きく落ちてエラーが続いたことです。そこで「ルールを読み取る」「書類をチェックする」「結果を整理する」の3つの子エージェントを作り、親エージェントがまとめる形に変えたところ安定しました。
出てきた一覧表はあくまで一次案の扱いです。職員が一覧表と根拠資料と原本を見比べてから判断します。エージェントはまだ検証の段階で、今後は需要の高い審査業務へ広げる考えです。
Copilotを配って終わりの会社がまず見る所 社内規程の検索を分ける
全社にCopilotを入れたのに「思ったほど楽にならない」という会社は、京都府庁と同じ所でつまずいている可能性があります。文章を書く仕事と、社内規程を引いて根拠を示す仕事は、求められる力が違うからです。
- 問い合わせが集中している部署(経理・総務・人事)と、質問の多い規程を洗い出す
- その規程を読ませて答えと根拠のページを返せるか、RAGのあるツールで小さく試す
- エージェントを作るなら、読む・確かめる・まとめるの段に分けて作る
- AIの答えは一次案と決め、最後に人が原本を見る手順を先に書いておく
府庁の例で大事なのは、ツールの数を増やしたことよりも、問い合わせを受けていた所管課の時間が戻った点です。自社で効果を測るなら、使う人の時間だけでなく、質問を受ける側の件数も一緒に数えておきたいところです。
- RAG
- AIが答える前に指定した文書を検索し、その中身を根拠に答えを作る仕組み。府庁は庁内の手引きを読ませるために使った
企業の導入を手伝っていると、Copilotを全社に配ったあとに「規程の質問はやっぱり総務に来る」という声をよく聞きます。京都府庁は、答える側の負担を減らす道具を別に立てて、所管課の84%が問い合わせ減を感じるところまで持っていきました。ここは数字以上に効いているとみています。ただ2本立てにすると、どちらに何を聞くかを職員が迷います。用途の線引きを1枚にまとめて配らないと、利用率45%の側はなかなか伸びない可能性があります。
- Copilot Chatだけで社内マニュアルの検索はできないのか
- 京都府庁は2025年1月の導入時点ではRAGが十分でなく、手引きのような大量の資料を読ませて使うのは難しいと判断しました。そのため2025年4月にRAG付きのユーザーローカル ChatAIを足し、マニュアル検索はそちらに任せています。文章の作成や企画のアイデア出しは今もCopilot Chatです。
- 京都府庁はAIでどれくらい時間が減ったのか
- 週1日以上使う職員1人あたりの年間削減時間は、Copilot Chatで109時間、ChatAIで74.4時間と見込んでいます。利用率はCopilot Chatが71%、ChatAIが45%で、ChatAIを使う所管課の職員の84%が問い合わせが減ったと答えました。
- Copilot Studioのエージェントはうまく動いたのか
- ルールの読み取りから書類のチェックと結果の整理までを1つのエージェントに任せたところ、精度が大きく落ちてエラーが続きました。3つの子エージェントに分けて親がまとめる形にすると安定したそうです。ただし今も検証の段階で、結果は一次案として職員が原本と見比べて判断しています。
この記事の出典
補助資料
- [1]ITmedia AI+この記事の元にした報道
出典の最終確認日:2026年10月27日
